Lucky 7



油断とは恐ろしい。息は出来ない。声も聞こえない。沈む、深い、深い世界の奥底へ。手を伸ばした先に何があるのか分からなくて。足掻けば足掻くだけ、身体は闇へと落ちていく。ごぽり、吐息が泡になって地上へ逃げようとした。手で払えば、泡も霧散して消えてしまう。助けて。暗い闇は、怖い。そこで、目が覚める。
怖くて怖くて、そんな夢を見たあとはいつも、誰もいないラウンジに足を運ぶ。しんと静まり返ったその場所は寂しいけれど、夢で見た冷たい闇よりは幾分もマシだった。
ソファに腰掛けて、ぐっとパーカーの裾を握りしめる。夢なんかに惑わされるなんて、ブラッド失格だと自嘲するもメンタルが弱っている今は自分を責める言葉しか出ない。

「……っく、え、……ぐっ、」

知らず知らず嗚咽が漏れた。怖くて、怖くて。ぽたぽたと漏れる涙は止まらず、溢れて零れた。夢のように、闇に溺れてしまったらどうしよう。またあの時のように、仲間を助けられなかったらどうしよう。繰り返される夢という記憶のリフレイン。ぐちゃぐちゃに掻き乱され、不安が止まらない。
そんな時、ふと脳内に金色の影が過った。強くないくせに、誰よりも必死に力のない人たちを守り抜こうといつでも全力投球で。言っていることは馬鹿馬鹿しいくらいにまっすぐで。眩しすぎるくらい馬鹿で。

「……ふっ、ふふふ……しししっ、」

何故だろう。エミールのことを思い出しただけなのに、 すうっと心が軽くなったような気がした。不思議な話だ、こんなにも怯えていたはずなのに。オリエは大きく伸びをしてごろりとソファに寝転がる。もうこのまま寝てしまおう。なんて考えながら静かに、ゆっくりと、夢の世界に落ちていく。その彼女の表情は、とても穏やかだった。





Lucky 7