kamui
皆で住んでいる家から少し離れたところに綺麗な丘がある。春は朝日、夏は満月が美しく見えるらしい。秋と冬はなんて聞いたか思い出せない。
カムイに連れられて初めて夜の丘に来た。昼間は草木や花で埋め尽くされた自然いっぱいの場所。それが今は光る花で埋めつくされていた。満月の下白く輝く花たちは例えようのないくらい神秘的で美しく、見た瞬間言葉を失ってしまった。
「君にこれを見せたかったんだ」
「これ凄い! ここがこんな素敵なところだったなんて!」
カムイを振り返ると、満月と花の光で少しぼやけてるけど、口許に笑みをたたえているのはわかる。
踏まないように花に近づき、しゃがんで覗き込んだ。間近で見ても花は白く光っているように見える。
「これって本当に不思議ね。どうして光るのかしら」
「理由はわからないけど、それは満月の時にしか咲かないらしいんだ」
「へー」
本当に不思議、とぼやいていると、後ろからふわりとカムイに抱きしめられた。カムイもしゃがんでいるみたいで、耳にカムイの頬が触れるのを感じた。突然のことにびっくりして固まってしまった。毎週デートする間柄とはいえ、手も繋いだこともないのにこんなことするなんて。もしかして、もしかしてだけど、告白される気がして緊張してきた。左胸の辺りがきゅうっと握られたように苦しい。
「ナマエ、君にずっと言いたかったことがあるんだ」
上ずった声でうん、と返事をするので精一杯だった。
「ナマエのことが好きだ」
「あ……わ、私もカムイのこと好きだよ」
「ほ、本当か?」
「そうじゃなかったらデートしないよ」
「ナマエはずっとデートと思ってくれていたのか?」
「だってカムイが誘う時、いつも顔真っ赤にさせて誘ってくるでしょ?デート中もなんか緊張してくれてるみたいだったし……」
「俺の顔、赤かったのか?」
心配そうに聞いてくるカムイがおかしくて、振り返って顔を見ようとすると、バランスを崩してカムイを倒してしまった。カムイの上に向き合う形で馬乗りになってしまい、退こうとするとそのまま抱きしめられた。
「わ、私重いから退くよ」
「大丈夫だ。君は羽のように軽い。それより今の顔を見られたくない」
「それって、デート誘う時と同じ状態だからってこと?」
「……それは言わないでくれ」
「こんな暗がりだと顔が赤いとかまではわからないよ」
「それでも俺は嫌だ」
「ふふっ」
「何がおかしいんだ?」
「おかしいというか、カムイがいつもと違うから新鮮で。それに今、とっても嬉しくて」
「俺も嬉しい。君とこうすることができて」
カムイの腕に力が入るのを感じた。今この時間は人生の中で一番幸せな時かもしれない。胸のどきどきは緊張と幸福のもので、視界に入る花の光は私達を祝福するものに思えた。ずっとこうしていたいな、と考えているといつの間にか背中に冷たい地面を感じた。暫く満月と花の光が見えなくなったけれど、再び見えるようになった時それはより一層輝いて見えた。