母屋の隣に併設されているガレージを借りて、ワリオのバイクを直していると、一緒に手伝ってくれていたワドルディのライトとレフト(僕が名前をつけた)がそわそわし始めた。
「どうしたの?」
ライトとレフトは左右に体を揺らすと、短い手で外の母屋を指し、僕を見て頷くと走っていってしまった。
「気をつけてね〜!」
手を振り送り出すとガレージ内は僕とクラウドの二人になってしまった。クラウドを見ると、クラウドも僕を見ていたみたいでぷいと目をそらされた。クラウドは少し人見知りをするタイプみたいだ。
「そこのスパナ取ってくれるかな?」
「あ、ああ」
クラウドからスパナを受け取り、部品を結合させた。クラウドもバイクいじりは出来るらしいけど、この型の直し方がイマイチ分からないらしい。バイクを壊してしまった罪悪感からなのか僕が直し終えるまでここにいて見ているつもりのようだ。
「悪いな」
「気にしなくていいよ。僕、こういうの好きだから」
「確かに慣れた手つきだな。乱闘以外はここに缶詰めと聞いていたが」
「まあね」
本当に僕は大体をここで過ごしていた。仲良くなった同じ機械好きのワドルディ達と一緒にワドルディ用のバイクやローラーと板を使っただけのスケボー等を作っていた。
壊れたバイクはほぼ直し終えて、布で全体の汚れを落とした。
「よし、これでいいかな」
エンジンをかけると問題なく動いた。
「ありがとな。助かった」
「また壊しちゃったら僕に言ってね」
「そうはならないようにするさ」
「さてと、お昼食べてなかったし食べに行こうかな。クラウドは?」
「俺も行く」
バイクに乗るのかと思いきや、珍しく僕と一緒にお昼御飯を食べに行くという。クラウドとはちゃんと話すのは初めてだったし避けられている気がしてたから嬉しいな。
*
食堂の前を通りかかると厨房からワドルディ達が何匹かでてきた。次の仕事に向かうようで、列を作って、僕達を避けながら外へでて行った。
厨房が閉じる前、甘い香りが漂ったのと同時になまえの声がした気がして、興味本位で覗いて見るとルフレとなまえが二人で同じエプロンを着て料理をしていた。エプロン姿のなまえを見ると静かにボトムがキツくなった。
「なまえさん、チョコはお湯をはったボウルで温めるって書いてあるけど……」
「え、チョコってお湯入れて溶かすんじゃないの?」
「何作ってるの?」
「あ、シュルク君。クラウドも」
「げ」
なまえはキラキラした目で、ルフレは一瞬嫌そうな目で僕を見たが、直ぐににこにこ顔になった。
手元を見ると、なまえはチョコレートの入ったボウルにお湯を並々と注いでいて、ルフレはタブレット端末を持っていた。それを見て、ピンと来た。今日はバレンタインデーというやつだ。そういえば昨日ピーチ姫とゼルダ姫が話していたのを聞いた。でも女性が男性にチョコレートやその類のものをあげる日と聞いたのに何でルフレも作ってるんだろう。
「チョコブラウニー作ってるの?」
「チョコクッキーだよ」
「僕の分はあるのかな」
「メンバー全員の分あるよ」
「それは大変だね。僕も何か手伝おうか?」
「いや、僕となまえさんで十分だ。クラウドがお腹空いてるみたいだし、一緒に御飯でも食べてきたらどうだい?」
「俺は別に……」
「え、お腹空いたって?御飯早く食べたいって?」
「クラウドはそんなにお腹空いてるの?じゃあこれ飲む?失敗しちゃったみたいなんだ」
そう言ってなまえはお湯を入れて薄まったチョコレートをクラウドに差し出した。正直僕がこれを飲みたい。
「いや、気持ちだけ受け……」
「なまえ、ありがとう!」
クラウドが受け取りたくないようだったので、代わりに僕がなまえからお湯チョコレートをもらった。なまえが作ったものを口に入れることができるなんて嬉しいな。
「じゃあ、食堂で食事と一緒に頂こうかな。行こう、クラウド」
「あ、ああ」
クラウドと一緒に食堂に行って、ワドルディ達にいつものものをトレーに置いてもらって席についた。僕は最初にお湯チョコレートを飲んだ。お湯で薄まってるとはいえ、とても甘くて美味しい。
「はぁ、美味しいな」
「本当か?」
「クラウドも飲む?」
「いや、いい」
「美味しいのになぁ」
「……」
クラウドは甘いもの嫌いなのかな。僕はお湯チョコレートをあっという間に飲み干してしまった。なまえはクッキーもくれると言っていたから、このお湯チョコレートと合わせてホワイトデーという日にお返しをしなくちゃ 。
「そうだ。クラウドはバレンタインデーって知ってる?」
「知らないな」
「今日がその日なんだけど、女性が男性にチョコとか甘いものを送る行事みたいなんだ」
「ほぅ」
「それでホワイトデーっていうのもあってさ……」
この世界のイベントについて説明してもクラウドは興味のなさそうにしていた。
「なまえにクッキーもらったらどうするの?」
「別にどうも……」
「だからホワイトデーにお返ししなくちゃいけないんだって」
「お返し、か。俺は贈り物を考えるのは得意じゃない」
「なまえは何が好きか知らない?」
「そういえば一緒にバイクに乗ったが喜んでいた」
「バイク乗ったの?」
「ああ。今朝たまたま外で居合わせて、運転は出来ないから乗せてくれと」
「へー」
僕もなまえと乗りたかったな。なまえが僕の後ろで脚を開いてバイクに乗る姿を想像するだけでボトムが少し濡れてきた。
「手作りバイクなんてどうだろ」
「バイクを一から作れるのか?」
クラウドがキラキラした目で僕を見つめてきた。
「一度ワリオのバイクをバラして構造が分かれば作れると思うよ。部品があればだけど」
「部品ならどんな手を使っても集めるさ。あんた凄いな」
「ありがとう。趣味で褒められると嬉しいよ」
こうしてホワイトデーに向けてバイク作りの準備が始まった。ガレージに行きライト、レフト、そしてクラウドと一緒にワリオのバイクを解体して構造を調べるところまで今日は終わらせることが出来た。
母屋に戻るとなまえがバスケットを片手にチョコクッキーを配っていて僕はモナドの形のクッキーを、クラウドは雲の形のクッキーを貰っていた。
「ありがとう。嬉しいよ!」
「恩に着る」
「どういたしまして。じゃあまたね」
にこりと笑うと、なまえはふわりと甘い香りを漂わせて行ってしまった。
クラウドと後から来たカムイと一緒に食堂で紅茶を入れて早速クッキーを食べた。かなり硬くて噛み切るのが大変だったけど、甘くてとても美味しい。
「なまえとルフレって料理下手なんじゃないのか」
「なんか鋼の味が……」
「そうかな?美味しいと思うけどな」
クラウドとカムイは美味しくなさそうに食べていたけれど、僕にとっては凄く美味しかった。
「また食べたいなぁ」
「あんた凄いな。色々と」