del'incontro ep2


 
同日午後5時過ぎ、暗殺チームのアジトに着いた。
玄関は広く、ガレージのように使っていてバイクや工具が散乱している。玄関にはふたつの出入口があり、1階と2階に分かれていて2階は使われていないらしい。
1階の入口に入ってすぐに居室らしきソファや鏡のおいてある部屋があった。
ひとり掛けのソファが4つに3人掛けのソファが一つ、中央のローテーブルを囲むように置いてある。6人が既に着席していて、私で8人目のメンバーだというのに、北と南のソファは空席にして、ひとりが3人掛けのソファの後ろに立っている。それが首と顔が一体化したように顎らしい顎が見つからなく、緑の髪をパイナップルのヘタのように立てた男の子だから凄く目立つ。
メンバー全員が男でリーダーと私が部屋に入ると、視線が私に注がれるのを感じた。緊張を隠すようにフードを目深に被りなおした。
リーダーが私を殺そうとしたのなら、その部下もそうしても不思議ではない。片方の手を上着のポケットに忍び込ませて、中にあるフォールディングナイフを握った。

「新入りだ。スタンドは自動追跡型で近距離は苦手とするらしい」

リーダーが私の代わりに説明した。リーダーが勝手に私のスタンドを暴露した理由はなんとなくわかって嫌な気持ちになった。

「女じゃあねぇか」

「フードが邪魔だな。顔が見たい」

「チッ。なんでこんな時に……」

「でも兄貴、女の子ですぜ」

「脚は良いが上着で体のラインがわからないな……」

「信用できんのか?そいつはよォォォォ!」

メンバーは口々に私について何かボヤいた。誰がどの言葉を発したかまでは拾えなかったけど、3人掛けソファに座るブロンドの男の人に目を奪われた。この国、特に南部では珍しい、黄金のように光り輝く見事な金髪と海を思わせるような青い瞳の綺麗な男性だ。咄嗟に「ミラノ人だ」と思った。暗殺チームにこんな人がいたんだと驚いたけど、纏っている雰囲気はギャングそのもので眼つきや顔つきには精悍さがある。

「こいつは暗殺経験はほぼ無い。暫くひとりで依頼は任せず、誰かと組ませることにする。早速だが今から任務だ。ホルマジオ、30分後までに資料をこいつに見せて任務に連れて行け」

「ああ?こいつがいたら邪魔じゃあねぇかよ」

ホルマジオと呼ばれた男はジンジャー色の髪を短く刈っていて、厳つい典型的なギャング顔にぴったりの髪型だ。彼は嫌そうに手をひらひらと振った。

「これは命令だ。こいつが不審な真似をしたら殺してもいいが、できるだけ生捕りにしろ」

「えっ」

殺してもいいと言われて焦った。今日から暗殺者と言ってくれたのに早速裏切られた気分になった。

「話は以上だ。各々任務に行け。おまえはホルマジオのところへ行け」

「……はいっス」

納得いかないまま返事をして、チームのメンバー達がいなくなるのを待った。
メンバー達が私を胡散なものでも見るかのような眼で見ながらぞろぞろ部屋を出て行く中、ダークブラウンの長い髪を何本かに束ねた背の高い男の人だけが私の目の前で立ち止まった。目の前で見るとリーダーより少し高く、横幅が広くてガタイがいい。ちょっと怖いかもしれない。

「おい、女。顔見せろ」

「は?」

相手のあまりに無礼な物言いにカチンと来て、聞き返した。立っ端があろうが関係ない。自己防衛の為にもこっちも攻撃的にならざるを得ない。最悪殺される可能性があるから。

「は?じゃあねーよ。顔がよけりゃあ、抱いてやるぜ?」

「殺すっスよ?」

脅しの為に近距離に向かない『エル・セブン』を出し、ポケットから素早くナイフを出して相手の喉元に突きつけた。

「おい、やめろ。正当な理由なく過度に傷つけ合うことはルール違反だ。イルーゾォ、電話で指示した通りに動け」

「チッ」

イルーゾォと呼ばれた人は舌打ちをすると、部屋を出て行った。
私はひとまず安堵してナイフを仕舞い、ホルマジオと呼ばれた人が座るソファの対面、3人掛けソファに腰を下ろした。

「ホルマジオ、後は頼む」

「しょうがねぇなぁ〜」

リーダーまで部屋を出て行ってしまった。残された私はホルマジオさんと2人きりになってしまった。
ホルマジオさんはローテーブルに資料をバンッと音を立てて置いた。

「これを見とけ。ターゲットの情報だ」

資料はホルマジオさんの方を向いて置かれたので、自分の方に回して置き直した。

「あの、ナマエっス。よろしくっス」

「ああ。早く見ろ」

ホルマジオさんはイラついたように言って、ソファの肘掛に肘をついて頬杖をついた。
おかしい。リゾットさんが初めて会った時もだけど、皆私を敵視している。どうしてこんなに歓迎されていないのか全くわからない。
目の前に新しい仲間がいるのにも関わらず、孤独を感じながら資料を手に取って1枚ずつ見た。ターゲットはロビー活動家の男性だ。

「んじゃあ、そろそろオレは行ってくっからおまえはここにいて資料を暗記してろ」

ホルマジオさんは膝頭を打つと立ち上がった。

「え?」

「おまえのスタンド能力──自動追跡型だったか知らんが、オレとの相性はわりィだろうよ。邪魔だから来んなよ」

「え?リーダーは……?」

「資料読んだら口裏合わせられるだろ?リーダーには任務に行ったことにしろ。おまえの面倒見てる余裕ねぇからよ」

ホルマジオさんはそう言って背を向けて部屋を出て行こうとする。
私としてはあの恐ろしいリーダーに殺される理由を作りたくないので、無理やりホルマジオさんについていく為に立ち上がって追いかけた。

「おい、ついてくんなって」

「無理っス。リーダーの言うことは聞くんで」

「ああ。そうかい」

「わっ」

突然人型の長い爪を持ったスタンドを出され、咄嗟に腕でガードすると腕の外側を切られた。上着が破れ、腕から出血している。
もう頭に来た。

「ふざけんな!仲間に対してそれはねーだろ!」

『エル・セブン』を出し、自分のナイフをホルマジオさんに向けた。

「うるせぇ。オレはおまえを仲間だなんて認めてねぇよ!ついてくんなってーのッ!」

「任された仕事はすんのが普通だろーが、クソ野郎!」

ホルマジオさんが舌打ちをすると、次の瞬間にはホルマジオさんの姿が消えていた。

「あれ?ホルマジオさん……?消えるスタンドかな……『エル・セブン』!」

『エル・セブン』に辺りを探させたけれど、どこにも見当たらない。部屋を出て玄関の外を覗いて見たけれど、どこにもいなかった。

「もー!」

やられた。もし任務に行ってないとなると、リーダーに何されるかわからない。仕方なく資料を読み込んでホルマジオさんが行きそうな現場を探さなくちゃ。
と、その前に切られた傷が化膿しないように、水で洗い流したい。先に水道を探そう。
そういえば、ここの設備の説明もなく放り出された。仕方なく適当に扉を開けて回って、たまたま見つけた給湯室のようなところで上着を脱ぎ、台に置いた。シンクに切られた腕を伸ばして、水道の蛇口を捻ろうとすれば、シンクの位置が高過ぎて手が届かない。
長身の男がふたりもいるとはいえ、ここのシンクの位置は高すぎる。
仕方なく台に腕を乗せ身を乗り出し、蛇口に手をかけて捻った瞬間にバランスを崩してシンクの中に体の半分が落ちかけた。おまけに水を出し過ぎたせいでそこら中に水が跳ねた。
体も給湯室も水浸しになってしまい、慌てて蛇口を元に捻った。
このアジトに布巾はあるのか探し回ると脱衣所とシャワー室を見つけてしまった。バスタオルを手に取り、体を拭いたものの、隣にあるシャワー室に惹かれてしまう。

「使っていいかな……」

誰もいない今、出来たらシャワーを浴びたい。リーダーに殺されそうになって冷や汗をかいたから汗を流したい。
誘惑に負けて服を脱いでシャワー室に入り、勝手にボディーソープを借りて全身を洗った。両方男物だけど、清涼感のあるもので良い匂いがする。シャワーの位置が高いものの、アジトにシャワー室があるのは本当に便利で嬉しい。
シャワー室を出てバスタオルで体を拭いていると、バスタオルがさっきより大きい気がする。なんというか、横に体に巻きつけても、床を引きずってしまうくらい大きくて重たい。何か変。
下着を手に取るといつもより大きく感じて、ハッとした。まさか──

「縮んでる……?」

自分の体を確認した。自分を見てもよくわからない。けど、周りを見るとなんだか巨人の国に来たように、あらゆるものが大きく見える。
これは明らかなスタンド攻撃だ。

「『エル・セブン』!」

脱衣所の扉を少しだけ開け、スタンドを出して再び近くに誰かいないか探させたけれど誰もいないようだった。だとしたら、やはりこれはホルマジオさんのスタンド能力だ。さっきの腕の傷が発動条件かな。
そうこうしているうちに体はさらに小さくなっていくようで、ついに扉の取手も背伸びをしないと届かない背丈になった。おまけにエル・セブンまで小さくなっている。
全裸状態でこれはまずい。服を着ようにも、大き過ぎて肩に引っかからずにストンと落ちてしまうだろう。
仕方なくスタンドにバスタオルをちょうどいい大きさに引き裂いてもらった。
体にバスタオルの切れ端を巻きつけ、急いでホルマジオさんを追跡する為に居室に向かった。その間も背は縮むけど、不思議なことに体に巻きつけたバスタオルの切れ端は縮まなかった。
居室についた時にはもう、30センチくらいしか身長がないせいで、ローテーブルに手を伸ばして資料を引っ張るしかなかった。とりあえず、全ての資料を床に落とせたのでホルマジオさんが向かった先を資料から探していると、ガチャリと玄関の方から音が鳴った。誰かが戻ってきたんだ。

「オメーはここで待ってろ。すぐ戻る」

リーダーと似た渋い声が遠くから聞こえた。誰だっけ……聞いたことがある。
ローテーブルの脚の影に隠れていると、声の主は段々こちらに近づいてくるのが足音でわかった。

「チッ。ホルマジオのヤツ、資料を散らかしやがって」

まずい。床に資料を落としたせいで拾いに来てしまう。あたふたしているうちに、声の主がしゃがみ込み姿を現した。
ブロンドに青目の人だった。ムスク系の官能的な香水の匂いを漂わせながら資料に手を伸ばし、ふと視線をこちらに向けた。ばっちり眼が合ってしまった。

「てめー、誰だ?」

ブロンドの人は長い睫毛に縁取られた瞳をスッと細めて聞いてきた。
そういえば、フードを目深に被っていたせいでメンバー達に顔を知られていなかった。おまけに唯一認識されていたであろう上着もショーパンも今は着ておらず、布切れ一枚を体にまとった状態だ。そりゃあわからない。

「あ、あの、違うんス!ホルマジオさんのせいで……私、新入りのナマエっス!」

小さくなった分、声が相手に届くように大声で答えた。

「『リトル・フィート』にやられたってわけか。何故そんな格好をしている?ホルマジオはどこなんだ?」

予想に反して、男の人はまともに対応してくれそうな雰囲気だ。良かった。確かリーダーに連れられた時に舌打ちしてた人だから、私のこと敵視してるのかと思ってたけど違うみたい。

「えっと、この格好は事故みたいなもので……ホルマジオさんは今、資料で探してて……」

「多少あいつが離れていても能力は持続するが、どのタイミングで能力を解除するかは本人しかわからねえ。下手な場所にいると大変なことになるぜ」

確かにこんな格好で外に飛び出した時に解除されたらたまったものではないし、物の隙間で解除されれば圧迫死するかもしれない。

「えっと、ありがとっス。じゃあ、脱衣所で元に戻るのを待つんで、連れて行ってもらってもいっスか?この姿だと、移動も一苦労なんス」

「……仕方ねえな。乗れ」

ブロンドの人が右の手の平を上に向けて、床に置いてくれた。私はそれを少しずつ上りながら、彼の手の平の上に膝と手をついて四つん這いになった。デコボコしてまともに立てたもんじゃないし、もう10センチくらいしかないから周りの目を気にする余裕もない。一応バスタオルの切れ端で胸もお尻も隠れているから問題ないし。

「落ちんなよ」

「はいっス」

男の人が立ち上がると、地上との距離に怖くなった。落ちたらきっと一溜りもないだろう。相手をスタンドもろとも小さくするなんて恐ろしいスタンドだ。相手を小さく出来た時点で勝ったようなものだ。
ブロンドの人が居室から脱衣所のある廊下に出ようとしたところ、また新たな足音が聞こえた。

「おい、プロシュート。ペッシを外に置いて、何をしている?」

リーダーの声だ。そして、ブロンドの人はどうやらプロシュートというらしい。

「資料が抜けてることに気付いて確認しに来ただけだが……リゾット、ホルマジオが面倒見役は無理だぜ」

プロシュートさんがリーダーを振り返るので、視界がぐるりと揺れリーダーの前に姿を晒された。不安定な手の平の上にいるので、嫌な浮遊感と風を感じて結構怖い。

「なんだそれは?」

リーダーは眉を潜めた。元のサイズでも怖かったけれど、小さくなるとなおのことリーダーが大きくて怖い。

「新人の女だろ?初日からついてねェよな?」

プロシュートさんにむにっと指先で頬を押された。力が強すぎて痛いし、体勢が崩れかける。なんとか落ちないようにプロシュートさんの手の平に両手をついたまま、リーダーを見上げた。

「あの、リーダー!ごめんなさい!ホルマジオさんにやられたんス!」

「見ればわかる。だが、何故そんな格好をしている?『リトル・フィート』は本来身につけいるものも小さくなる」

「えっと……」

シャワーを浴びてましたなんて、言えずに黙った。できれば全てホルマジオさんのせいにしたく、少しでも自分の非を見せたくない。

「色々あったんス!全てホルマジオさんに聞いてくれっス!」

「いや、おまえが説明しろ」

「うう……えっとっスね……わっ」

「うおッ」

まごついていると突然世界が狭くなっていき、体が元のサイズに戻って、プロシュートさんの体の上に折り重なるようにしてプロシュートさんの顔の方にお尻を向けたまま体を倒してしまった。体の前面に衝撃が走った上にプロシュートさんの革靴の先が眼に刺さった。

「ったぁ!」

あまりの痛さにごろんとプロシュートさんの上から床に落ちた。

「クソッ!ホルマジオの野郎、突然解除しやがったなッ!」

「目がッ!目がぁッ!」

「おい!暴れんな!」

パサリと体を包まれるようにして何かが掛けられたけど、染みるような痛さで目を開けられなくてわからない。目の痛さに耐えられずにその場に海老のように丸まった。

「おい。早く服を着てこい」

リーダーのその一言に自分が今どんな格好をしているのか、眼が回復した後に見るのが怖くなった。バスタオルがちゃんと巻かれたままなのは肌の締め付けでわかっているけれど、バスタオルはスタンド能力を利用して切った後のサイズなので、色々ギリギリのはず。何か見えてもおかしくないサイズ感だと思う。
眼を押さえていた手を離し、眼をギュッと瞑ったまま体に掛けられた何かを手探りで掴み、体を隠した。
それからゆっくり瞳を開ければ眼はまだ染みるように痛く、涙眼で視界を確認すればリーダーの足元に丸まっていたようで、体に掛けられていたのはプロシュートさんのスーツのジャケットであることがわかった。自分の格好を確認すれば、胸の頂から足の付け根よりちょっと下くらいまではギリギリバスタオルで隠れている程度に危ない格好だった。

「プロシュートさん、これありがとっス。あの、おふたりさん、色々見えたかもしれないんスけど、見てないフリお願いするっス……」

掠れる声でプロシュートさんとリーダーに力なく伝えてこそこそと立ち上がった。顔から火が出そうな程恥ずかしい。

「安心しろ。リーダーもオレも見てねーよ」

プロシュートさんの横を通り過ぎる時、そう声を掛けてくれたけれど真相はわからない。ジャケットを貸してくれた人だ。優しい嘘かもしれない。
脱衣所に駆け込んで服を身につけ、フードを深く被った。まともに顔を合わせられない。
居室に戻ると、黄色のシャツを着たプロシュートさんがソファに座っていたので近寄ってジャケットを手渡した。

「助かったっス。どうもありがとっス」

「ああ。じゃ、任務に行ってくる」

プロシュートさんはリーダーにそう告げるとジャケットを羽織り、ローテーブルの資料をさっと手に取り居室を出て行った。
私のせいで待たせてしまったみたいだ。それにしても、ジャケットを貸してくれるなんて本当に良い人だった。ここの唯一の良心かもしれない。

「おい」

「はい!」

ぼーっとプロシュートさんの出て行った方を見ていると、ソファの北側に座っていたリーダーに話しかけられて現実に引き戻された。

「ホルマジオと連絡を取った。任務を終え、間もなく帰ってくる」

「そう、なんスね……」

「だが、ホルマジオが帰ってくる前にメローネの案件を手伝え。メローネには先程連絡してあるから合流しろ。資料はこれだ」

リーダーが資料を差し出すので、リーダーの近くのソファに腰掛けて、資料を受け取った。それから、場所の説明をされた。
昨日一日かけてネアポリスの中心街をまわったけど、まだ道を覚えられていないからたどり着くのは難しそう。

「この辺まだ知らないんでタクシー使うっスね。そういえば、なんでここに戻ってきたんスか?」

「ホルマジオが一人でいるところを見つけて、おまえを探しに来た」

「撒かれちゃってごめんなさいっス。次は撒かれないっスよ」

「……期待はするな」

リーダーは私から視線を逸らし、対面のソファを見つめる。

「何がっス?」

「そも、暗殺稼業の者は誰からも信頼されない。そういうものだ。チームでも新しく来た者、特に"間の悪い時期"に来た者をそう簡単に信用できない。故に、確たる証拠を見つけない限りおまえを仲間とは認めない。ホルマジオの反応でもわかるだろう」

なんとなく、殺していい発言とメンバー達の態度からそれは汲み取っていた。ただ、こうして口に出されると不快でしかない。

「その"間の悪い時期"の意味についてはどうせ教えてくれないんスよね……それで、信じられない奴を仲間のもとに送っていいんスか?」

「オレたちは強い。おまえごときにやられはしない」

リーダーは酷く冷たい目を私に向けた。ホルマジオさんの件でわざわざアジトに探しに来てくれたのはもしかしたら、優しさだと感じていた。けど、やっぱり違ったんだ。
ボスによって地元のチームから追い出され、昨日ここに来たばかりで友達も知り合いもいない。保護者と呼べる人達に二度にわたって捨てられ、やっと見つけた居場所を追い出されたというのに、ここにも私の居場所なんてないんだ。
生い立ちを話させて仲間の死まで語らせたのに、あまりにも酷い仕打ちだ。

「……なんでそんなに疑うんスか?」

「おまえの仲間の死についての話を嘘だと思っている。聞いたことのある話を改変して話しているのではないか?」

「ふざけるなっ!」

いくらリーダーが相手でも、怒りを耐えられずに声を荒げた。仲間の死が作り話なんて、侮辱にも程がある。

「……それだ。その感情を隠さないところが怪しく見える。素直で無垢な女にも見えるが、どうだか。極端に演技の上手い奴の可能性がある。来たばかりのアジトをウロウロして問題を引き起こし、プロシュートに局部を露出……わざと隙を見せているようにも思える。本当のおまえに興味が湧いてきたぞ」

「そんな本当の私って言われても……えっ?局部って?」

やや遅れてとんでもないことをさらりと言われたことに気がついた。局部って言ったらあそこのことなのかな。だとしたら恥ずかし過ぎる。

「その動揺も演技か?言っておくが、このチームにハニートラップは通じない」

「通じる方がいやっスよ……」

約1名通じそうな奴がいたけど──なんて言ったらまた疑われそうなので伏せておいた。
動揺からさっきまでの怒りは消え失せ、私の受難を隙と捉えるリーダーに呆れた。どこまでも私を疑う気だ。

「信じてもらえないのは正直悲しいっスけど、もう結果で示すからいいっス。んじゃ、ボロニェーゼさんとこ行ってくるっス」

「……メローネだ。ライラック色の長髪の男だ」

「どっちにしろっスよ」

アジトを急いで出てタクシーを拾ってメローネさんの所へ向かった。
メローネさんがライラック色の長髪──確か片目の空いたマスクをしていた人だ。なんとなく若い人であることくらいしかわからない。
タクシーの運ちゃんの乱暴な運転に揺られながら、メローネさんがプロシュートさんのような良い人であることを願った。

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