帰還


ワノ国の戦いが終わり、船に戻った。


「キラーさーん!キャープテーン!みなさーん!」

船の上でブンブンと手を振るカオに、自然と口角が上がる。マスクの下で一番喜んだのは、誰でもないキラーだろう。船から降りて走って来るカオを受け止めようと、キラーは腕を広げて構える。さあ来い愛しい愛しいカオ! おれは帰ってきたぞ!

「……あ! ベポちゃん!」

綺麗に曲がってカオがベポへと走って行く。ハートの海賊団も、なんやかんやで一緒になっていたのだ。カオがベポの方へと行ったものだから、キラーはガーンと音が聞こえそうなくらいショック。膝から崩れ落ちそうなキラーを船員たちが「哀れだ…」と慰めるように拝んだ。

「怪我はないのか、カオ……」

フラフラと何とか男の威厳を保ちながら、キラーはカオに近寄った。本来ならば自分がそう聞かれる立場なのだが、船に残っていたカオのこともずっと気がかりであった。カオは声をかけられるとやっと振り向き、キラーを見た。

「はい、ありま……あれ、ありませ……あれ、あれ、おかしいですね、痛む所はないのに」
「……!」

カオは不思議と、涙がぼろぼろ出てきてしまい自分で驚いていた。泣いている女にたまらず腕を伸ばすと、キラーは卵を扱うように優しい手つきで背を叩いた。

「仕方のないやつだ」
「キラーさん、キラーさん……」

カオの涙はますます溢れた。それが痛いから、怪我をしたからではないことくらいわからないほど、キラーは野暮ではない。

「キラーさん、よかった」
「ああ」
「生きていますね、よかった」
「ああ」

普段なら、人前でイチャつくなとゲンナリする船員たちもなんだかジンとしていた。キッドも見て見ぬふり。

「キラーさん、だいすき」
「また生きていこう」
「はい……!」

ただただ子どもの無事を嬉しく思う親のように、カオは、キラーは抱きしめあった。ぬくぬくとした感触にこのまま寝てしまいたいほどに心地良い。

また一緒に生きていこう。