夢を見た。あの素敵な青い髪の王子様の夢だ。その夢では王子様の顔はいつもよりはっきりしていて、私の知っている人に似ていた。そう、あのマルスという本物の王子様とそっくりだった。もしかして、今まで見ていた夢の中の王子様はこの世界のあの人だったのかな。そんなことはありえるのかな。だとしたら、それはとても奇跡的で、そして運命的だ。
夢から覚めてはっきりした頭でここまで考えるとドキドキが止まらなくなった。夢の中で初めて見た時から恋い焦がれた人がこの世界に、それもとても身近なところにいるのだ。一歩部屋から出れば会えるかもしれない。さらに一歩踏み出せば王子様と結ばれるかもしれない。そもそも私がこの世界に来たのは彼に会う為だったのかもしれない。そう考えるだけでとても幸せに思えた。
丁寧に身支度を済まして、部屋の外にでた。外に出るとあの王子様がちょうど向かいの部屋から出てきたところだった。どうしたらいいかわからなくてパニックになってしまい、固まってしまった。まさか本当に部屋からでた瞬間に会えるなんて。

「おはよう」

王子様は私を正面から見つめて言った。私は彼を直視できずに蚊の鳴くような声で、おはようございます、の一言返すので精一杯だった。彼は私に真っ直ぐ向かってくるので、思わず退がって背を部屋の扉にぴたりとくっつけた。彼は体が触れてしまいそうな程近づいてくると立ち止まり部屋の扉に手をつき、縮こまる私を見下ろしてきた。顔がかなり近くて恥ずかしい。しかも顔をじろじろ見られてる。恥ずかしさと緊張で気を失ってしまいそう。

「君、なまえだっけ?」

「そ、そうです」

「敬語は止めなよ。君には似合わない」

「え?それって……」

「君はどこから来た? 他に一緒に来たやつはいなかったか?」

「どこって言われても……私は一人で……」

「おい! 何やってんだ?」

パタパタと間隔の短い足音共にリンクの声がした。彼の腕の間から覗くとリンクが心配そうな顔をしてこちらへ来た。
王子様は扉についていた手を離した。よくわからない尋問が終わり、距離も離れたのに心臓はまだ激しく脈打っていた。

「別に何も」

「何もってことはないだろ」

「君には関係ない」

「なんだよそれ」

リンクは酷く怒っていて怖い。王子様は気にも留めない素振りで階段の方へ歩いて行ってしまった。

「リンク、ちょっと話してただけだから。私は大丈夫だよ」

リンクの服を引っ張って宥めても、まだ納得のいかないような顔をしていた。

「本当に気にしないで」

「なまえがそういうなら。またあいつに怖い目に合わされたら俺を呼べよ」

「うん」

尋問みたいに質問責めにされたのは少し怖かったけど、本当のところはとても嬉しかった。あの運命の王子様とあんな至近距離で会話をしてドキドキして、そのドキドキさえ心地よく感じてしまっていた。私はあの夢の中の王子様とマルス王子様が同一に思えてすっかり彼に恋をしてしまったみたいだ。
 
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