Lucky 7 甘ったるい匂いが緩やかに部屋に立ち込めた。同時に暖かさも。エリナと一緒に買い物に行った時買ったアロマである。花の蜜と果物。その甘さだけを抽出したそれは瞬く間に溢れ出し、主張する。うんうんと頷いてオリエはその匂いを吸い込むように大きく深呼吸した。ああ、いい匂い。 そんな時だった。部屋の扉をノックする音。はーい、と間の抜けた返事をすると扉は開き、律儀に一礼をして入ってくる男の姿が現れる。 「む……これは……」 「なんのご用ー?」 部屋へ足を踏み入れたエミールは異様に甘ったるい匂いに、思わず眉を潜めた。オリエは気にした様子はない、寧ろそんな反応をされるということは想像済みだったようだ。キャスター付きの椅子に乗ったまま軽く机を押し、入り口へと軽快に滑る。ぶつかる少し手前でエミールの手が優しく椅子の背凭れを押さえ、ぴたり、止まった。 「もうすぐ午後のティータイムにしようと誘いに来たのだが……凄まじい匂いだ……」 「えへへー、エリナとデートして買っちゃったー!」 先輩と呼び慕ってくれる可愛い少女のことを思い出し、にんまりと笑う。かの少女はエミールにやれ煩いだの、邪魔だのと強い言葉を使うので、ほんの少しだけの優越感。オリエはひょいと椅子から降りて大きく伸びをした。 「今日のおやつは?」 「紅茶に合うビターチョコレートを見つけてね。」 「チョコレート!」 やっほーいと嬉しそうにはしゃぐ少女を見て、エミールは大きな動きでエスコートを始める。閉じられた部屋に、甘い香りを残しながら。 |