Lucky 7



父の天幕は、いつ出向いても必ず誰かがいた。時に、マムクートの少女。時に、聖王代理の右腕。時に、聖王代理。
ふたりきりで親子の時間を過ごしたいと思っても、なかなか時間を取ることが難しい。それをルフレはいつも気にしていて、サーリャとマークも呼び家族水入らずの時間を作ろうと必死だった。
でも現実はなかなか旨くいかない。必ず何かが起き、必ず呼び出される。父が必要とされている、喜ぶことなのだろうがノワールにとって嬉しくないことだ。
一度だけそのことをサーリャに相談したが、いつものことと一蹴されてしまった。
母にとって、その光景は日常茶飯事なのか。そう思うと何故か腹の奥が熱くなる。家族より、妻より、聖王の軍師としての仕事を選ぶと言うのか。
溜めに溜め込んだ苛立ちが遂に爆発する。早足に駆け、目当ての天幕を激しく開けて父に飛びつかん勢いで捲くし立てた。

「貴様!自分に妻がある自覚はないのか!ええ!?」
「うわっ、ノワール!?」
「毎回毎回妻も娘も放って仕事仕事と……家族がどれだけ寂しい思いをしているのか理解が出来ぬか!?」

矢継ぎ早に叫ばれた娘の文句に、ルフレの身体が思わず強張る。同時にルフレしかいなかった天幕の床に、戦術書と思わしき書物がその手から滑り落ち、鈍い音を立て、落ちた。それはまるで、最愛だと言い張る妻の呪いに掛かったかのような様だ。
彼の口が何か言いたげに幾度かぱくぱくと動き、そして目を伏せる。言い返す言葉がない、漸く出た言葉は随分と掠れていた。

「ごめん……ごめんな、駄目な父親で。」

今にも泣きそうな弱々しい父を、初めて見た。そして、激しく昂ぶっていたノワールの頭からさあっと音を立てて血の気が引く。
出会った頃から父はそのことに対して酷く悩んでいたではないか。

「ご、ごめんなさい……私、そんなつもりじゃなくて……」
「いや、いいんだ。ノワールの言っていることは正しい、家族を蔑ろにしてるのは俺だからな。」
「父さん……」

今度はノワールが目を伏せる。そんな娘の頭を、ルフレは不器用に撫ぜた。驚いたのか弾かれたように顔を上げたノワールに微笑みを見せて、今度は家族全員でゆっくりしようと呟くのだった。




Lucky 7