午後から乱闘のシフトが入っていたから、痣隠しに以前マルスから貰ったチョーカーを身につけた。若干赤黒い痣がはみ出ているけど、目立つものではないので問題はなさそう。
お昼を食べに食堂へ下りていくと、カムイが私に手を振ってくれた。私が手を振り返すと、「痣、だい……んん!」と何かをいう途中でクラウドに手で口を塞がれてしまった。多分痣関係のことで、クラウドの反応を見るにやっぱり周りには言わない方がいいみたい。
マルスがいないか確認してからご飯を食べることにした。マルスも午後から乱闘のはずなのに、まだ食堂にはいなかった。訓練中なのかもしれない。



*



暫く休んでからリンクと一緒に闘技場に向かった。今日も雨風が強く肌寒かった。リンクを風よけにしながら、ルーフのある道を辿って闘技場に着くと、マルスとルフレ君が既にいて何かを話しているようだったけれど、私が来ると二人ともそっぽを向いて黙ってしまった。なんだろう。
これから、私とリンク、マルスとルフレ君の時間制のチーム戦だというのに、何だか空気が悪い気がした。

「なまえ、昨日はよく眠れた?」

「え! ま、まあ。お陰様でぐっすりと……」

マルスに急に聞かれてびっくりした。昨日は今朝までマルスとずっと一緒だったのに、なんて意地悪なことを聞くんだろ。昨晩のことをまた思い出しそうになって、頭を振って思い出さないようにした。乱闘前に動揺を誘っているのかもしれない。

「あれ? なまえさん、チョーカーしてたっけ?」

ルフレ君が気づいてくれたみたいで、私の首元を覗き込むように頭を少し傾けて聞いてきた。

「これはたまに付けてるよ。ルフレ君の前では初めてだっけ?」

「おまえはなまえのことじろじろ見過ぎだ!」

リンクはルフレ君を押して私から遠ざけてしまった。リンクなんて、私が髪を1ミリでも切るだけで気づくくせに。

「それ僕があげたやつだよね、なまえ」

「うん。そうだけど……」

にっこりと笑顔で笑いかけてくるマルスに少し恐怖を感じながらも肯定した。

「へえ」

ルフレ君も何故かにっこりと笑い、武器を準備し始めた。なんか怖い。

「ねぇ、なまえさん」

「な、何?」

「夕食後に庭を案内してほしいんだけど。僕、来たばかりでわからなくて」

「いいよ。あ、でも今日は雨降ってるから止めた方がいいかも」

「そっか。じゃあ今度案内してくれるかい」

「ちょっと待て!その時は俺もついていく!」

リンクがそう言うとルフレ君と口論し始めた。
乱闘が始まる前にマルスに首の痣のことを聞きたくて、マルスを引っ張って部屋の端に寄った。凄く恥ずかしいけれど、他の二人に聞かれたくなくて、顔を近づけて話した。

「この首の痣は何?」

「何って、僕の奴隷の印」

「やっぱりマルスがやったんだ」

「そうだけど。そのチョーカーだと隠れちゃうからとったら?」

「隠してるの!それよりどうやってこんな痣……」

「どうやってやったか知りたい?」

「ぁっ……」

頬にかかった髪を耳にかけられ、耳元に唇を寄せられて囁かれた。何回か耳にマルスの唇があたり、昨夜みたいな変な気分になり、思わず力が抜け床にへたりこんでしまった。顔が、体が熱い。ドキドキする。

「なまえ!」

「なまえさん!」

リンクとルフレ君が直ぐに駆け寄ってくれたけれど、マルスに腕を持ち上げられ起き上がった。

「大丈夫か?」

「なまえさん、大丈夫?」

「ちょっと目眩がしちゃって」

「やっぱり今朝から調子悪いんじゃないかい?ほら、手が熱いよ」

「何手握ってるんだよ、おまえ!」

ルフレ君が私の顔を覗き込みながら手を握ってきたけれど、リンクにチョップをされて離れた。

「君達さっさと位置についたら?」

気づいたらマルスはもう転送装置にスタンバイしていた。ちょっとイラついているようだ。
二人のおかげで熱は冷めて、ようやく仕事に集中できそう。
転送装置に着いて私は緊張で深呼吸をして武器を構えた。
リンクとのチーム戦は慣れっこな上、百戦錬磨のリンクのサポートは常に完璧なので、特に訓練しなくてもいつも不安はなかった。リンクとはそもそも、お客さんのクレームにより乱闘でシフトが組まれなくなり、チーム戦でしか一緒にならなかった。乱闘になると永遠と私を庇って爆撃を受けたり、私だけに攻撃をしなかったり、酷いと鈍足のくせに私を抱きかかえて逃げようとするので当たり前と言えば当たり前の采配だ(実は一部のマニアには受けていたらしいという噂はあったけど)。
だけど、今回の相手はマルスとルフレ君。いつもリンクが睨んでいる相手な上にマルスはここのキングになる程の腕だ。
リンクが力まないか心配だ。リンクを見ると目を閉じて何かをぶつぶつ言っていた。

「なまえは俺が守る。なまえは俺が守る」

マルスの方を見ればルフレ君と睨み合っていて怖かった。今日の乱闘は空前の大荒れになりそうな予感がする。
そして乱闘が始まった。
制限時間は二分、道具なし。ステージはオービタルゲート周域で、最近新設されたばかりのところだった。宇宙空間でグレートフォックスから、ミサイル、三体のアーウィンを乗り継いで闘うステージで、メンバーが落ちる落ちる、とよく文句を言っているところだ。
皆慣れていないステージのはずなのに、始まった瞬間事前に考えていたように動いていた。

「サンダー!」

「フンッ」

ルフレ君の放ったサンダーをリンクがブーメランで打ち消し、ブーメランに巻き込まれ近づいて来たところをリンクが弓を一度引き、直ぐに横スマッシュを入れていくがそれを狙ったかのようにルフレ君は何か技をためていて、強い剣の突きを放った。リンクは押し負けて吹っ飛んだが、直ぐに受け身をとって次の攻撃の構えをした。

私はというと仕事なので本気でマルスに杖で殴りかかりにいくと、あっさり避けられ服を掴まれ下に投げられた。受け身を取り、起き上がるとまた掴まれて今度は場外へと横投げされた。ギリギリで動く機体の端に捕まり、マルスに追撃されないかヒヤヒヤしながら思いっきり飛んで半身を反らし機体に着地しガードをしたが、そこにはマルスは待っておらず、奥でリンク相手に2対1でタコ殴りにしていた。

「リンク!ごめん!今いくよ!」

「なまえの為なら俺はぁぁぁぁ」

また何かを叫びながらリンクは円を描くように剣を振り回しマルスとルフレ君をけん制した。二人がそれに当たればよかったのだけれど、二人とも避けて技をためていた。慌てて魔法を唱えるけど間に合わなかった。
案の定、リンクが振り終えた直後にルフレ君のトロンが決まり、リンクは吹っ飛んで場外アウトになった。マルスの横スマッシュは空振りしルフレ君を見てまた舌打ちをしていた。
ネット配信で、事前にルフレ君の動きは見ていたけれど、今日は格段に上手くなっていた。一方のリンクはいつもよりかなり弱くなっていて闘いの内容はお粗末だ。
ステージは三機のアーウィンに代わり、私はリンクが来るまで端の機体に逃げ切り、リンクが来たところで再びこちらへ来る二人を待ち構えた。私は魔法を発動し、リンクは弓を引き、けん制をした。しかし、相手はルフレ君とマルス。サンダーを使うルフレ君を盾にしながらマルスが近づいて来て、攻撃範囲内まで来ると一気に懐に入って来た。
マルスの剣術は動画で何千回と見ていたけれど、出が早めなので避けきれず何発かもらってしまった。とにかく距離をとらないと、とマルスの攻撃をかわしながら隣の機体に移り、再び中距離から魔法を連発した。もう時間がないので的をルフレ君に絞るしかなく、絶対に機体から落ちないように気をつけてマルスをけん制しつつもルフレ君を集中して狙った。
リンクもそれがわかったようで二人でルフレ君に狙いを定めた。そしてルフレ君のダメージポイントがたまったところで強攻撃範囲内まで距離を詰めた。しかし隙のない技でこちらに攻撃をしかけてくるのでなかなか打ち込めないでいた。さらにマルスがリンクを徹底的に落としにかかっていて、ルフレ君も私に魔法を打ちつつもリンクを狙っていた。
そしてマルスによってリンクが撃墜されたところで、乱闘終了となった。結果はマルスチームの勝ちだった。二人がお決まりの勝利の台詞とポーズを決めたところで、転送装置を使って闘技場に戻った。

「負けちまった……」

「二人とも強かった〜!次頑張ろうよ」

酷くショックを受けているリンクの肩を叩いてなだめた。いつもリンクとのチーム乱闘のときは勝率8割を超えていたのでショックを受けるのも当たり前だった。

「なまえ〜!」

ガバッと抱きしめられ、マルスに見られるのが嫌だったけれど、今回はリンクが可哀想だったのでよしよしと腰に手を回して叩いて直ぐに離れた。仕事中はいつもリンクに甘くなってしまう。早くルフレ君とマルスにも声をかけよう。

「二人とも!お疲れ様!」

「なまえさん!お疲れ様!」

「お疲れ。なまえはいつもより弱かったね」

「私が弱いんじゃなくて二人が強すぎるの!」

「あ、そう。で、ルフレは次僕と対戦だよね?」

「ええ。そうですよ。お手柔らかに、英雄王」

「こちらこそ」

マルスとルフレ君はお互い不敵な笑みを浮かべて怖かったので、二人には触れないように次の対戦の為に部屋を移動した。リンクも私と同じく違う部屋から乱闘ステージに飛ばされるみたいなので私は一人で、他の対戦者が来るのを待った。

数分後、シュルク君が部屋に入って来た。

「なまえ!」

「シュルク君、今日は宜しくね」

「よろしく!なまえとは初めての対戦だから緊張するよ!」

「私も今日は新メンバーとやるから緊張するよ」

今日のメンバーは何故かさっきの剣士3人組、今回はシュルク君、カムイ、クラウドというまたもや剣士3人組だ。マスターは何を考えてるのかな。
シュルク君を見ると瞳が明るい青に光り輝き、びっくりした。

「シュルク君、今の何?」

「え?何が?」

「何って今、瞳が……」

「部屋ってここかな?」

カムイとクラウドがやってきて、話が中断されてしまった。特殊な能力を持つのはメンバーの中にもちらほらいるので、珍しいことじゃない。今の光る瞳もシュルク君の特殊能力なのかもしれない。
そして皆で挨拶を交わして位置についた。
今度の相手は皆新人!絶対負けられない
 
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