lion
夜の9時頃愛車の古式コンバーチブルを走らせながら視界に入る風に揺られている髪を見てふと思った。
「オオカミ」
「何がだ?」
「あなたのイメージ」
「何でオオカミなんだ!? この髪見てどうしてそうなる!?」
何故か興奮したように彼は金色のふさふさした髪を指差した。今から雀荘に狩りにいくんだから、狩りをしない雄ライオンよりも狩りをする雄オオカミがイメージにぴったりだと思うのに。
「あら。そこまで強く言わなくても」
「前にもキャットちゃんとか言われたことあるからだ。俺は豚じゃねぇ!」
キャットは猫よ、といってあげようかと思ったけどその言った相手が気になり教えないことにした。
「誰がキャットちゃんて言ったのかしら」
「あ? 別に誰でもいいだろ?」
「そうね」
ああ、別の女ね。彼にとって都合の良い女は数多いる。私もそのうちの一人。そういう意味で女を囲ってる彼は雄ライオンなのかもしれない。
「オオカミて言われるやつは他にいた」
「雀士の世界のこと?」
「ああ」
「ふーん。で、いつ終りそう?」
「今日はわからねえ。やりたくなったら連絡するわ」
「あ、そう」
久しぶりに呼んでくれたと思ったら直ぐこれだ。完全に私を足に使っている。前回も食事すらなかった。
「ここでいい? 繁華街までは入れないから」
「ああ」
彼指定の雀荘の近くまで着いたので、彼を下ろした。別れ際にキスしてくれることを期待したのに彼は振り向きもせず、片手を上げひらひら振って行ってしまった。群れ唯一の雄オオカミにとって、私は交尾の対象にもならない最下位の雌なのだと悟った時、彼とは決別する決心ができた。それも彼から連絡がある時までしか続かなかったけれど。