湖から戻り、部屋でシャワーを浴びて新しい服に着替え、何事もなく朝食の席に着いた。驚いたことにリンクが食堂の入り口に現れた。立ち上がってリンクに近づいてみると、彼の顔の傷は少し腫れぼったい程度にまで癒えている。
「大丈夫なの?」
「なまえ、昨日は看病ありがとな。俺はもう大丈夫だ」
「よかった。こんなに早く治るなんて思わなかった」
「そ、それでおまえに伝えたいことがあるんだ」
「なに?」
「俺と結婚してくれ!」
リンクは跪くと後ろ手からばっと真っ赤な花束を差し出した。急すぎてわけがわからない。リンクが私を好きってこと?それともからかわれてる?
周りは全員私達のことを見ていてとても恥ずかしくなった。その中にマルスもいて、一瞬だけ彼と目が合ってしまった。
「リンク、突然過ぎて……」
「悪い。急にこんなこと言われても困るよな。じゃあ、考えておいてくれ。俺は本気でおまえのことが好きなんだ。これは貰っておいてほしい。なまえは天使みたいだから花がよく似合う」
一応花を受け取った。白の紙に包まれて赤のリボンで一つに結ばれている。いい匂いのする綺麗な花だ。
リンクに天使みたいなんて言われて、満更でもなく思ってしまった。とても嬉しい。リンクはかっこよくて、頼りになるし、性格もいい。だけど、私には好きな人がいる。今断ってしまわないとリンクを余計に傷つけてしまう。
「ありがとう。でも私リンクのこと仲間として好きだけど、結婚はできないと思う」
「な、なんでだ? やっぱり俺なんかじゃだめなのか?」
「リンクはとても素敵な人だけど、恋愛対象として見れないの」
「どの辺がだ? 悪いところがあれば直すぞ」
うう。かなり食い下がる。できれば皆がいるところで言いたくない。他に好きな人がいるなんて、こんな狭いコミュニティだと噂の的になってしまう。
「リンクに悪いところなんてないよ。私に問題があるから」
「なまえに問題なんてない! あっても俺はおまえの全てを愛せる!」
リンクは立ち上がり、私の花を持つ両手を握った。一生懸命に私の目を見て言うその姿に心が揺れた。こんなに私のことを好きになってくれる人がこの先現れるのかな。こんなに良い人が私を好きっていってくれるなんてこの先あり得るのかな。
マルスを見た。誰を見てるわけでもなくじっと一点を見つめている。夢の中でいつも穏やかな笑みを湛えていた彼とはとても良く似ているけれど、雰囲気はまるで違って笑いもしなければ優しくもない。それでも私は彼のことが好きで彼を見るだけで幸せな気持ちになれる。リンクにはそれはない。答えははっきりしている。
「ごめんなさい」
「おまえを困らせるつもりはなかった。俺は諦めないから気にしないでくれ」
俺は諦めないから気にしないでくれ?言葉に違和感を覚えつつも、がっくり肩を落として食堂から退場するリンクを見送った。後日毎日花束と共に愛の告白をされるとはこの時の私は知る由もなかった。