Lucky 7



子供は寝る時間だと、小さい頃は両親にベッドの中まで連れられた時間。気付けばそんな時間でさえも、武器を振るっている自分がいた。遠い故郷にいる両親。決して裕福だった訳でもなく。かといってこのご時世ひもじい思いをする訳でもなく。恵まれている、オリエは廃墟と化した教会を見上げて笑った。
オリエ君、と声がした。振り向けばアラガミを粗方片付けたエミールが小走りに向かってくる。

「考え事かい?」
「んー、そんなとこかなー。」

ホームシックだなんて、言えなかった。陽もとっぷりと落ち、幕営へ休息を取りに行く前にこの教会を見上げたら、何故か家へ帰りたくなった。理由は分からない。ただ、なんとなく。
エミールに声を掛けたくて、オリエは振り返る。愛機・ポラーシュターンへ労いを尽くさず話し掛けるそんな姿が酷く綺麗に見えて。

「すき。」

不意に、言葉が漏れた。小さな声。だが至近距離にいる彼にははっきりと届いたようで。目をぱちくりとさせるそんな姿に、震える程の愛情が込み上げてきた。
多分、すべては偶然なのだ。偶然自分はブラッドへ入隊した。偶然極東支部員として初めてエミールに出逢った。偶然、そんな彼に、エミールへの恋に落ちた。後付けしてしまえば、たくさんある。陳腐な言葉を連ねて、重ねて。泥と血に汚れて毎日を繰り返し、でも、心の奥底に芽生えた想いは溢れるように実っていった。それは多分、初恋だった。
オリエはそんな想いを疑うことはしなかった。疑ってしまったら、きっと粉々に崩れてなくなってしまうから。どんな砂糖菓子よりも甘くて、愛しい。そんな感情が、恋なのだろう。

「エミール、すきだよ。」

月が静かにふたりを照らす。夜の影が細く延びていった。そろそろ皆のところへ戻らないと、喉まで出た言葉を唾液と共に飲み込んで、そっとエミールを見上げる。まだ驚愕の色は消えていないけど、笑っていた。

「勿論僕も君がすきだよ。」

エミールは与えてくれる。ひとを愛すること。誰かを想うこと。願うこと、守ること。月はまだ明るい。表情を見る分には問題ない程だ。

「ずーっと、一緒にいてね。」

彼の二の腕に絡むよう、ぎゅっと傍に寄った。例え世界が終わると言われても。この手を離さないよう。すべてを受け入れ疑わない少女と、足りない何かを与えてくれる青年。そんなふたりは優しく月明かりに照らされていた。





Lucky 7