Lucky 7



まったく、ここまで来ると自分の才能に涙が出そうだ。
目の前の鍋に鎮座するブラックホール……もとい、怪しい色のチョコレート。
最早チョコと呼んでいいのかすら危うい。
本来ならば成功したそれを綺麗に包んで、愛を誓い合った夫へとプレゼントしたかったのだが。

「これは……止めた方が良さそうですね。」

自分の作ったチョコレートが毒物で、それが死因なんですなんて馬鹿馬鹿しいにも程がある。
それに加えて夫であるロンクーはこの軍の重要な戦力だ。
悲しいかな、自分の才能。
溜息混じりに借りた鍋から異物と化したチョコレートを捨てて、鍋を水に漬ける。
さて、では何をプレゼントしようかと首を傾げると背後に気配を感じて振り返った。

「あ、ロンクーさん。」
「……何をしているんだ。」
「えっと、製菓の方を……少々。」
「……」

近くの袋に捨てられたチョコレートの残骸を見てロンクーは絶句する。
元より妻の料理が絶望的に下手だということは知っているものの、ここまで来ると奇跡に近いものを感じる。
その気配を察したのか、ルフレは苦笑いを浮かべて立ち上がり、外套の裾から埃を払った。

「もう天性の才能ですよね、この絶望的な下手さは。」
「いや、個性的で……悪くないとは思う。」
「変にフォローされると逆に悲しくなります。」
「……そうか。」

余程自分のフォローが下手なのかと、ロンクーは少しばかりうろたえる。
それを見たルフレは小さく笑いながら伸びをした。

「それにいいです、ロンクーさんの妻でいるなら美味しいご飯が食べられますから。」
「俺と結婚したのは飯の為、とでも言いたげだな。」
「まさか! この世界で一番愛しているからこそ、ロンクーさんの伴侶となることを選んだんですよ?」

時折、こうもあっけらかんと愛の言葉を紡げる妻を羨ましいと思うことがあった。
それは息子であるマークにも言えることだが、この遺伝子というものはとても素直で優しいのだろう、ロンクーはそう見ていた。

「ロンクーさん?」
「いや、……そう言えば、今日は異性に薔薇を捧げる日だとヴィオールが触れ回っていた。」
「薔薇を?」

あまり聞かない話だ。
もしかしたらヴァルムに伝わる伝統なのかもしれない。
ふと、ルフレが何の気なしに視線をずらすと彼の手には赤い薔薇が一輪握られていた。

「まあ、素敵な薔薇ですね!」
「ああ……お前に、贈ろうと思ってな。」
「ロンクーさん……」
「ルフレ、愛している。」

薔薇を押し遣るように差し出し、そうして強引に抱きしめる。
真っ赤な薔薇と同じくらいにルフレの頬は赤くなり、そしてその光景を仲間の面々が見ていたことを、2人は知らない。




Lucky 7