Lucky 7



ルフレが倒れた、つい先日の話だ。
ソールの話ではただの過労で、しっかりとした休息をとれば命に別状はないとのことだった。心臓を抉られたかと思うほどの激痛を味わい、ロンクーは付きっ切りでルフレの天幕に篭った。
身体に障るから休んだ方がいいという声を撥ね退けて、ただ彼女の眠るベッドの傍にいる。祈るように妻を見詰めるその姿に、誰もが「離れろ」などと彼を咎めることなど出来やしないと悟り次第に声は掛からなくなった。

「父さん、大丈夫ですか?」
「……マークか。」

天幕の入り口を覆う垂れ布が細く開き、見知った声と顔が姿を現す。
黒い髪がふわふわと揺れ、手に持つ盆の上でグラスがふたつ、かちゃかちゃと音を立てていた。マークはロンクーの横に座り、片方のグラスを手渡す。
ロンクーはそれを受け取り、静かに嚥下した。

「働きすぎで倒れるなんて母さんらしいですよね。」
「……未来でもこのようなことがあったのか?」
「うーん、ちゃんとは覚えていないんですけど……やっぱりこんな風に倒れて、父さんが付きっ切りで看病してた気は、するんですよね。」
「そうか……」

マークの記憶は頼りないが、それでも何故かささくれてしまった心が静かに凪いでいくのが判る気がした。息子の言葉はこうまで響くのか。
ロンクーは少しだけ落ち着いた心で、先より幾分か血色の良くなったルフレの頬を、優しく撫ぜた。




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