Lucky 7



*ロンルフ←クロムの報われないお話。



天幕に吹き込む夜気に、深い夢に落ちていた体が反応して飛び起きた。
随分と酷い夢を見た。
結婚式のチャペルが鳴り響く教会、向かい合う女性の細い指に誓いを捧げる、ヴェールをゆっくりと外す、そこで、目が覚める。

「クロムさん、大丈夫ですの……?」
「あ、ああ……済まないマリアベル、大丈夫だ……」

なんて酷い夢だ。
夢に出てきたのは、妻であるマリアベルではなかった。
自分の片割れと思って共に戦い続けた女軍師の、ルフレの、夢だった。
微笑んで、自分だけに愛を囁いているその姿を掻き抱いて悦びに打ち震える。
マリアベルという妻がありながら、何と不純なのだろう。

「顔色が優れませんわ。すぐにソールさんを呼んで、」
「大丈夫だ、問題ない……マリアベル、此方へ来てくれないか……」

そう言って妻を抱きしめる。
息を深く、深く吐き出してその温もりを噛み締めた。

「……クロムさんがこうなされる時は、ルフレさんの関係でしたわね。」
「…………マリアベルには誤魔化しが効かないな。」
「あなたの妻ですもの、当然ですわ。」

両手の中で聞こえる声は酷く優しいものだった。
クロムはぽつり、ぽつり、彼女に聞こえる程度の小さな声で呟き始める。
それはまるで、懺悔のようなものだった。
ルフレに対する想いを、妻であるマリアベルにすら言えなかった想いを。

「いつも、胸が引き裂かれてしまいそうだった。あの時、ルフレがロンクーと結婚すると聞いた時の話だ……俺の片方が大して知りもしない男に奪われて、目の前から消えてしまった。悔しくて、悔しくて、何度も夢に見てしまうんだ……ルフレと結婚する夢を……もしも、俺がルフレと結婚していたら……想いが消えなかった……マリアベル、お前と言うものがありながら……俺は、なんて酷い男なんだろうな……」

もしものたとえ話は、酷く震えて聞き取りづらかった。
しかしマリアベルは黙ってその話を聞き続けた。
瞳から零れ落ちた一筋の涙はマリアベルの髪の上に落ちて溶ける。

「知っていましたわ。」
「……マリアベル?」
「全部存じておりました、ルフレさんを見る瞳に愛情が宿っていたことも……それを捨てきれないで、わたくしを愛してくれたことも。」

マリアベルの言葉に、クロムの腕が僅かに震えた。

「それでも、わたくしを選んでくださいましたわ。ロンクーさんの元から無理にルフレさんを奪うこともしなかった。彼女達の幸せに、祝福をしている姿は本物でした……だから、クロムさん。怯えないでくださいまし、わたくしはあなたの味方です。」
「マリアベル……」

彼女の声は凛と澄んでいて、嘘偽りなど見えなかった。
とても強く、そしてとても優しい。
クロムの瞳からはまた一筋、涙が溢れた。

「でも、だからといって浮気は許しませんわよ?」
「あ、ああ……勿論だ。」
「ルフレさんに手を出したら、ボッコボコにして差し上げますからそのつもりでいてくださいまし。」
「わ、分かっているぞ……相手も人妻だ、流石に手は出さな……」
「勿論ですが、他の女性も駄目ですわよ?」
「……」

どうやらマリアベルの方が一枚上手のようだった。
隠していたもしも、はもう杞憂に終わる。
愛しく、切なく、優しい想い合いは今しばらく続きそうだ。




Lucky 7