目覚めると僕はベッドの上にいた。身を起こして見渡せばベッドが十台以上もある見たこともない空間に僕だけが一人いた。閉められた窓に目を向ければ、大雨が降っているようで雨粒がびっしりついていた。雨のせいで外が暗く見え今が何時だかもわからない。空気が何だか気持ち悪く、違和感のある温かさがあった。
クロムと離れてあの後……僕はあの時のように記憶が途切れ途切れになっていた。大事な何かを忘れたような気がした。何だっけ?
ベッドの上で思い出そうにもクロムや他の仲間との行軍の断片くらいしかでてこなかった。
大事な記憶を思い出そうとしていると、一頭身で口のない茶色いモンスターやら変なキノコ頭のちっちゃいモンスター等がでてきて、僕は酷く驚いたが、至れり尽くせりでご飯を運んでくれたりマッサージしてくれたりした。



*



それからガノンドロフという如何にも悪そうな奴が、僕が今いる世界がどういうものなのか説明してくれて見たこともない設備にも納得がいった。
夜、スマッシュブラザーズのメンバー全員の前で自己紹介をし、拍手で向かい入れてもらえた。ぐるりと周りを見渡すと、見たことのある青い服がスマブラメンバー達の後ろの方で見えた。あれは彼女じゃないか?

「ルキナ!」

ルキナらしき人物に駆け寄るとルキナとは異なる人だった。その人はなんと伝説の英雄王マルスさんらしい。ルキナじゃないのは残念だったけれど、まさか伝説だと思っていた人物が実在して興奮のあまり質問攻めにしてしまった。
気良く質問に答えてくれるかと思いきや、気の無い返事にさらに途中で視線が完全に出入り口へ向かう女の子の方へいっていて、「もういいかな?」と面倒そうな顔をして失礼な態度だった。
これがあの伝説の人か?と疑うほど、なんというかそっけない人だった。

「さっきの女の子……」

「ああ、あれ?あれは僕の奴隷だから」

「ど、奴隷?」

この人何を言っているんだ。奴隷って。
僕の聞き返しに答えることなく、マルスさんは出入り口の方へすたすたと行ってしまった。
呆然としていると、赤髪の男の人と顔が狐で体がほぼ人間という不思議な形態の方が僕に話しかけてくれた。赤毛がロイで狐がフォックスというらしい。ロイという名前もどこかで聞いたことがある気がした。

「マルスさんてどんな人?」

「う〜ん。なまえの言葉を借りるなら『鬼畜、腹黒、ドS』、かな?」

「悪魔とかも言ってたぞ」

「すごい言われようだな」

伝説の英雄王がそんな人だったのか。かなりショックだが、そのなまえって人も口が悪いな。

「まあ"ここの"キングでもあるから憧れる奴もいるとかいないとか」

「キング?」

「ルフレは聞いてないの?」

「キングっていうのはな……」

どうやらキングというのは、闘技場での年間の戦闘数とその結果順位をポイント換算して一番の得点の多い者がキングの称号を得るらしい。
流石は伝説の人といったところか。やっぱり強いんだ。少し安心した。



*



ここに来て次の日、闘技場で闘う為の訓練を受けることになった。
訓練は仮想現実という技術を使って作られた場所で行われ、一本橋に夕日が印象的なところだった。なんとここで剣で切りつけられても全く痛みも感じず、ただそれが衝撃となってダメージポイントというものが蓄積し、その比率によって吹っ飛ぶだけらしい。
訓練の相手はとても特徴的な人だった。緑色を基調とした服に同じ色の三角帽子を被り、帽子からは尖った耳が覗いており、ピアスが幾つかついている。長めの金髪に青目で、顔はかなり整っていて、高い鼻がその顔をより完璧にさせている。おまけに表情はキリッとしていて、真面目そうだ。
これは女性陣が放っておかないんじゃないかな。

「おまえと話すのは初めてだったな。俺はリンク。よろしくな、ルフレ」

「こちらこそよろしく、リンクさん」

「さんはいらないぞ。だが、最初に言っておくことがある!」

ずびしっ、と音が聞こえそうなほど、思い切りよく指を指された。

「なまえは俺のもんだからな!」

「え?」

「え? じゃねぇ! なまえには色目使ったり話しかけたりするなよ!」

「は、はあ……なまえって人とはまだ話したことないけど、気をつけます」

「わかったならいい」

随分となまえって人にご執心らしい。イメージとかなりキャラが違って驚いた。

「なまえって人と付き合ってるの?」

「お、おおおお俺がなまえとな、なんだって!? ぶはっ! なまえの裸を思い出したらまた鼻血が!」

「うわっ」

突然鼻血を吹き出し、リンクはどこからかちり紙を取り出し鼻を押さえた。
今、裸っていった? 何なんだこの人。

「とりあえず、まずはおまえの技を見せてくれ」

ちり紙をせっせと鼻に詰めながらいうので、この人との訓練にかなり不安になったけど、剣と魔道書を取り出し、簡単に技を見せた。

「多対戦はやったことあるか?」

「まあ軍師といえど、実戦で生きてきたので」

「ここは同時に4人が基本だ。そうすると混戦になるから有利な技と不利な技がある。さっきおまえがやったあれは……」

鼻から飛び出てるちり紙さえ気にしなければリンクはやっぱり真面目な人のようだった。ただなまえって人の名前を出すだけで酷く動揺するし、うるさくなるのでかなり面倒なタイプだ。

「なまえ」

「ぶはっ! また血が!」

サシの勝負でリンク相手なら負ける気が全然しないなこれ。
 
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