lorentz


※feh水着ローレンツくん実装記念





異界の南国に召喚され、召喚師さんとの契約の間はそこで過ごすことになっていた。
夏に王都デアドラの浜辺で夫のローレンツくんと過ごしたことがあったから、水着というものにはそこまで抵抗はなかった。きっと士官学校時代の私なら何がなんでも服のまま過ごしてたと思うけど、歳を取り、夫がいる時は毎夜裸を晒しているうちに慣れてきた。
特務機関の隊長のアンナさんに安く売ってもらった可愛い白のビキニを着てビーチチェアに腰掛け、ここで出会ってお友達になったツインテールが可愛らしいルフレさんとかき氷を食べていると、リンドウ色の髪をしたブーメランパンツに白のパーカーを羽織った男の子が声を掛けてきた。

「やあ、美しいお嬢さん方……君、僕とどこかで会ったかい?いや、その容姿はまるで……しかし、体つきがどうも……」

「ローレンツくん……?」

若き日の夫の容姿に夫そのものの口調に驚いた。目の前の男の子はどう見ても私の夫の7年程前の姿だ。

「なまえさんかい?」

「ええっと、これは……なまえのお知り合いですか?」

ルフレさんが困ったように小首を傾げた。

「複雑だけど、そうなの。ローレンツくんと知り合い……というか、私の……」

夫、とは考えがまとまっていないうちには言えなかった。召喚師さまの話では、異界は無数に存在し、同じ大陸の中でも並行世界というものが存在していて、様々な英雄が異なる時間軸で、異なる人生を歩んでいる場合もあるという。だから、今のローレンツくんが、私を妻に娶ると決める前のローレンツくんなら、余計なことは言えなかった。

「なまえさんは僕の通っている士官学校の友人だ。いやはや……ああ、申し遅れたな。僕はローレンツ=ヘルマン=グロスタールであのレスター諸侯同盟のグロスタール家の者だ。以後お見知り置きを」

白い歯を見せてルフレさんに笑いかけるローレンツくんは、私だと知らずに声を掛けてきたことから、まだ花嫁探しの途中だとわかった。ということは、このローレンツくんは私のこと、まだそこまでは好きじゃないんだ。
なんだか悲しくなったけれど、このローレンツくんは私の夫じゃない。それは理解しなくちゃいけない。

「……なまえさん、あまり日に焼けるのはよくないからこれを」

ローレンツくんが周りをキョロキョロとしながら、私の体を隠すようにパーカーを掛けてくれた。心なしか頬が赤くて、まさか、と期待してしまう。

「ローレンツくん、照れてくれてるの……?」

「なっ!ぼ、僕は別に……!」

「見てられませんね。なまえ、よければこのかき氷はあなたに。あなたのはローレンツにあげたらいいですよ」

「あ、ルフレさん……!」

ルフレさんは気を使ってくれたのか、ビーチチェアにかき氷を置いて行ってしまった。なんだか申し訳ないことをした。

「ローレンツくん、私の食べる?」

「ぼ、僕はその……」

らしくなく、うじうじするローレンツくんがあまりにも可愛くて少し笑ってしまった。士官学校時代はいつもローレンツくんが助けてくれて、彼がいつもリードしてくれたのに、今は私が積極的に行動を起こさないとだめみたい。

「まあ、ゆっくりかき氷を食べながらお互いのこと話さない?」

「それもそうだな……」

ローレンツくんは大人しく、控えめに、おずおずと私のかき氷を受け取って、ルフレさんのいたビーチチェアに座り、ちまちまとかき氷を食べ始めた。
私はローレンツくんよりも未来に生きていたから、あまり詳しくは話せなかったけど、やっぱりこれだけは話さないと何も話せないし、若き日のローレンツくんが他の女の子を口説くところは見たくなくて、我慢できずに未来のローレンツくんが今の私の夫であることを伝えてしまった。

「……そうか」

キラキラと太陽を反射して輝く海をローレンツ くんは遠い眼で見つめながら呟いた。

「驚かないの?」

「花嫁探しの為に何人かに声はかけていたが、いつも僕の心には君が……いや、なまえさんがいた」

「それは嬉しいな。ね、私の姿見てどう思った?多分今7歳以上歳が離れてるけど……がっかりした?」

「とんでもない!未来のなまえさんはより美しくなって、まるで女神のようだよ」

漸くローレンツくんらしさを取り戻したのか、ビーチチェアから身を乗り出して、私の手を取り、手の甲に口付けをしてくれた。やっぱり、違う世界の人といえども好きな人からされると胸がときめくし、凄く嬉しい。

「えへへ……これって浮気かな?」

「相手が僕ならそんなことはないさ。それで……非常に失礼な質問かもしれないのだが、子供の方は……?」

「情勢が落ち着くまでは作らないことにしてけど……なんで?」

「そうか……」

ローレンツくんは残念そうな、どこか納得いってなさそうな顔をして、こっちも納得がいかなかった。

「え、なんで?私、太ったとか?」

「あ、いや……その、体つきが女性らしくなったと……」

ということは、太ったということだ。今の夫にはそんなこと言われたことがなかったから衝撃を受けた。
けど、思い返せば心当たりはあった。最近夫は胸ばっかり触るようになったし、「君は全身が柔らかくて魅力的だよ」と、お腹もムニムニと揉まれたかもしれない……あれは、ローレンツくんなりの優しさだったんだ。遠回しに太ったね、と言ってたんだ。そういえば、私の愛馬も最近私が乗るといつもより早くへばる気がする。

「太ったってことだよね……ん?そもそも、ローレンツくんに裸見せたことないよね?なんでわかるの?」

「それは──」

「やっぱり、言わないで!それ程太ったってことなんでしょ?もうこのかき氷食べない!これもローレンツくんにあげる!私、泳いで痩せてくる!」

「なまえさん!」

遠回しに太ったと言われたことは確実なので、ローレンツくんが貸してくれたパーカーを置いて、海に向かって走り出した。
将来の私が太ってるとか今のローレンツくんが覚えたまま異界へ帰らせるわけにはいかない。──契約期間中に絶対痩せてみせる!
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