tairyu
※愛梨沙とは良い恋敵で殴り合いの喧嘩する仲
※キャラ間の呼び名、言葉遣いは想像です
日照権なんて鬼頭家に掛かればどうにでもなった。住宅街のど真ん中にタワマンを建設したり、幼稚園の前に犯罪者の更生保護施設を建設したりと法律と倫理の限界も超えてきた。なのに一戸建ての家の間にタワマンを建てたってだけであの源三に怒られて木槌で吹っ飛ばされた。
それから数ヶ月は悔しくてジムに通って運動していっぱいご飯を食べたのに、どうにも筋肉が付かなくて、私の担当地区でさっきまた源三との闘いで吹っ飛ばされて負けてしまった。
悔しくて、ジロジロ見てくる通行人を気にせず地面に横たわったままジタバタしていると、同僚の颯くんがやってきたから暴れるのをやめてすまし顔を作った。
「ここは私の担当!帰って!」
「いや、なに地面に転がっといてなんともない顔してるんや?自分、なにしてん?周りの眼がいったいでぇ〜」
「あの源三に負けたの!見りゃわかるでしょ!」
「だらしがあらへんなあ。どや、俺に任せてみいひんか?代わりに俺があいつをぶっ飛ばしたるでぇ」
「嫌!私が自分で勝たないと意味がないの!じゃないと社長に無能だと思われちゃう!」
私を拾ってくれた恩を社長に返す為に毎日必死で働いている。自分の担当地区くらい守れないと社長に申し訳がたたない。まあ、こんなに頑張っている理由は他にもあって、鬼頭社長に惚れていたりする。社長は一生ついて行きたいと思えるカリスマ性があるのは勿論のこと、色素の薄い綺麗な亜麻色髪や、犬歯の鋭く尖った歯、長い下睫毛、割れた腹筋など素敵なところがあり過ぎて惚れないわけにはいかない。
「そりゃ、お前が頑張ってんのは応援しとるが……せや!俺のこのスピードを身につければあんな大工野郎なんて余裕や!俺が訓練したる!そして、いい加減立てや自分!なにずっと寝てんねん!?」
「暴れてる時に気づいたんだけど、実は捻挫してるっぽくて……喜んで訓練受けるから助けて」
颯くんの訓練と手を貸してくれる申し出は凄くありがたかった。ジム通いだとあの源三には勝てないだろうし、颯くんからあの驚異的スピードを出す方法を教えてほしい。
「ほれ、手出しぃ」
颯くんが出してくれた手を掴み、引っ張り起こしてもらった。立ってみると、やっぱり片脚を挫いたみたいで颯くんに寄りかからせて貰った。
「なんや。体が軽いのぉ。せやから、あんな野郎に負けるんやで?」
「颯くんだって。そんなに細っこくて大丈夫なの?」
「俺のは筋肉で引き締まっとるんや!その分重いが、俺のスピードに勝てるやつはおらへんでぇ!」
「そう……あ」
「ん?」
向かい側から胸筋や腹筋を大胆に露出するようにグレープ色のファー付きジャケットを着た社長がやってきて、相変わらず今日も眉の吊り上がった攻撃的な表情をしていて惚れ惚れしてしまう。
「社長!こんにちは!」
颯くんにしがみついたまま、なんとか頭を下げて社長に挨拶をした。
いつもならここでおべっかのひとつでも言うところだけど、任された地区で鬼頭組にとってライバルである桐島組の源三に敗北してしまった後でそんなことはできなかった。
「相変わらず元気だな。して、何故十文字がここにいる?」
「社長、俺はナマエの様子を見に……」
「お前は今日、自分の担当地区のタワマン管理者と会合予定ではなかったか?」
「それはもう終わってナマエが上手くやっとるか見に来たんです」
「そうか。ナマエは怪我をしてるのか?」
「えっと、これは……」
「こいつは脚を怪我しとります、社長。またあの源某にやられたみたいなんですわ」
「……っ!」
颯くんに源三に負けたことを暴露されて声にならない悲鳴がでかかった。どうせ社長にバレるなら自分から報告したかったのに。
「……十文字、お前は帰っていい。ナマエを貸せ」
「え?あ、はい!ほれ、とっと社長のとこへ行けや!」
颯くんはさっきまで嫌な顔ひとつせずに私を支えてくれていたのに、今は背中を押して私を社長の方へ差し出してきた。
最近あの源三に負けてばかりだから、社長がどう私を怒るのか怖くて仕方ないし、申し訳なくていたたまれない。
押された勢いでよろよろしながら社長の前まで行くと、社長が腕を広げて──両手を私の背中とお尻あたりに回して抱きしめてくれた。
社長のイケナイ感じの良い匂いに包まれて驚いたのは一瞬のことで、体がふわりと浮いて社長の肩の上に担がれてしまった。
「しゃ、社長!」
「行くぞ。おい、十文字。見てないでお前はさっさと帰れ」
社長には進行方向とは逆に担がれてるから様子は見れないけど、どうやらまだ颯くんがいるらしい。
スカートだから颯くん側にお尻向けるのは恥ずかしい。しかも社長が見えないようにスカートの裾を押さえるように担いでくれているけど、社長の手のひらの熱や感触をスカート越しに感じて気が気じゃない。
「は、はい……ナマエ、また明日な!あの件考えときぃ!」
お尻を向けているから声が颯くんまで届きにくいけど、なんとか、「また明日」と返しておいた。
「十文字、明日会社に来い。やって欲しい業務がある」
「わかりました!では社長、失礼します!」
颯くんが行ってしまうと、社長とふたりきりになってしまった。まあ、ふたりきりというには状況がおかしいけど。
社長は黙々と歩いている。社長は胸筋と腹筋から見るに重いものでも持てるだろうけど、私のことを重いと思っていないか気になってしまうし、何より源三に負けておいてこんなご褒美をもらってしまって申し訳ない。それからこんな姿を愛梨沙ちゃんに見られたら大変だ。愛梨沙ちゃんは社長のこと大好きだから関係を拗らせたくない。この前髪の引っ掴み合いの喧嘩したけど。
「あの、社長……」
「なんだ?」
「私、自分で歩きます……源三に負けた分、逆立ちで家に帰って出直してきます!」
「その気概は買ってやるが、スカートで逆立ちでする気か?」
「うう……それは……」
「田村源三に負けた分はこれから取り戻していけ」
「は、はい!ありがとうございます!次こそは絶対源三に勝ってみせます!」
「ああ、期待している」
社長に期待している、なんて言われたら嬉しくて仕方がないのと、期待してくれているのにいつも源三に負けるのが悔しくて胸がいっぱいになってしまい、眼頭が熱くなった。
我慢しようとしても無理だった。ポロポロと涙が逆さに溢れて、こめかみを通って頭皮に流れ込み、下に垂れる毛先へと伝っていく。
「しゃちょ〜っ!」
「泣くでない。早く病院に行って治療するぞ」
「でも脚挫いただけです!」
「癖になると困るだろう」
「しゃちょ〜っ!」
社長は怒るどころか私に優しくしてくださったことが胸にきて涙が止まらなくなり、社長の運転手つきお車で鬼頭組が建設に関わった病院に着くと、脚の怪我よりも先に脱水症状で点滴を受けることになってしまった。その間も社長が私を傍でみてくださっていることにも感動してまた泣き出しそうになっていると、どこで情報を得たのか愛梨沙ちゃんが病院に現れた。愛梨沙ちゃんは理由を付けて社長を退席させると、私の頬を平手で打ってくれた。お陰で涙がスッと収まって、「ありがとう」と御礼を言うと、今度は反対の頬を打たれたので私もやり返してやった。
※キャラ間の呼び名、言葉遣いは想像です
日照権なんて鬼頭家に掛かればどうにでもなった。住宅街のど真ん中にタワマンを建設したり、幼稚園の前に犯罪者の更生保護施設を建設したりと法律と倫理の限界も超えてきた。なのに一戸建ての家の間にタワマンを建てたってだけであの源三に怒られて木槌で吹っ飛ばされた。
それから数ヶ月は悔しくてジムに通って運動していっぱいご飯を食べたのに、どうにも筋肉が付かなくて、私の担当地区でさっきまた源三との闘いで吹っ飛ばされて負けてしまった。
悔しくて、ジロジロ見てくる通行人を気にせず地面に横たわったままジタバタしていると、同僚の颯くんがやってきたから暴れるのをやめてすまし顔を作った。
「ここは私の担当!帰って!」
「いや、なに地面に転がっといてなんともない顔してるんや?自分、なにしてん?周りの眼がいったいでぇ〜」
「あの源三に負けたの!見りゃわかるでしょ!」
「だらしがあらへんなあ。どや、俺に任せてみいひんか?代わりに俺があいつをぶっ飛ばしたるでぇ」
「嫌!私が自分で勝たないと意味がないの!じゃないと社長に無能だと思われちゃう!」
私を拾ってくれた恩を社長に返す為に毎日必死で働いている。自分の担当地区くらい守れないと社長に申し訳がたたない。まあ、こんなに頑張っている理由は他にもあって、鬼頭社長に惚れていたりする。社長は一生ついて行きたいと思えるカリスマ性があるのは勿論のこと、色素の薄い綺麗な亜麻色髪や、犬歯の鋭く尖った歯、長い下睫毛、割れた腹筋など素敵なところがあり過ぎて惚れないわけにはいかない。
「そりゃ、お前が頑張ってんのは応援しとるが……せや!俺のこのスピードを身につければあんな大工野郎なんて余裕や!俺が訓練したる!そして、いい加減立てや自分!なにずっと寝てんねん!?」
「暴れてる時に気づいたんだけど、実は捻挫してるっぽくて……喜んで訓練受けるから助けて」
颯くんの訓練と手を貸してくれる申し出は凄くありがたかった。ジム通いだとあの源三には勝てないだろうし、颯くんからあの驚異的スピードを出す方法を教えてほしい。
「ほれ、手出しぃ」
颯くんが出してくれた手を掴み、引っ張り起こしてもらった。立ってみると、やっぱり片脚を挫いたみたいで颯くんに寄りかからせて貰った。
「なんや。体が軽いのぉ。せやから、あんな野郎に負けるんやで?」
「颯くんだって。そんなに細っこくて大丈夫なの?」
「俺のは筋肉で引き締まっとるんや!その分重いが、俺のスピードに勝てるやつはおらへんでぇ!」
「そう……あ」
「ん?」
向かい側から胸筋や腹筋を大胆に露出するようにグレープ色のファー付きジャケットを着た社長がやってきて、相変わらず今日も眉の吊り上がった攻撃的な表情をしていて惚れ惚れしてしまう。
「社長!こんにちは!」
颯くんにしがみついたまま、なんとか頭を下げて社長に挨拶をした。
いつもならここでおべっかのひとつでも言うところだけど、任された地区で鬼頭組にとってライバルである桐島組の源三に敗北してしまった後でそんなことはできなかった。
「相変わらず元気だな。して、何故十文字がここにいる?」
「社長、俺はナマエの様子を見に……」
「お前は今日、自分の担当地区のタワマン管理者と会合予定ではなかったか?」
「それはもう終わってナマエが上手くやっとるか見に来たんです」
「そうか。ナマエは怪我をしてるのか?」
「えっと、これは……」
「こいつは脚を怪我しとります、社長。またあの源某にやられたみたいなんですわ」
「……っ!」
颯くんに源三に負けたことを暴露されて声にならない悲鳴がでかかった。どうせ社長にバレるなら自分から報告したかったのに。
「……十文字、お前は帰っていい。ナマエを貸せ」
「え?あ、はい!ほれ、とっと社長のとこへ行けや!」
颯くんはさっきまで嫌な顔ひとつせずに私を支えてくれていたのに、今は背中を押して私を社長の方へ差し出してきた。
最近あの源三に負けてばかりだから、社長がどう私を怒るのか怖くて仕方ないし、申し訳なくていたたまれない。
押された勢いでよろよろしながら社長の前まで行くと、社長が腕を広げて──両手を私の背中とお尻あたりに回して抱きしめてくれた。
社長のイケナイ感じの良い匂いに包まれて驚いたのは一瞬のことで、体がふわりと浮いて社長の肩の上に担がれてしまった。
「しゃ、社長!」
「行くぞ。おい、十文字。見てないでお前はさっさと帰れ」
社長には進行方向とは逆に担がれてるから様子は見れないけど、どうやらまだ颯くんがいるらしい。
スカートだから颯くん側にお尻向けるのは恥ずかしい。しかも社長が見えないようにスカートの裾を押さえるように担いでくれているけど、社長の手のひらの熱や感触をスカート越しに感じて気が気じゃない。
「は、はい……ナマエ、また明日な!あの件考えときぃ!」
お尻を向けているから声が颯くんまで届きにくいけど、なんとか、「また明日」と返しておいた。
「十文字、明日会社に来い。やって欲しい業務がある」
「わかりました!では社長、失礼します!」
颯くんが行ってしまうと、社長とふたりきりになってしまった。まあ、ふたりきりというには状況がおかしいけど。
社長は黙々と歩いている。社長は胸筋と腹筋から見るに重いものでも持てるだろうけど、私のことを重いと思っていないか気になってしまうし、何より源三に負けておいてこんなご褒美をもらってしまって申し訳ない。それからこんな姿を愛梨沙ちゃんに見られたら大変だ。愛梨沙ちゃんは社長のこと大好きだから関係を拗らせたくない。この前髪の引っ掴み合いの喧嘩したけど。
「あの、社長……」
「なんだ?」
「私、自分で歩きます……源三に負けた分、逆立ちで家に帰って出直してきます!」
「その気概は買ってやるが、スカートで逆立ちでする気か?」
「うう……それは……」
「田村源三に負けた分はこれから取り戻していけ」
「は、はい!ありがとうございます!次こそは絶対源三に勝ってみせます!」
「ああ、期待している」
社長に期待している、なんて言われたら嬉しくて仕方がないのと、期待してくれているのにいつも源三に負けるのが悔しくて胸がいっぱいになってしまい、眼頭が熱くなった。
我慢しようとしても無理だった。ポロポロと涙が逆さに溢れて、こめかみを通って頭皮に流れ込み、下に垂れる毛先へと伝っていく。
「しゃちょ〜っ!」
「泣くでない。早く病院に行って治療するぞ」
「でも脚挫いただけです!」
「癖になると困るだろう」
「しゃちょ〜っ!」
社長は怒るどころか私に優しくしてくださったことが胸にきて涙が止まらなくなり、社長の運転手つきお車で鬼頭組が建設に関わった病院に着くと、脚の怪我よりも先に脱水症状で点滴を受けることになってしまった。その間も社長が私を傍でみてくださっていることにも感動してまた泣き出しそうになっていると、どこで情報を得たのか愛梨沙ちゃんが病院に現れた。愛梨沙ちゃんは理由を付けて社長を退席させると、私の頬を平手で打ってくれた。お陰で涙がスッと収まって、「ありがとう」と御礼を言うと、今度は反対の頬を打たれたので私もやり返してやった。