conclusione
※メローネが可哀想
※ビッチ夢主
「惚れてなくても自分の女が他の男と仲睦まじくしていれば、嫉妬はする。何故なら自分の所用物が他者に侵されることは、自尊心を傷つけられることと一緒だからだ」
いつかテレビだかラジオかで、誰かがそんなことを言っていたのを、ナマエがアジトのソファに横になりながら爪をヤスリで整えている姿をみて、ふと思い出した。
オレは、自尊心を傷つけられたことを"嫉妬"と捉えるのは変じゃあねーかと思うが、ナマエに対する自分でもよくわからねえ感情に理由を付ける為なら、幾ら変でも構わねえ。
とにかく、その説にのっとると、オレのナマエ絡みの嫉妬っつーのは、ナマエのことを自分のものだと思っていて、他の男がナマエといるのを見ると、「取られた」と思い、自尊心を傷つけられたと感じるわけだ。だから、「取った」やつに攻撃しちまう。そこに惚れた腫れただのは関係ねえってことだ。
妙に納得した。オレがこんな女に惚れるわけがねえからな。ナマエとは最初から体の関係で、愛なんてもんはオレたちの間には存在しねえ。ただ「ナマエの体だけはオレのもんだ」っつー認識をしているだけだ。
「何見てんの?」
ナマエは爪を整える手を止めて、オレを睨むように見つめ返す。ナマエは眼つきが悪く、いつも不機嫌そうな面をしているが話すとそうでもねえ。冗談を言えば笑うし、自分から馬鹿話をする時もある。そういう時は結構可愛い顔をする。ただ通常顔が不機嫌なだけだった。
「見ちゃ悪いか?」
「別に。ねえ、暇過ぎて死にそう。私の行きつけのお店でクスリ買ってきてくれない?あそこの材木屋さん、良いの売ってくれるのよ」
「買いに行かねえし、アジトでヤクは禁止だ。つーか、そもそもヤクはやめとけ。身体を壊すって何回言えばわかんだよ」
「ヤな男。私の身体なんだから好きにさせてよ。それに親友はクスリのお陰で痩せたって言うし、私健康だし……はあ。手洗ってくるからなんか飲み物用意しといて」
ナマエはヤスリを、テーブルの上にあるマニキュアの横に並べるように置くと、立ち上がった。
「自分でやれ」
とは言ったが、オレの言葉を無視してバスルームへ消えたナマエの為に冷蔵庫に買い溜めておいたダイエットソーダのボトルを取ってヤスリの横に置いてやった。
ナマエがいない間にメローネが現れ、ナマエが寝ていたところに座り「妙に温かいな」とこぼした。それだけで頭に血が上った。
「メローネはこっちのソファに座りやがれ」
「何か理由があるのか?」
「……特にねえ」
理由はあるが伏せた。ナマエがそこにいたから、なんて言えば、「付き合ってるのか?」と聞かれるだろう。答えは勿論"No"だが、付き合ってもねえのに女が寝そべっていたところへ座るのは許さねえ、なんて道理は通らねえからな。
「それならここにいる」
「あ、メローネ。ちょうどよかったわ。これ塗って」
バスルームから戻ってきたナマエはメローネの隣に座ると、マニキュアをメローネに手渡した。
何故オレに頼まねーんだよ、と思ったが、そもそもオレとナマエは恋人じゃあねえ。だからといって、仲間の中で一番親しく、互いの身体の隅々まで知り合った仲のオレよりメローネを選ぶのは理解できねえ。
「別にいいが、じっとしていられるのか?」
メローネはナマエに頼まれても特に感興のなさそうな調子で、ナマエの顔を見つめながら首を傾げた。
「子供じゃあないんだから、してられるわよ」
「それなら、ナマエの手が更に美しくなるようにまずはマッサージをしてやる」
マニキュアをローテーブルに戻し、ナマエの手を取るメローネを見て、気が気じゃあなくなってきた。今にもメローネをブン殴りたくなって、右手が疼いた。
これが自尊心を侵害されることから来る嫉妬なんだな。
「ナマエ、ネイルは自分でやれ」
メローネへの怒りの衝動を抑え込み、ナマエに注意した。これでメローネがナマエから離れれば、オレはメローネを殴らねェで済む。
「だって右手は塗りにくいんだもの」
「関係ねえ。アジトがシンナー臭すんのは迷惑だろ。ギアッチョあたりがブチギレるぜ」
「んー……ま、それもそうね……あ、ダイエットソーダ、ありがとう」
ナマエは、オレがテーブルの上に置いたボトルを手に取り、白い喉をさらし、コクコクと喉を鳴らして飲み始めた。ナマエがダイエットソーダを嚥下していくのをメローネがジッと見つめていて、そーいや、メローネが女の飲食している姿に惹かれるっつー性癖があるのを思い出してまた腹が立ってきた。
これもまた自尊心の侵害から来る嫉妬なのか。面倒な感情だ。
「ナマエ、だらしがないな」
メローネが、ソーダを飲み終えて正面を向くナマエの顎を掴み自分の方へ向かせ、右手の親指でナマエの口元を拭ったのを見た瞬間、目の前のローテーブルを蹴り上げて道を作り、最短距離でメローネを捕まえてブン殴っちまった。これも自尊心が侵害された所為だ。
「プロシュート!何してるの!?」
ナマエはソファに倒れ込むメローネに寄り添い、オレを見上げて睨んできた。
「メローネの頬に蚊がとまってたんだよッ!」
「だからって殴ることないでしょ!?そんなに蚊が憎いの!?」
「オレの親はマラリヤで死んだ!」
「……ごめんなさい」
ナマエはハッとした顔をして、悲しそうに眉を落とした。
オレの言い訳が通じたのはよかったが、ナマエがオレを責めるのはやめてメローネの介抱を始めようとするのは本末転倒だった。
「ナマエ、あんまり他の男にベタベタすんじゃあねーぞ。オレへの当て付けか?」
「当て付け?なんのこと?」
「オレがオメーを……セフレ扱いしてることだ」
「えっ?セフレ?プロシュートとはただの異性のお友達だと思ってたわ」
「オメーは友達と寝んのか!?」
「駄目なの?楽しいからいいじゃない」
「駄目に決まってんだろーがッ!ああ、クソッ!」
自分が何故こんな貞操観念の緩い女に拘ってるのかわからねえ。こんな女に対して所有している概念を持ち続けたら、オレは一生苛ついたまま生きることになる。
──だったら、いっそのこと捨てちまえばいいんじゃあねーか?
簡単な解決法が思い浮かんだその時、ナマエが「まあ──」と前置きして話し出した。
「プロシュートが私を恋人と主張して、駄目って言うならやめるわ。親友と恋人の言うことならきくから」
「……それはつまり、オレに恋人と認めてもらいてーのか?」
「男友達の中では一番好きよ。でも、友達に束縛されるのは意味わかんない。恋人に束縛されるなら別に悪い気はしないわよ」
生意気な回答だ。生意気だが、悪くはねえ話だった。ナマエがオレの所有物として言うことをきくなら、怒ることがなくなるはずだ。こんなふしだら女を恋人と認めるのは恥だが、精神衛生的には認めた方がずっといい。
「なら、オメーをオレの恋人として認めてやる。早速だが、メローネの介抱はオレがするから離れろ。他の男に色眼を使うのは禁止で、短いスカートと胸を出す服装は控えろ。ヤクには一切手を出すな。風邪薬と砂糖でハイになんのもやめろ。返事は?」
「……あなた、そんなに私のこと好きなの?」
「どうしてそうなる?自分の所有物に手を出されんのは誰だって腹が立つだろーが。ええ?わかるか?オレの言ってること」
「ふーん、所有物ね。こっちも恋人として要望を言わせてもらうけど、仲間には暴力振るわないで。マラリヤの話は理解するけど……」
マラリヤの話をマジに信じているようだ。
ナマエは変なところで純粋で、人を疑うことをしない人間だ。だからか、親友とやらの話を信じてヤクにも平気で手を出しているのだろう。ナマエがこんなところに身を落とした原因も、別の親友とやらに騙されて売られたからだった。
「わかった。好きで殴ったわけじゃあねーからな。メローネ、悪かったな」
「よくわからんが、プロシュートはナマエと寝てたのか?」
「ああ」
オレの返答に、殴られても平気な顔をしていたメローネが顔を翳らせ、ナマエを向いた。
「ナマエ、オレとの遊びはやめるのか?」
「そういうことになるわね。ごめんなさい」
ふたりが見つめ合い、ふたりにしかわからねえような会話をする様子が不穏だ。
「……どういう意味だ?」
「私、メローネとか他の男友達とも遊んでたの」
「遊びってのはどこまでだ?」
「プロシュートとしたレクリエーションと一緒よ」
「オメーはどこまでクズなんだよッ!チーム内で複数の男と寝てんじゃあねーぞッ!クッソ!ナマエは下がってろ!蚊がもう一匹メローネの顔に付いてやがる」
「蚊を殺したいからって殴るのはやめて!」
メローネの前に腕を広げて立ちはだかるナマエを見て、余計にメローネに対して怒りが湧いてくんのは、いよいよ自尊心の侵害によるものではない気がしてきたが、どっちにしろ誰かの唱えたくだらねェ思想によってこの怒りを抑制できるわけがなかった。
※ビッチ夢主
「惚れてなくても自分の女が他の男と仲睦まじくしていれば、嫉妬はする。何故なら自分の所用物が他者に侵されることは、自尊心を傷つけられることと一緒だからだ」
いつかテレビだかラジオかで、誰かがそんなことを言っていたのを、ナマエがアジトのソファに横になりながら爪をヤスリで整えている姿をみて、ふと思い出した。
オレは、自尊心を傷つけられたことを"嫉妬"と捉えるのは変じゃあねーかと思うが、ナマエに対する自分でもよくわからねえ感情に理由を付ける為なら、幾ら変でも構わねえ。
とにかく、その説にのっとると、オレのナマエ絡みの嫉妬っつーのは、ナマエのことを自分のものだと思っていて、他の男がナマエといるのを見ると、「取られた」と思い、自尊心を傷つけられたと感じるわけだ。だから、「取った」やつに攻撃しちまう。そこに惚れた腫れただのは関係ねえってことだ。
妙に納得した。オレがこんな女に惚れるわけがねえからな。ナマエとは最初から体の関係で、愛なんてもんはオレたちの間には存在しねえ。ただ「ナマエの体だけはオレのもんだ」っつー認識をしているだけだ。
「何見てんの?」
ナマエは爪を整える手を止めて、オレを睨むように見つめ返す。ナマエは眼つきが悪く、いつも不機嫌そうな面をしているが話すとそうでもねえ。冗談を言えば笑うし、自分から馬鹿話をする時もある。そういう時は結構可愛い顔をする。ただ通常顔が不機嫌なだけだった。
「見ちゃ悪いか?」
「別に。ねえ、暇過ぎて死にそう。私の行きつけのお店でクスリ買ってきてくれない?あそこの材木屋さん、良いの売ってくれるのよ」
「買いに行かねえし、アジトでヤクは禁止だ。つーか、そもそもヤクはやめとけ。身体を壊すって何回言えばわかんだよ」
「ヤな男。私の身体なんだから好きにさせてよ。それに親友はクスリのお陰で痩せたって言うし、私健康だし……はあ。手洗ってくるからなんか飲み物用意しといて」
ナマエはヤスリを、テーブルの上にあるマニキュアの横に並べるように置くと、立ち上がった。
「自分でやれ」
とは言ったが、オレの言葉を無視してバスルームへ消えたナマエの為に冷蔵庫に買い溜めておいたダイエットソーダのボトルを取ってヤスリの横に置いてやった。
ナマエがいない間にメローネが現れ、ナマエが寝ていたところに座り「妙に温かいな」とこぼした。それだけで頭に血が上った。
「メローネはこっちのソファに座りやがれ」
「何か理由があるのか?」
「……特にねえ」
理由はあるが伏せた。ナマエがそこにいたから、なんて言えば、「付き合ってるのか?」と聞かれるだろう。答えは勿論"No"だが、付き合ってもねえのに女が寝そべっていたところへ座るのは許さねえ、なんて道理は通らねえからな。
「それならここにいる」
「あ、メローネ。ちょうどよかったわ。これ塗って」
バスルームから戻ってきたナマエはメローネの隣に座ると、マニキュアをメローネに手渡した。
何故オレに頼まねーんだよ、と思ったが、そもそもオレとナマエは恋人じゃあねえ。だからといって、仲間の中で一番親しく、互いの身体の隅々まで知り合った仲のオレよりメローネを選ぶのは理解できねえ。
「別にいいが、じっとしていられるのか?」
メローネはナマエに頼まれても特に感興のなさそうな調子で、ナマエの顔を見つめながら首を傾げた。
「子供じゃあないんだから、してられるわよ」
「それなら、ナマエの手が更に美しくなるようにまずはマッサージをしてやる」
マニキュアをローテーブルに戻し、ナマエの手を取るメローネを見て、気が気じゃあなくなってきた。今にもメローネをブン殴りたくなって、右手が疼いた。
これが自尊心を侵害されることから来る嫉妬なんだな。
「ナマエ、ネイルは自分でやれ」
メローネへの怒りの衝動を抑え込み、ナマエに注意した。これでメローネがナマエから離れれば、オレはメローネを殴らねェで済む。
「だって右手は塗りにくいんだもの」
「関係ねえ。アジトがシンナー臭すんのは迷惑だろ。ギアッチョあたりがブチギレるぜ」
「んー……ま、それもそうね……あ、ダイエットソーダ、ありがとう」
ナマエは、オレがテーブルの上に置いたボトルを手に取り、白い喉をさらし、コクコクと喉を鳴らして飲み始めた。ナマエがダイエットソーダを嚥下していくのをメローネがジッと見つめていて、そーいや、メローネが女の飲食している姿に惹かれるっつー性癖があるのを思い出してまた腹が立ってきた。
これもまた自尊心の侵害から来る嫉妬なのか。面倒な感情だ。
「ナマエ、だらしがないな」
メローネが、ソーダを飲み終えて正面を向くナマエの顎を掴み自分の方へ向かせ、右手の親指でナマエの口元を拭ったのを見た瞬間、目の前のローテーブルを蹴り上げて道を作り、最短距離でメローネを捕まえてブン殴っちまった。これも自尊心が侵害された所為だ。
「プロシュート!何してるの!?」
ナマエはソファに倒れ込むメローネに寄り添い、オレを見上げて睨んできた。
「メローネの頬に蚊がとまってたんだよッ!」
「だからって殴ることないでしょ!?そんなに蚊が憎いの!?」
「オレの親はマラリヤで死んだ!」
「……ごめんなさい」
ナマエはハッとした顔をして、悲しそうに眉を落とした。
オレの言い訳が通じたのはよかったが、ナマエがオレを責めるのはやめてメローネの介抱を始めようとするのは本末転倒だった。
「ナマエ、あんまり他の男にベタベタすんじゃあねーぞ。オレへの当て付けか?」
「当て付け?なんのこと?」
「オレがオメーを……セフレ扱いしてることだ」
「えっ?セフレ?プロシュートとはただの異性のお友達だと思ってたわ」
「オメーは友達と寝んのか!?」
「駄目なの?楽しいからいいじゃない」
「駄目に決まってんだろーがッ!ああ、クソッ!」
自分が何故こんな貞操観念の緩い女に拘ってるのかわからねえ。こんな女に対して所有している概念を持ち続けたら、オレは一生苛ついたまま生きることになる。
──だったら、いっそのこと捨てちまえばいいんじゃあねーか?
簡単な解決法が思い浮かんだその時、ナマエが「まあ──」と前置きして話し出した。
「プロシュートが私を恋人と主張して、駄目って言うならやめるわ。親友と恋人の言うことならきくから」
「……それはつまり、オレに恋人と認めてもらいてーのか?」
「男友達の中では一番好きよ。でも、友達に束縛されるのは意味わかんない。恋人に束縛されるなら別に悪い気はしないわよ」
生意気な回答だ。生意気だが、悪くはねえ話だった。ナマエがオレの所有物として言うことをきくなら、怒ることがなくなるはずだ。こんなふしだら女を恋人と認めるのは恥だが、精神衛生的には認めた方がずっといい。
「なら、オメーをオレの恋人として認めてやる。早速だが、メローネの介抱はオレがするから離れろ。他の男に色眼を使うのは禁止で、短いスカートと胸を出す服装は控えろ。ヤクには一切手を出すな。風邪薬と砂糖でハイになんのもやめろ。返事は?」
「……あなた、そんなに私のこと好きなの?」
「どうしてそうなる?自分の所有物に手を出されんのは誰だって腹が立つだろーが。ええ?わかるか?オレの言ってること」
「ふーん、所有物ね。こっちも恋人として要望を言わせてもらうけど、仲間には暴力振るわないで。マラリヤの話は理解するけど……」
マラリヤの話をマジに信じているようだ。
ナマエは変なところで純粋で、人を疑うことをしない人間だ。だからか、親友とやらの話を信じてヤクにも平気で手を出しているのだろう。ナマエがこんなところに身を落とした原因も、別の親友とやらに騙されて売られたからだった。
「わかった。好きで殴ったわけじゃあねーからな。メローネ、悪かったな」
「よくわからんが、プロシュートはナマエと寝てたのか?」
「ああ」
オレの返答に、殴られても平気な顔をしていたメローネが顔を翳らせ、ナマエを向いた。
「ナマエ、オレとの遊びはやめるのか?」
「そういうことになるわね。ごめんなさい」
ふたりが見つめ合い、ふたりにしかわからねえような会話をする様子が不穏だ。
「……どういう意味だ?」
「私、メローネとか他の男友達とも遊んでたの」
「遊びってのはどこまでだ?」
「プロシュートとしたレクリエーションと一緒よ」
「オメーはどこまでクズなんだよッ!チーム内で複数の男と寝てんじゃあねーぞッ!クッソ!ナマエは下がってろ!蚊がもう一匹メローネの顔に付いてやがる」
「蚊を殺したいからって殴るのはやめて!」
メローネの前に腕を広げて立ちはだかるナマエを見て、余計にメローネに対して怒りが湧いてくんのは、いよいよ自尊心の侵害によるものではない気がしてきたが、どっちにしろ誰かの唱えたくだらねェ思想によってこの怒りを抑制できるわけがなかった。