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ターラへ向かう途中のダキアでパーンという盗賊頭が仲間になった。その頃からリフィスは大人しくなり、「あいつは危ねぇ奴だ。絶対に関わるなよ」とうるさく言われるようになった。
解放軍に入って丸くなったリフィスは私に優しくしてくれるようになり、この前なんか摘んできた花をくれた。だけれど、パーンが来てからは私とはあまり過ごさなくなった。その分、他の仲間が話しかけてくれるようになったのでそれはそれで良かったけどとても寂しい。
ある日の夕暮れに、食料が枯渇してきたので一人で森の中で木ノ実等を探しているところをパーンに出会ってしまった。
「よぉ」
にやにやした顔でパーンが近づいてきたので、危険を感じて木の幹に背中がつくまで退がった。
「そんなに怖がるなよ。取って食いやしねぇよ」
パーンは私の目の前まで来ると、私の顎を親指と人差し指で持ち上げ顔をじろじろ見てきた。背が高く体格がいいのもあるけれど、なによりも顔つきが盗賊頭と言われても納得するくらい怖い。恐怖で冷や汗まで出てきた。心の中でリフィスが助けに来るように祈った。
「へぇ。リフィスの女にするのは勿体ないな。おまえ、俺の女になれ」
「い、嫌」
震える声で断りを入れるとパーンは顔をしかめた。
「リフィスが好きなのか?」
「そうよ……」
「はははは。あんなやつのどこがいいんだよ。あんな弱虫」
「彼の悪口は止めて。あの人優しいの」
「しっかしなーそうは言ってもあいつにおまえくれって言ったら、どうぞってくれるような薄情な奴なんだよ」
「そんなことないわ!」
私が怒ったせいでパーンもムッとした顔をした。
「リフィス呼んでこい」
「え?」
「いいから呼んでこい!」
胸ぐらを捕まれ揺すられそのまま投げるように引っ張られたので転んでしまった。怖くて野営地まで全力で走った。野営地に着くと一目散にリーフ様とフィン様を探した。リフィスには言えない。彼を危険な目に巻き込みたくないし、リーフ様に言えばパーンも黙ると思った。
ちょうど、リーフ様の天幕からフィン様と一緒に出てきたので駆け寄った。
「リーフ様!」
「どうした、なまえ。そんなに慌てて」
「さっき森でパーンに……」
「パーンが夕飯早く食いたいだとさ」
リフィスが現れてリーフ様に適当な事を言うと、私を引っ張ってリーフ様から遠ざけた。
「パーンに何された?おいおい、服が汚れてるじゃねーか。乱暴されたのか?」
リフィスは私の汚れた服を叩いて土埃を払ってくれた。
「ちょっと転ばされちゃって……」
「……案内しろ」
「でも、パーンは怒ってたわ。あの人危険な人なんでしょう?リーフ様にお願いして大人しくしてもらいましょ」
「いや、いつかは俺がどうにかしなくちゃいけねぇ。パーンのところに案内しろ」
あれだけパーンを避けていたのに今はリフィスは目をぎらつかせて自ら会いに行こうとしている。そんなリフィスに行かないでなんて言えない。
「わかったわ。ついてきて」
先程パーンに捕まった場所に行くと、パーンは呑気そうに胡座をかいて木ノ実を食べていた。
「おお、本当におまえが来るとはな」
「うちのなまえを可愛がってくれたみてーだな」
「おい、敬語はどうしたよ?」
敬語?リフィスはパーンに敬語を使っていたの?貴族でもない相手にリフィスが敬語を使うところが想像できない。
「うるせぇ。いい加減昔のことは忘れろ」
「いい度胸だな。そこの女くれって言っても無駄か」
「当たり前だろ。うせろ」
「おまえが呼ばれてきたんだからおまえがうせろ」
「いや、パーン。おまえがうせろ。そして金輪際なまえに近づくな」
「……わかった」
パーンはそう言うと、どこかへ歩いて行った。パーンの後ろ姿が消えるまで私は警戒して見ていて見えなくなったところでリフィスを見た。冷や汗をかいていて今にも死にそうな顔をしていた。
「やっぱりあいつは苦手だ」
そう言いながらリフィスは私を抱きしめてくれた。私の為に頑張ってくれたんだと思うとどうしようもなくリフィスが愛おしくて、今までで初めてリフィスに自分からキスをした。唇を離すとリフィスは驚いた顔をして私を見て、それから安心したような笑みを浮かべた。