pomodorina
モールの地下駐車場に車を駐め、仲間が任務から戻るのを待っていると、何故かひとりの女が後部座席に勝手に乗り込んできた。ルームミラーで女の顔を見ると、紙袋を片手にチェリートマトを食っていて片側の頬が膨らんでいる。
「あー、まりゃらさなくていいはら。ったくしゃあ、あのしゅたいりふと髪にしゅぷれーまきしゅぎなのろね〜」
女はオレに気づいてねえのか、行儀悪く口元をモゴモゴさせながら話し始めた。口調は怒り気味だが、瞳を細め、旨そうにトマトを頬張り続けている。
とりあえず女からは殺気が感じられねえし、ただ単に車を間違えただけらしいから警戒はしてねえ。リゾットから連絡があるまでは暇潰しに女の話を聞いてやることにした。
ルームミラー越しに見える女は10代後半程で、顔の大きさに不釣り合いな馬鹿デカい眼をしている。服装や体格からモデルに見えることから、恐らく事務所の車と間違えたのだろう。モールでモデルの仕事といえば広告用の撮影や車のコンパニオンとかだろうか。
「おかれで、髪らバッキバキれいつもしゃんぷう2はいもしてるんらから!しゃんぷう代はらっへほひいわ〜。しかもあのしゅたいりふといつも現場のかめららんと一緒にお手洗いにきえりゅの。あのせーはふりょーの付け方からうたがっれらけろ、ぜぇっっっっらい、ゲイ……あんらられ!?」
「漸く気づいたのか?」
女は暫く沈黙し、口元に手を当て、喉を鳴らして口に含んでいたトマトを嚥下した。
「やだ。サムエレのおっさんがイケメンになってる……!」
「それで、スタイリストとカメラマンはゲイなのか?」
女のモゴモゴ発音からなんとか聞き取れた話の続きが気になって聞いた。
「う、うん!多分!だっていつも時間差でふたり消えて、それが長くて……お兄さん、本当にその容姿で運転ドライバー?もしかして、サムエレのおっさんがついに車に手を出して公然猥褻罪で逮捕されたから、その代わりに急遽モデルが駆り出されたの?」
「オレの話はどうでもいい。暇だから面白い話をしてくれ。とりあえず、性的倒錯者のジジイよりも整髪料の付け方でゲイを見分けられんのかが気になった」
「うーんと、それは判断材料の一つで……ちなみにお兄さんもゲイ?」
「……」
気まぐれで話を聞いてやったことを後悔し、女を車から引きずり下ろした。