Lucky 7 意味なんてなかった。ただ、隣に彼がいたから。彼の、エミールの頬に自分の小さな手を添えて、そしてなにも言わずに押し倒した。エミールは何事かと驚いた目をしていたが、オリエはなにも言わない。瞳の奥には光がなく、感情を読み取ることは出来なかった。オリエ君、とエミールの声が静かに耳に届く。だが彼女は聞こえない振りをする。次になんと言う言葉を紡ぐか、判っているから。 「エミールは……いなくならない?」 不意に呟かれた問い掛け。真っ暗だった瞳の奥底で、痛みと寂しさが渦を巻いているのが見てとれる。今にも泣きそうな少女が、あの精鋭部隊を率いているというのだから驚きだ。最も、自分から志願して隊を率いているのかどうかは定かではないが。 「僕とて不死身ではないと、戦時中に言った言葉を気にしているなら……」 「違うッ!!」 悲鳴にも似た叫び声。誰よりも驚いたのはオリエ本人だった。目を見開き、気付けは瞳から大粒の涙を溢す。止めどなく、本能に従うように。普段はあれだけ楽天的で底抜けに明るい彼女からこんな姿を想像することは出来ただろうか。エミールは己の上に跨がる少女を緩やかに引き寄せて、流れるように抱き締めた。 「エミール……あたし、怖いよ……」 「騎士として、姫の憂いを聞き入れるのも悪くない。言ってごらん。」 オリエは抱き留められたまま、ぽつぽつと言葉を紡いだ。ロミオが、ジュリウスが、大切に想う仲間がひとり、またひとりといなくなってしまう。それが酷く怖いのだと。自分に力がなくて、誰も守れない、そんな自分が、嫌だと。いつか皆、死んでしまうのではないか、その時自分はどうなってしまうのか。考え出したら止まらなくなってしまったと。 成る程正直だとエミールは素直に感心する。裏表がなく、いつでもあっけらかんとしている分、反動が極端なのだろう。そして恐らく誰かを喪ったことが、初めての経験だったのだろう。極東支部に来てから随分経ち、このアナグラの仲間ですら喪うことが怖くなったしまった。まだ16歳の少女だ、この反応は普通なのだ。 声は次第に小さくぐずぐずに崩れて、泣き声だけに変わる。きっともう少し泣けば、泣き疲れて眠ってしまうだろう。今までこの小さな身体に釣り合わない重荷を背負っていた。エミールがそれに気付くことは、出来なかった。 「オリエ君、お休み。」 想像通りに眠ってしまったオリエの背を優しく撫でる。話し始めたままの体勢で眠っている少女を、どうすれば起きた時驚かせないか。今のエミールにはそれが課題で少しだけ苦笑を漏らした。 |