dimitri
小さい頃から派手好きで、6つの頃に親の真似をして化粧をしていたし、9つの頃には指輪に首飾り、それから耳飾りに髪飾りを付けて大人の女性振っていた。17になった今は無駄な装飾品をつけることはなくなったけど、士官学校の中で一番といえるくらい化粧は濃く、制服は派手で目立つように自分で繕っていた。
そんな見た目とは裏腹に、元来男の落とし方なんてわからなかった。好きな人を誘惑する為に制服のスカートを短くしたり、催淫効果のある香油を使ったりしたけれど、どうにもその人は振り向いてくれるどころか、たった今目の前で服装について注意してきた。
面と向かって女性の服装を指摘することは、男性にとっては気が引けることだと思っていたから、女として意識されていないと感じて気分は最悪で、目の前の好きな人──ディミトリに怒りすら湧いてきた。
「ハピだってスカート短いし、お腹出してるよ」
不機嫌さを隠せない声色で、同じく
「それは……そうだな。お前が駄目で、ハピは良いのは不公平だったな」
ディミトリは眉を落として困ったような顔をする。そんな反応をされるとこっちまで困ってしまう。意識されていないと思って怒ったけど、別に好きな人を困らせたくて怒ったわけじゃない。
「じゃあ、ハピにも注意するの?」
「いや、ハピについては気になったことがなかったからな……」
「それって、私のスカートの方が短いってこと?」
「そうではなくてだな……何故かお前の服装だけが気になるんだ」
「え……?」
「不公平なことを言って悪かったな……しかし、ふとした時に気を取られてしまうんだ」
「気を取られるってスカートとか?」
「ああ……恥ずかしい話がそうだ。その短い衣の下がどのようになっているかだとか……いや、い、今のは失言だった!聞かなかったことにしてくれ……!」
突然顔を赤らめるディミトリに呆気に取られた。そんなにはっきり言う人だとは思っていなかった。
「私の体に興味があるの?」
「そ、そういうわけではない!ただ、気づいたらお前のことを目で追ってしまう……こんなこと、お前に対してだけなんだ。だから、スカートを長くすれば大丈夫だと思ったのだが、今なまえが言ったようにハピも短いが気にならない……ということはこれは俺の問題だ。俺が気にしないよう努めるから、やはりなまえは気にしなくていい。呼び止めて悪かったな」
「え?ええ?」
どう聞いても私に気があるような言い方なのに、当の本人は無自覚らしく、妻の産が近づいた人のようにそそくさとその場を去って行ってしまった。
翌朝、ディミトリの態度の変化をみる為に、試しに丈の長いスカートを穿いて教室に行った。
「おっ。今日はロングスカートなんだ」
目敏いシルヴァンの声掛けに笑顔で返して、真っ直ぐディミトリのいる教室の前の方に行った。私に背を向けてドゥドゥーと話し込むディミトリは、ドゥドゥーの目線が後ろの私に行くのを追って、振り向いた。
「なまえ……?」
「ディミトリが気にしないようにロングにしたの。これなら大丈夫でしょ?」
「あ、ああ……」
試すつもりで声をかけたのだけど、ディミトリは俯き加減になって口元を片手で覆って黙り込んでしまった。もしかして、急に私への興味をなくしたのかと不安になってしまう。
「ディミトリ……?」
「駄目だ。それでも、気になってしまう……そうだ。明日は膝丈にしてみてくれないか……?」
流石の私もいよいよこれは確定で自惚れじゃないことに気がついたけど、本人が気づいてくれなくちゃ意味がない。
「わかったけど、膝丈スカートにしても気になったらどうするの?」
「……確か女子はズボンも着用可だった気がする。後で先生に聞いておこう」
「もう!」
ここまで鈍いとなると、私も耐えられなくて、教室の後ろの方へ行き、シルヴァンを掴まえた。ディミトリによく見えるようにシルヴァンと手を繋いで前に戻った。
「なまえちゃん、どうしたの?こんな手なんか繋いじゃって。俺に気があるの?ねえ?」
「シルヴァンは黙ってて!ディミトリ、貴方が救いようのないくらい鈍いから教えてあげる。見てて」
ディミトリの目の前で、シルヴァンに抱きついた。シルヴァンも満更ではないらしく私の背中に手を回してきた。シルヴァンから体を離して、「どう思った?」とディミトリを振り向くと、怖い顔をして手袋のした手を強く握りしめていた。
「シルヴァン、話がある」
「え?」
「え?」
圧を感じる殺気と、ディミトリの底冷えするような低い声に、シルヴァンと二人して驚愕の声を漏らす。
ディミトリは逃げようとするシルヴァンの襟首を引っ掴んで教室の外へ行ってしまった。
「ねえ、私が悪かったのかな?」
近くで一部始終を見ていたアネットとメルセデスに声をかけた。
「そんなことないわ〜。たまには男の人を試すのも必要なことよ〜」
「メーチェの言う通りかな。あの殿下相手なら仕方のないことだと思う……」
「そういうつもりじゃなかったんだけどな」
ディミトリには私への感情がなんなのか自分で気づいて欲しかっただけなのに、結果的にディミトリを怒らせてシルヴァンを巻き込んでしまったことは反省しておこうと思う。