Lucky 7



綺麗な呪いだった。愛という、恐ろしく美しい呪い。いつのまに自分は掛かっていたのだろう。きらきらとした、彼女を想像すると真反対の、優しくあたたかなもの。
敷布の上に横たわる己が妻の期待を込めた視線を一手に受け、ルフレは壊れ物に触れるかのように優しくサーリャの頬を撫ぜた。真っ白で、真っ黒。きっと彼女を説明するのならばこんな文句が妥当だろう。くすぐったいのか、手の中でもぞりと動く様すら愛おしい。きっとこれは、強力な呪いだ。

「ルフレ、あなたになら何をされたって構わないのよ……」

辛うじて神軍師としての理性を保っていたのに。そんなにも優しい言葉を受けてしまえば、何もかもが崩壊してしまう。
覆い被さるように彼女を跨ぎ圧迫するように抱きしめる。
まだ、軍師としてやるべきことが残っている。それは、彼女も一緒だ。
全てが終わる。それまでは夜伽は行わない、それが暗黙のルールだった。
ルフレはサーリャの身体を感じるように何度も、何度も抱きしめて、静かに泣いた。その涙を尊いもののように舐めて掬い取るのが、サーリャは好きだった。
いつ終わるか分からないこの旅路、どうしたって夫婦の絆を欲してしまう時がある。家族を持たなかった彼はそれが顕著だと、結婚してからサーリャは知る。

「サーリャ、俺たちは幸せだろうか……」
「……少なくとも、私は幸せよ。ルフレに愛してもらっているんですもの。」
「俺だけの、独り善がりじゃないよな……」
「ええ、そうね。独り善がりなら、私が感じるこの幸福感は……いったい何なのかしら。」

軍を取り纏める彼も、殊女性の扱いというものはあまり得手としていない。だから、不安になると言った。優しい彼は、サーリャの心に踏み込むことを未だに躊躇っているようにも見えた。何を今更、あんなに熱烈なプロポーズをしてくれたと言うのに。

「サーリャ、」
「なにかしら。」
「……ノワールも、マークも、女だな。」
「そうね。」
「……いつか、嫁に行っちゃうな。」

思わず唖然とした。未来から来た娘ふたりと出会ったのはつい最近だ。そして、そのふたりの存在が暗黙のルールが終わることを告げる。
一瞬だけ見えたルフレの瞳は、愛に飢えた獣そのものだった。




Lucky 7