lysithea
※嘔吐描写あり
「うぉうええええぇ」
お昼の素敵なティータイムの後、食堂の外の中庭の植え込みの中にさっき食べたものを吐いた。体に悪いものは体が受け付けないのだ。だから簡単に胃が痙攣して食道を逆流して口内が酸に満ちる。
茶色のべちゃべちゃの固形物が植物の根本を覆った。思わず顔を顰めて視線を逸らし、両手を合わせた。
──天にまします女神様、罪なき吐瀉物をどうか肥料になすってください。
女神様へのお祈りを終えて植え込みからそろりと出ると、目の間にはリシテアちゃんがいて、腕組みをして呆れたように私を見上げる。
「リシテアちゃん、なんで……?」
「やっぱり、吐いてたんですね」
「やっぱり、て……?」
「わたしとのティータイムの後、あんたが必ず北扉から出て行って消えることに気づいたんです。それとこの辺で吐瀉物騒ぎがあって、まさかとは思ってたのですが、まさか本当にあんたが吐いていたとは思いませんでした」
「うう……お見苦しいところを見せてごめんね」
「そんなことはいいんです。問題は、今までずっとわたしとのティータイムの後になぜ吐いてたのかってことです!」
「そ、それは……」
本音を言うと、リシテアちゃんにずっと嘘をついていたことになってしまう。リシテアちゃんに現場を押さえられてしまった今、頭が真っ白で納得できるような理由が思い浮かばなかった。
「わたしとのお茶会が不愉快だったんですか?わたしの用意したお茶菓子がまずかったんですか?いつも美味しいって食べてたのは嘘だったんですか?」
リシテアちゃんは酷く怒っているように目に角を立てる。このままだとリシテアちゃんに嫌われちゃうかもしれない。
「ち、違うの!私はリシテアちゃんと仲良くしたくて!そんなつもりはなかったの!」
「わたしと仲良くしたいのなら、何故わたしとのお茶会の後に吐くのか理由を教えてください。何か不愉快なことがあったからですよね?」
ずいっと詰め寄られ、リシテアちゃんの透き通った桃色の瞳に見つめられたら、嘘なんかつけなくて、真実を言わなくてはという気持ちになってしまう。それに、この場は本当のことを言った方がいい空気だと察した。
「わ、私、本当は焼き菓子とか体に悪いものが苦手で……か、体拒否しちゃうの……!でも、リシテアちゃんとお茶会したいし、仲良くお話するのが好きだから、その、あんな笑顔でお菓子を勧められたら断れなくて……!」
恐る恐るリシテアちゃんの顔を見ると、瞳を大きく揺らして動揺している様子だ。
「お菓子が食べられない体質なんですか……?」
「う、うん……自分でもよくわからないんだけど、なんか体に悪いって思ってると、なんだか体が拒否しちゃうみたいで……今まで黙っててごめんなさい」
「お菓子が食べられないなんて、そんな……可哀想過ぎます……嫌いなら聞いたことがあるのですが……すみません。これだけ一緒にいて気がつかなかったわたしを許してください……」
リシテアちゃんが申し訳なさそうに謝るので、大事なお友達にそんな思いをさせてしまったことに申し訳なくなってしまった。
「え、ええ?リシテアちゃんは悪くないよ!むしろ、私がずっと黙っててごめんなさい!」
「いえ、わたしが無理に勧めたせいです……それにしても、お菓子が食べられないなんて本当に可哀想です。あんなに美味しいものを……あ、そうだわ!ローレンツが確か薬草入り菓子を持っていたはずです!それなら食べられるのではないかしら?もちろん、無理にとは言わないので、今度調子の良い時に一口だけ試してみませんか?」
「薬草入りのお菓子……確かに聞いた感じは体に良さそうだけど……一口だけなら私も吐かずにいられると思う」
「いえ、食べた瞬間に嫌な予感がしたらその場で吐き出してしまえばいいんですよ。胃から吐き出すのは歯が溶けるのでやめた方がいいですよ?その方が不健康じゃないですか?」
「確かに」
今までそんなこと思い付きもしなかった。その場で吐き出すなんて汚いけど、歯が溶けることを考えたらむしろ吐かない方が健康的な気がしてきた。
「リシテアちゃんって他の人とは違った視点を持ってるし、本当に頭がいいんだね!流石リシテアちゃん!」
興奮してリシテアちゃんの両手を掴んで顔を寄せた。リシテアちゃんって本当に天才で、あらゆる視点から物事を見ようとするところが凄い。
「褒めるのはいいのですが、その、早く口を濯いだ方がいいですよ……なんか酸の臭いが……」
リシテアちゃんに引かれて、慌ててリシテアちゃんの両手を離して距離を置いた。そういえば、口の中が物凄く気持ち悪い。
「じゃあ、口濯いでくるから、またね。明日もお茶会しようね?」
「ええ、是非。明日、ローレンツのお菓子を持ってくるので、食べられるか食べられないかは正直に言ってくださいね」
「うん!じゃあ、またね」
リシテアちゃんに小さく手を振って食堂へ戻った。
それから食堂に常備してある水差しからゴブレットにお水を注いだところで、ハッとあることに気付いた。一口食べて目の前で吐き出すなんて、リシテアちゃんが許可したとしてもあまりにも行儀が悪くて汚い。事前にローレンツくんから薬草入りのお菓子を入手して、体が拒否するか反応を見よう。もし、駄目だったらリシテアちゃんからお菓子を貰うことを拒否すればいいんだ。見た目からして食べれないことを伝えればいい。結果として嘘をつくことになっちゃうけど、目の前でペッして嫌われるよりマシだ。だって、大好きなリシテアちゃんだけには嫌われたくないんだもの。
「うぉうええええぇ」
お昼の素敵なティータイムの後、食堂の外の中庭の植え込みの中にさっき食べたものを吐いた。体に悪いものは体が受け付けないのだ。だから簡単に胃が痙攣して食道を逆流して口内が酸に満ちる。
茶色のべちゃべちゃの固形物が植物の根本を覆った。思わず顔を顰めて視線を逸らし、両手を合わせた。
──天にまします女神様、罪なき吐瀉物をどうか肥料になすってください。
女神様へのお祈りを終えて植え込みからそろりと出ると、目の間にはリシテアちゃんがいて、腕組みをして呆れたように私を見上げる。
「リシテアちゃん、なんで……?」
「やっぱり、吐いてたんですね」
「やっぱり、て……?」
「わたしとのティータイムの後、あんたが必ず北扉から出て行って消えることに気づいたんです。それとこの辺で吐瀉物騒ぎがあって、まさかとは思ってたのですが、まさか本当にあんたが吐いていたとは思いませんでした」
「うう……お見苦しいところを見せてごめんね」
「そんなことはいいんです。問題は、今までずっとわたしとのティータイムの後になぜ吐いてたのかってことです!」
「そ、それは……」
本音を言うと、リシテアちゃんにずっと嘘をついていたことになってしまう。リシテアちゃんに現場を押さえられてしまった今、頭が真っ白で納得できるような理由が思い浮かばなかった。
「わたしとのお茶会が不愉快だったんですか?わたしの用意したお茶菓子がまずかったんですか?いつも美味しいって食べてたのは嘘だったんですか?」
リシテアちゃんは酷く怒っているように目に角を立てる。このままだとリシテアちゃんに嫌われちゃうかもしれない。
「ち、違うの!私はリシテアちゃんと仲良くしたくて!そんなつもりはなかったの!」
「わたしと仲良くしたいのなら、何故わたしとのお茶会の後に吐くのか理由を教えてください。何か不愉快なことがあったからですよね?」
ずいっと詰め寄られ、リシテアちゃんの透き通った桃色の瞳に見つめられたら、嘘なんかつけなくて、真実を言わなくてはという気持ちになってしまう。それに、この場は本当のことを言った方がいい空気だと察した。
「わ、私、本当は焼き菓子とか体に悪いものが苦手で……か、体拒否しちゃうの……!でも、リシテアちゃんとお茶会したいし、仲良くお話するのが好きだから、その、あんな笑顔でお菓子を勧められたら断れなくて……!」
恐る恐るリシテアちゃんの顔を見ると、瞳を大きく揺らして動揺している様子だ。
「お菓子が食べられない体質なんですか……?」
「う、うん……自分でもよくわからないんだけど、なんか体に悪いって思ってると、なんだか体が拒否しちゃうみたいで……今まで黙っててごめんなさい」
「お菓子が食べられないなんて、そんな……可哀想過ぎます……嫌いなら聞いたことがあるのですが……すみません。これだけ一緒にいて気がつかなかったわたしを許してください……」
リシテアちゃんが申し訳なさそうに謝るので、大事なお友達にそんな思いをさせてしまったことに申し訳なくなってしまった。
「え、ええ?リシテアちゃんは悪くないよ!むしろ、私がずっと黙っててごめんなさい!」
「いえ、わたしが無理に勧めたせいです……それにしても、お菓子が食べられないなんて本当に可哀想です。あんなに美味しいものを……あ、そうだわ!ローレンツが確か薬草入り菓子を持っていたはずです!それなら食べられるのではないかしら?もちろん、無理にとは言わないので、今度調子の良い時に一口だけ試してみませんか?」
「薬草入りのお菓子……確かに聞いた感じは体に良さそうだけど……一口だけなら私も吐かずにいられると思う」
「いえ、食べた瞬間に嫌な予感がしたらその場で吐き出してしまえばいいんですよ。胃から吐き出すのは歯が溶けるのでやめた方がいいですよ?その方が不健康じゃないですか?」
「確かに」
今までそんなこと思い付きもしなかった。その場で吐き出すなんて汚いけど、歯が溶けることを考えたらむしろ吐かない方が健康的な気がしてきた。
「リシテアちゃんって他の人とは違った視点を持ってるし、本当に頭がいいんだね!流石リシテアちゃん!」
興奮してリシテアちゃんの両手を掴んで顔を寄せた。リシテアちゃんって本当に天才で、あらゆる視点から物事を見ようとするところが凄い。
「褒めるのはいいのですが、その、早く口を濯いだ方がいいですよ……なんか酸の臭いが……」
リシテアちゃんに引かれて、慌ててリシテアちゃんの両手を離して距離を置いた。そういえば、口の中が物凄く気持ち悪い。
「じゃあ、口濯いでくるから、またね。明日もお茶会しようね?」
「ええ、是非。明日、ローレンツのお菓子を持ってくるので、食べられるか食べられないかは正直に言ってくださいね」
「うん!じゃあ、またね」
リシテアちゃんに小さく手を振って食堂へ戻った。
それから食堂に常備してある水差しからゴブレットにお水を注いだところで、ハッとあることに気付いた。一口食べて目の前で吐き出すなんて、リシテアちゃんが許可したとしてもあまりにも行儀が悪くて汚い。事前にローレンツくんから薬草入りのお菓子を入手して、体が拒否するか反応を見よう。もし、駄目だったらリシテアちゃんからお菓子を貰うことを拒否すればいいんだ。見た目からして食べれないことを伝えればいい。結果として嘘をつくことになっちゃうけど、目の前でペッして嫌われるよりマシだ。だって、大好きなリシテアちゃんだけには嫌われたくないんだもの。