claude (1/2)
※エコーズキャラが複数出現
※クロードくんがお下品
今年もヴァイス・ブレイヴに夏がやってきた。
アンナさんの商会で買ったワンピース型の水着に、薄手の長い前開きの羽織を着てわくわくしながら異界の南国の地に降り立った。今年は去年以上にはりきって楽しもうと、早速冷たい飲み物を買いに出店のある並びに行ってみた。
「やあ、君ひとりかい?」
サングラスをした緋色の髪の背の高い男の人に声をかけられた。
不審な出で立ちと近い距離感にちょっとびっくりして後ろに退がると、男の人はサングラスを外して笑った。垂れがちな瞳をしていて、端正な顔立ちをしている。
「そうですけど……」
「俺が買ってあげるよ。何を御所望かな?」
肩に手を乗せられて、顔を覗き込まれるように聞かれた。
あんまりこういうの慣れてなくて、緊張して上手く言葉が出てこない。
「よっ、シルヴァン」
「ん?あ、あんたは……」
男の人は私の後ろを見て、動揺したように垂れがちな瞳を揺らした。
聞き覚えのある声に振り返ると、騎馬部隊で弓騎兵として活躍しているクロードさんがいた。
クロードさんは黒地に金糸の刺繍をされた水着を着ていて、健康的な肌の色によく似合っている。いつもは士官学校の制服に隠されているクロードさんの肌が堂々と晒されていて、腕周りに刻まれている筋肉の筋や、適度に割れた腹筋をちらちらと見ては、私にとって刺激が強過ぎて意識が遠のいてしまう思いをしていた。
それにしても、いつもより異界の南国にいらっしゃる英雄の方々が多かったのだけれど、その中にもクロードさんがいるなんて驚きだった。彼は確か今日、お城でカナスさんとサーリャさん、それからルーテさんの四人で魔法と薬物の研究をしているはずだった。何故私がこんなことを知っているのかというと、彼の予定を私の友達に聞いてもらっていたからだ。
そんなことをしたのも、補給部隊で戦線に立つ英雄さんたちの支援に徹している私にクロードさんがよく声をかけてくださり、話しているうちに好きになってしまったという、我ながら簡単過ぎる理由だけれど、もともとクロードさんの整った容姿や、どんな異界の方にも偏見なく、その文化に理解を示そうとする態度は以前から私には好ましく映っていた。
「悪いが、彼女は俺の連れだ」
クロードさんの手が私の肩に振れた。陽射しよりも熱いクロードさんの手の平の熱を、薄手の生地超しにじんわりと感じて心臓の鼓動が速くなっていくのを感じる。
「まさか、金鹿 のあんたまでいるとはな……君はクロードと知り合いかい?」
「知り合いです……クロードさん、この方は?」
「シルヴァンだ。学級は違うが、俺と同じ士官学校に所属している。なまえは関わらない方がいいぜ?違う学級の俺の耳までこいつの女癖の悪さの噂が届いているからな。眼を合わせただけで妊娠するらしいから気を付けろよ」
「そうなんですか?」
流石にそれはないと思うけれど、恐らくそれ程シルヴァンさんが好色漢ということなのかな。
「そんなことは根も葉もない噂で、嘘だから信じないでくれ!おい、あんた、級長だろ?可愛い子の前でそんな嘘つかないでくださいよ!」
「おっと、それはおかしいな。これよりも酷い噂を幾つも聞いたもんで、今のが一番マシだから言ってみたんだが……ちなみにもっと酷い噂は──」
「だああああ!俺、あっちで同級生に呼ばれてるんで行ってきます!」
「そうか。シルヴァンとは一度じっくり話したいと思っていたのに残念だな」
「あんたは噂通りの人だな!」
シルヴァンさんという方はいそいそと、浜辺の方へ走って行ってしまった。
クロードさんと二人きりになって、ハッとした。自意識過剰でなければ、クロードさんは私の為に好色漢から救ってくださったんだ。
「あの、助けてくださってありがとうございました」
恥ずかしさから、私の肩を抱いたままのクロードさんから離れ、クロードさんの方を向き直って頭を下げた。
「礼には及ばないぜ。なんせ、実のところは助けたというか、個人的感情で邪魔したというか……」
「どういうことですか?」
私の所見だとシルヴァンさんは、クロードさんの言う通りの方のように見えたから、クロードさんの言っていることがよく理解できなかった。
「結果、俺もなまえも得をしたということで……せっかくだから何か飲まないか?」
「の、飲みたいです!ここは暑いですよね!」
クロードさんのお誘いを、クロードさんとここで過ごせる絶好の機会だと思って飛びついた。
「そうだな。かなり暑くて……いい感じに厚くて、熱く火照るな」
クロードさんは視線を泳がせ、再びよくわからないことを言いながら、赤くさせた顔を手で扇ぐのを見るに本当に暑そうに見える。
「そういえば、昨年別の異界の南国で飲んだ炭酸という飲み物が美味しかったです。暑い夏にぴったりの飲み物でした!」
「タンサン?美味いのか?」
「はい!とっても!でも、ここにあるかわからないので何件か見ませんか?」
「ああ。見てみようか」
クロードさんと一緒に出店を何件か巡っていると、他の英雄さんたちが手にしているガラスのゴブレットの中に炭酸の特徴である気泡があることに気づいた。その方たちに教えて頂いたお店で、他の英雄さんたちの飲んでいる『メロンフロート』という飲み物を手に入れることができた。私が以前飲んだ炭酸とは違うけれど、これも炭酸飲料というものらしく、鮮やかな緑色の液体の上にはクリームと赤い果実が乗っていてとっても美味しそう。
浜辺の上に作られた飲食場のパラソルの下、クロードさんと隣り合って円卓について海を眺めていた。メロンフロートは上に乗ったクリームと混ぜて飲むと甘さが増して美味しかった。
クロードさんと綺麗な海を眺めながら冷たくて美味しい飲み物を飲む──とっても幸せ。
帰ったら早速私のお友達兼、恋愛相談相手のエフィに話したい。彼女も片想い中で、お互いの好きな人の情報を交換していたりする。
エフィとは偶然恋愛話で盛り上がって仲良くなり、今では「なまえのことはアルムの次の次くらいに好きだよ」と言ってもらえて、一緒にお出かけする仲だ。まあ、お出かけといってもアルムさんの行くところに二人でこっそり付いていくだけの、色々規律に抵触しそうな行為だけど。ちなみにエフィを海に誘ったら、「アルムは行かないみたいだから今日はお城にいるね。あ、でも可愛い水着を着て楽しんできてね」と笑顔で断られてしまった。
さざ波の音に耳を傾けながら、クロードさんと何を話そうか考えていると、クロードさんから「そういえば──」と沈黙を破ってくださった。
「エフィって女の子と仲いいよな?」
「はい。仲良くさせていただいてます。あの、彼女がなにか?」
「今まで話したことはなかったんだが、なまえと一緒にいるのはよく見てて……それが今日急に、なまえが異界の南国に行くってわざわざ教えに来てくれてさ」
「そうなんですか……?」
エフィが私の為にクロードさんの情報を教えてくれることはあるけれど、それは全てエフィが見聞きした情報だった。それなのに、今日に限ってクロードさんの方にそんな情報を提供するなんて。しかも、クロードさんがそれを聞いてここに来てくれたみたいに言うものだから、まさか、と自意識過剰になってしまうけど、クロードさんのいた国には海があるみたいだから、単に海が見たくて来ただけかもしれない。
「それで、その情報の代わりにアルムのこと何か知らないか聞かれて、この前アルムが戦闘中の小休憩で小麦粉をそのまま食ってたことを伝えたら『私も食べるし、好物だよ』って冷めた眼で言われてさ。俺がそのこと伝える時、普通ではないかのように言っちまって、悪かったなって。流石の俺も異文化過ぎて理解ができなかったが、今ならなんとなく理解できるよ。原材料から栄養を摂取するのも悪くないだろ?それで今日帰ったら小麦粉をそのまま食ってみようかと思うんだが、その後にエフィに感想と謝罪を伝える機会を設けてくれないか?」
「えっと、はい……エフィと話す機会を設けるのはいいのですけど──」
クロードさんの異文化理解への姿勢は素晴らしいけれど、クロードさんが喉に粉を詰まらせては大変だ。これは全力で止めなくてくちゃいけない。
「小麦粉はそのまま食べない方がいいと思います。私も試してみたのですが、喉に詰まってしまい駄目でした……恐らくロビンさんやパイソンさんたちのようなバレンシア大陸の方々でないと難しいかと」
「そうか。なら、アルムに喉に詰まらない食べ方を聞くかな。それで、パイソンで思い出したが、確かなまえはパイソンとも仲良かったよな?」
「いえ、数回話した仲ですよ?」
パイソンさんは恋愛話が好きみたいで、私が片想いをしていると噂を聞きつけてわざわざ聞きにきたのだ。その後エフィとパイソンさんの三人でエールを飲みながら朝まで恋愛話をした時は凄く盛り上がって楽しかったのを思い出した。
「そうか……なまえがパイソンの部屋から朝帰りした、っていう噂を聞いて心配だったんだ」
「あ、その時はエフィもいたので……心配、ですか?」
「ああ。好きな子が朝に他の男の部屋から出てくるなんて、そりゃあ心配するだろ?」
「確かに……え?あれ?今……」
朝にクロードさんの部屋から女の子が出てくることを想像して嫌な気持ちになってしまい、気づくのが遅れたけど、クロードさんが今、物凄いことを言った気がした。
「聞いてなかったか?それならもう一度……ゴホンッ……好きな子が──」
「あっ、あっ、わかりました!わかりましたから!」
先ほどより大きく張り上げた声で話し始めるクロードさんの声を、それ以上の声を出してかき消そうとした。
「一回で伝わってよかったよ。それでなまえの気持ちを聞いてもいいか?」
「私もクロードさんのこと好きです……」
クロードさんに好かれているとわかっていても、なお緊張しながら言いきった。
「なまえの口からそのことを聞けて嬉しいよ。じゃっ、そろそろ泳ぎに行くか?」
「は、はい……!」
告白しあった流れで手を繋げると思っていたのに、意外とあっさりしているクロードさんに戸惑いながら、一緒に浜辺に向かった。
浜辺に置いてある白い長椅子に薄手の羽織りを置くと、隠していた肩や腕、太ももが丸出しのせいかなんだか落ち着かなかった。早く海の中に隠れたい。
「……うん。やっぱ、早く泳いだ方がよさそうだな」
クロードさんは体の下の方で両手を組みながら相変わらずよくわからないことを言うけど、クロードさんの視線が私の胸元や脚に注がれていることに気づいて、思わず胸元を隠した。恥ずかしくて、いたたまれない。
「私、おっきくないんです……ごめんなさい」
異界の英雄さんたちは皆豊かな乳房をお持ちで、結構気にしていた。クロードさんがここに来ることが最初からわかっていたら、寄せてあげる型の水着にしたかった。
「いやいや。十分あると思うぜ?それにさっき、いい感じに厚くて、って言っただろ?つまりはちょうどいいってことさ。ま、触ってみないとわからないけどな」
「あ……そ、そういう意味だったんですか!?というか、触ってみないとってなんですか!?」
「……悪い。聞かなかったことにしてくれ」
「無理です!聞いちゃいました!」
「とりあえず、泳がないか?」
「誤魔化されませんよ!」
「まあまあ。早く行こうぜ」
クロードさんにギュッと手を握られ、何も言えなくなってしまった。
底まで透けるほど澄んだ海の中に足を浸していくと、冷たくて気持ちが良かった。更に深いところまでいき、鳩尾あたりまでの水深になると、心臓がきゅうっと縮まる。
暫くクロードさんと短い会話をしながら泳いで楽しんだ。強い陽射しの下、綺麗な海で泳ぐのは気持ちが良かった。
もうそろそろ出ようかな、と浅瀬の方を目指すと、クロードさんはまだ出れないと言う。
「どうしたんですか?」
「それが収まらないというかなんというか。何か萎えるような人を連れてきてくれないか?いや、バレる程大きくないかもしれないが、念の為……」
「萎える……?」
今日一日クロードさんによくわからないことを言い続けられて、更にまたよくわからないことを言われて困った。
とりあえず、「ムキムキの人を」と言われたので体格の良いヘルビンディさんと比較的筋肉のあるフレデリクさんを連れてクロードさんのところへ戻れば、凄く良い笑顔で御礼を言われた。いつもならときめくところだけれど、クロードさんの趣味を疑って素直にときめけなかった。
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※クロードくんがお下品
今年もヴァイス・ブレイヴに夏がやってきた。
アンナさんの商会で買ったワンピース型の水着に、薄手の長い前開きの羽織を着てわくわくしながら異界の南国の地に降り立った。今年は去年以上にはりきって楽しもうと、早速冷たい飲み物を買いに出店のある並びに行ってみた。
「やあ、君ひとりかい?」
サングラスをした緋色の髪の背の高い男の人に声をかけられた。
不審な出で立ちと近い距離感にちょっとびっくりして後ろに退がると、男の人はサングラスを外して笑った。垂れがちな瞳をしていて、端正な顔立ちをしている。
「そうですけど……」
「俺が買ってあげるよ。何を御所望かな?」
肩に手を乗せられて、顔を覗き込まれるように聞かれた。
あんまりこういうの慣れてなくて、緊張して上手く言葉が出てこない。
「よっ、シルヴァン」
「ん?あ、あんたは……」
男の人は私の後ろを見て、動揺したように垂れがちな瞳を揺らした。
聞き覚えのある声に振り返ると、騎馬部隊で弓騎兵として活躍しているクロードさんがいた。
クロードさんは黒地に金糸の刺繍をされた水着を着ていて、健康的な肌の色によく似合っている。いつもは士官学校の制服に隠されているクロードさんの肌が堂々と晒されていて、腕周りに刻まれている筋肉の筋や、適度に割れた腹筋をちらちらと見ては、私にとって刺激が強過ぎて意識が遠のいてしまう思いをしていた。
それにしても、いつもより異界の南国にいらっしゃる英雄の方々が多かったのだけれど、その中にもクロードさんがいるなんて驚きだった。彼は確か今日、お城でカナスさんとサーリャさん、それからルーテさんの四人で魔法と薬物の研究をしているはずだった。何故私がこんなことを知っているのかというと、彼の予定を私の友達に聞いてもらっていたからだ。
そんなことをしたのも、補給部隊で戦線に立つ英雄さんたちの支援に徹している私にクロードさんがよく声をかけてくださり、話しているうちに好きになってしまったという、我ながら簡単過ぎる理由だけれど、もともとクロードさんの整った容姿や、どんな異界の方にも偏見なく、その文化に理解を示そうとする態度は以前から私には好ましく映っていた。
「悪いが、彼女は俺の連れだ」
クロードさんの手が私の肩に振れた。陽射しよりも熱いクロードさんの手の平の熱を、薄手の生地超しにじんわりと感じて心臓の鼓動が速くなっていくのを感じる。
「まさか、
「知り合いです……クロードさん、この方は?」
「シルヴァンだ。学級は違うが、俺と同じ士官学校に所属している。なまえは関わらない方がいいぜ?違う学級の俺の耳までこいつの女癖の悪さの噂が届いているからな。眼を合わせただけで妊娠するらしいから気を付けろよ」
「そうなんですか?」
流石にそれはないと思うけれど、恐らくそれ程シルヴァンさんが好色漢ということなのかな。
「そんなことは根も葉もない噂で、嘘だから信じないでくれ!おい、あんた、級長だろ?可愛い子の前でそんな嘘つかないでくださいよ!」
「おっと、それはおかしいな。これよりも酷い噂を幾つも聞いたもんで、今のが一番マシだから言ってみたんだが……ちなみにもっと酷い噂は──」
「だああああ!俺、あっちで同級生に呼ばれてるんで行ってきます!」
「そうか。シルヴァンとは一度じっくり話したいと思っていたのに残念だな」
「あんたは噂通りの人だな!」
シルヴァンさんという方はいそいそと、浜辺の方へ走って行ってしまった。
クロードさんと二人きりになって、ハッとした。自意識過剰でなければ、クロードさんは私の為に好色漢から救ってくださったんだ。
「あの、助けてくださってありがとうございました」
恥ずかしさから、私の肩を抱いたままのクロードさんから離れ、クロードさんの方を向き直って頭を下げた。
「礼には及ばないぜ。なんせ、実のところは助けたというか、個人的感情で邪魔したというか……」
「どういうことですか?」
私の所見だとシルヴァンさんは、クロードさんの言う通りの方のように見えたから、クロードさんの言っていることがよく理解できなかった。
「結果、俺もなまえも得をしたということで……せっかくだから何か飲まないか?」
「の、飲みたいです!ここは暑いですよね!」
クロードさんのお誘いを、クロードさんとここで過ごせる絶好の機会だと思って飛びついた。
「そうだな。かなり暑くて……いい感じに厚くて、熱く火照るな」
クロードさんは視線を泳がせ、再びよくわからないことを言いながら、赤くさせた顔を手で扇ぐのを見るに本当に暑そうに見える。
「そういえば、昨年別の異界の南国で飲んだ炭酸という飲み物が美味しかったです。暑い夏にぴったりの飲み物でした!」
「タンサン?美味いのか?」
「はい!とっても!でも、ここにあるかわからないので何件か見ませんか?」
「ああ。見てみようか」
クロードさんと一緒に出店を何件か巡っていると、他の英雄さんたちが手にしているガラスのゴブレットの中に炭酸の特徴である気泡があることに気づいた。その方たちに教えて頂いたお店で、他の英雄さんたちの飲んでいる『メロンフロート』という飲み物を手に入れることができた。私が以前飲んだ炭酸とは違うけれど、これも炭酸飲料というものらしく、鮮やかな緑色の液体の上にはクリームと赤い果実が乗っていてとっても美味しそう。
浜辺の上に作られた飲食場のパラソルの下、クロードさんと隣り合って円卓について海を眺めていた。メロンフロートは上に乗ったクリームと混ぜて飲むと甘さが増して美味しかった。
クロードさんと綺麗な海を眺めながら冷たくて美味しい飲み物を飲む──とっても幸せ。
帰ったら早速私のお友達兼、恋愛相談相手のエフィに話したい。彼女も片想い中で、お互いの好きな人の情報を交換していたりする。
エフィとは偶然恋愛話で盛り上がって仲良くなり、今では「なまえのことはアルムの次の次くらいに好きだよ」と言ってもらえて、一緒にお出かけする仲だ。まあ、お出かけといってもアルムさんの行くところに二人でこっそり付いていくだけの、色々規律に抵触しそうな行為だけど。ちなみにエフィを海に誘ったら、「アルムは行かないみたいだから今日はお城にいるね。あ、でも可愛い水着を着て楽しんできてね」と笑顔で断られてしまった。
さざ波の音に耳を傾けながら、クロードさんと何を話そうか考えていると、クロードさんから「そういえば──」と沈黙を破ってくださった。
「エフィって女の子と仲いいよな?」
「はい。仲良くさせていただいてます。あの、彼女がなにか?」
「今まで話したことはなかったんだが、なまえと一緒にいるのはよく見てて……それが今日急に、なまえが異界の南国に行くってわざわざ教えに来てくれてさ」
「そうなんですか……?」
エフィが私の為にクロードさんの情報を教えてくれることはあるけれど、それは全てエフィが見聞きした情報だった。それなのに、今日に限ってクロードさんの方にそんな情報を提供するなんて。しかも、クロードさんがそれを聞いてここに来てくれたみたいに言うものだから、まさか、と自意識過剰になってしまうけど、クロードさんのいた国には海があるみたいだから、単に海が見たくて来ただけかもしれない。
「それで、その情報の代わりにアルムのこと何か知らないか聞かれて、この前アルムが戦闘中の小休憩で小麦粉をそのまま食ってたことを伝えたら『私も食べるし、好物だよ』って冷めた眼で言われてさ。俺がそのこと伝える時、普通ではないかのように言っちまって、悪かったなって。流石の俺も異文化過ぎて理解ができなかったが、今ならなんとなく理解できるよ。原材料から栄養を摂取するのも悪くないだろ?それで今日帰ったら小麦粉をそのまま食ってみようかと思うんだが、その後にエフィに感想と謝罪を伝える機会を設けてくれないか?」
「えっと、はい……エフィと話す機会を設けるのはいいのですけど──」
クロードさんの異文化理解への姿勢は素晴らしいけれど、クロードさんが喉に粉を詰まらせては大変だ。これは全力で止めなくてくちゃいけない。
「小麦粉はそのまま食べない方がいいと思います。私も試してみたのですが、喉に詰まってしまい駄目でした……恐らくロビンさんやパイソンさんたちのようなバレンシア大陸の方々でないと難しいかと」
「そうか。なら、アルムに喉に詰まらない食べ方を聞くかな。それで、パイソンで思い出したが、確かなまえはパイソンとも仲良かったよな?」
「いえ、数回話した仲ですよ?」
パイソンさんは恋愛話が好きみたいで、私が片想いをしていると噂を聞きつけてわざわざ聞きにきたのだ。その後エフィとパイソンさんの三人でエールを飲みながら朝まで恋愛話をした時は凄く盛り上がって楽しかったのを思い出した。
「そうか……なまえがパイソンの部屋から朝帰りした、っていう噂を聞いて心配だったんだ」
「あ、その時はエフィもいたので……心配、ですか?」
「ああ。好きな子が朝に他の男の部屋から出てくるなんて、そりゃあ心配するだろ?」
「確かに……え?あれ?今……」
朝にクロードさんの部屋から女の子が出てくることを想像して嫌な気持ちになってしまい、気づくのが遅れたけど、クロードさんが今、物凄いことを言った気がした。
「聞いてなかったか?それならもう一度……ゴホンッ……好きな子が──」
「あっ、あっ、わかりました!わかりましたから!」
先ほどより大きく張り上げた声で話し始めるクロードさんの声を、それ以上の声を出してかき消そうとした。
「一回で伝わってよかったよ。それでなまえの気持ちを聞いてもいいか?」
「私もクロードさんのこと好きです……」
クロードさんに好かれているとわかっていても、なお緊張しながら言いきった。
「なまえの口からそのことを聞けて嬉しいよ。じゃっ、そろそろ泳ぎに行くか?」
「は、はい……!」
告白しあった流れで手を繋げると思っていたのに、意外とあっさりしているクロードさんに戸惑いながら、一緒に浜辺に向かった。
浜辺に置いてある白い長椅子に薄手の羽織りを置くと、隠していた肩や腕、太ももが丸出しのせいかなんだか落ち着かなかった。早く海の中に隠れたい。
「……うん。やっぱ、早く泳いだ方がよさそうだな」
クロードさんは体の下の方で両手を組みながら相変わらずよくわからないことを言うけど、クロードさんの視線が私の胸元や脚に注がれていることに気づいて、思わず胸元を隠した。恥ずかしくて、いたたまれない。
「私、おっきくないんです……ごめんなさい」
異界の英雄さんたちは皆豊かな乳房をお持ちで、結構気にしていた。クロードさんがここに来ることが最初からわかっていたら、寄せてあげる型の水着にしたかった。
「いやいや。十分あると思うぜ?それにさっき、いい感じに厚くて、って言っただろ?つまりはちょうどいいってことさ。ま、触ってみないとわからないけどな」
「あ……そ、そういう意味だったんですか!?というか、触ってみないとってなんですか!?」
「……悪い。聞かなかったことにしてくれ」
「無理です!聞いちゃいました!」
「とりあえず、泳がないか?」
「誤魔化されませんよ!」
「まあまあ。早く行こうぜ」
クロードさんにギュッと手を握られ、何も言えなくなってしまった。
底まで透けるほど澄んだ海の中に足を浸していくと、冷たくて気持ちが良かった。更に深いところまでいき、鳩尾あたりまでの水深になると、心臓がきゅうっと縮まる。
暫くクロードさんと短い会話をしながら泳いで楽しんだ。強い陽射しの下、綺麗な海で泳ぐのは気持ちが良かった。
もうそろそろ出ようかな、と浅瀬の方を目指すと、クロードさんはまだ出れないと言う。
「どうしたんですか?」
「それが収まらないというかなんというか。何か萎えるような人を連れてきてくれないか?いや、バレる程大きくないかもしれないが、念の為……」
「萎える……?」
今日一日クロードさんによくわからないことを言い続けられて、更にまたよくわからないことを言われて困った。
とりあえず、「ムキムキの人を」と言われたので体格の良いヘルビンディさんと比較的筋肉のあるフレデリクさんを連れてクロードさんのところへ戻れば、凄く良い笑顔で御礼を言われた。いつもならときめくところだけれど、クロードさんの趣味を疑って素直にときめけなかった。
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