拾われる前の話

ひとり、召使いに子どもができた。
そこの主人は潔癖すぎる人で、外を、自分以外をすべて病原体と毛嫌いしていた。

そんな主人は、思いつく。そうだ、この赤子を自分だけの完璧な奴隷にしようと。
外に出さず、汚さず、隔離して。外の菌類を持っていない奴隷を作ろう。

子どもが5つまで育つと、親はすぐに離された。その時、親に払われた金額はあまりにも安く、嘲笑われた。取り返そうとした親は山の中にて死刑。

綺麗な奴隷よ、と主人は喜んだ。外に触れていない、完璧な自分の奴隷。だがしかし、奴隷は病にかかってしまう。

「殺して血を撒かないで。捨てなさい、遠くへ。うんと遠く、獣の餌になるような所へ」

死は汚れると、自分の目の届くところでの死刑を許さない主人は遣いをやり、遠くの地に奴隷を捨てた。しばらく飯を与えていないため、空腹で奴隷は動けぬ。

奴隷は死んでも困ることなどなかった。
生きているのも理由がわからず、ずっと働いてきた。もうすぐ餌になるか、先に餓死をするかでこと切れる。困ることはなかった。

だがかすみ目の向こうに、現れたのは獣ではなく、男であった。

「人か」

奴隷は答えられない。声は出た、だが人かと聞かれれば、そうだとも言えなかった。人と同じ位に居ても良いのかわからなかったからだ。

「言葉がわかるか」

これには頷いた。ゆっくり。

男はそれならとすぐに動いた。奴隷を担ぎ上げて、歩き始める。
はじめて人に触れた奴隷は、あたたかいと思った。これが、人。


後に奴隷は、カオと名前を貰う。