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盗賊討伐の依頼のあった辺境の村の木陰で闘いの準備をしていた。近くに盗賊の巣窟があるらしくもうすぐ皆で乗り込むのだ。
私は息を深く吐いて手に入れていた力を少し抜き、剣を素早く回転させた。思ったよりも上手くいかずに剣はあらぬ方向に飛んで行ってしまった。

「うおっ」

剣は幼馴染で自警団の団長でもあるパイソンの足元にからんと落ちた。怒られると身構えていると、パイソンは私を呆れ顔で見てだるそうに剣を拾った。

「あのさー、危ないでしょ。こんなん振り回しちゃ」

小さい子に説教するように、問題の剣を差し出して見せた。私が受け取ろうとするとひょいと上へ持ち上げるので取り損ねた。お説教が始まるみたい。

「ごめんなさい。練習してたの」

「剣を弄ぶのが練習なの?」

「敵倒した後にこうくるくるーってやりたくて」

手真似で剣を回すような感じを表現してみるとパイソンの顔が段々険しくなるので止めた。

「ディーンがいつもやっててかっこいいの!」

さらに顔が険しくなった。

「パイソンもやるでしょ?」

「やらない。危ないから止めなさいよ」

「イライラしてる時腕組んで指とんとんするじゃん」

「それジャンル違うし、戦闘中に手遊びやらない。ディーンはそんな不真面目なことする奴なんだ」

「ディーンを悪く思わないで!ああいうくるくるーってしないと人殺して冷静でいられないって!」

「まじ?」

「まじ」

ディーンの見た目がああだからってパイソンは誤解しているみたいだ。彼はこの自警団に入っているのだから人助けは好きなはずなのだ。
ノーヴァ島で修行を積み、アンテーゼ様についていった私はギースの砦で彼と出会った。そこで彼は仲間になり、戦争が終結した今は私に付いてきて自警団に入ってくれた。こんなに仲良くなった私に本人がそう言ってたんだから、彼は戦闘に対する不謹慎な考え方であんなことをしているわけじゃない。多分。

「本当はかっこいいからじゃなくて、私も戦いに集中出来るような何かが欲しいの」

「はぁ。そう言われると困るのよ。でもおまえには向いてないし、危ないから止めなさいよ」

「はーい。もうしません」

「本当に?」

「ほんとに。10日分のご飯かけて誓う」

私の返事にパイソンは淡く笑うと私の剣を返してくれた。その微笑みはまるで親が子に対して向けるそれのよう。

「パイソン、私の親みたい」

「それ聞くの100回目。でも愛情持ってるのは合ってるわ」

最後の方が尻窄みで聞き取れなかった。

「え?愛情って言った?」

「……さあな」

「ええー?さあなってどういうこと?」

「聞き流しとけって」

パイソンは薄い笑みを浮かべて頭を小突いて来た。パイソンのこういうところが好きだなぁとふと思った。親みたいで一緒にいると落ち着くし楽しいし私のことをよく見てくれる。故郷から遠く離れて寂しかったけれど、彼といれば幸せを感じることができる。

「うふふふ」

我慢できずに笑い出すと、パイソンは不審なものを見るような目で私を見た。

「何笑ってんの?」

「幸せだなーって」

「偶然だね。俺も今そうかもしんないわ」

そう言ってパイソンは口元に笑みを浮かべ私の髪に優しく触れた。笑みにつられて薄くなった瞳はやっぱり親が子を見るそれに見えた。
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