麗しい菊

カオの枕の上に、花と美々しいメッセージカードが置いてあった。贈り主は書いておらず、誰からなのかわからない。


「誰ですかね」

キラーに尋ねながらカオは誰からだろうと花を見つめる。

「嬉しそうだな」

「そう…見えますか?花を貰うなんて初めてで、ふふ、嬉しいのかもしれません」

この時キラーには天使が見えた。ラッパを吹いている。そして、カオに後光が差して見える。

こうしておくと長持ちするんですよ、とやおら花の茎にちょんちょんとハサミをいれるカオ。今度島に降りたら100本でも500本でも花を贈ろうと誓いながら、キラーはコップに挿された輪を見る。

「キラーさん、船に花壇なんか作ったらキャプテンは怒りますかね」

「カオは花が好きなのか」

「大好きですよ」

パッと笑うのだカオは。絶対に1000本花を贈ろう、そしてプロポーズしようとキラーは眉間を抑えながら俯く。

誰からだろうとカオは船をうろついた。最初にヒートを尋ねて、ワイヤーを尋ねて、その他船員一同を尋ねた。ワイヤーはニヤニヤと嬉しそうにして、飯が美味い美味いとわざとらしくしていた。贈り主を考え倦ねる。

贈り主探しが進まなくなったところ、キラーを甲板で見かける。空からは白いフワフワが舞っていた。冷たい空気と、空に散らばった粒々に酔い痴れたくなる。

「キラーさん、冷えますよ」

「冷えるな今日は」

サイズの大きなコートを着込んだカオは、もごもごと喋り辛そうにしている。コートはいつだかキッドが、もう着ないからと押し付けたものだ。それは、大きかろう。

「中でお茶でもどうでしょう」

「酒も飲みたい」

「おつまみにどうですか、チョコレートとか…」

たおやかに寄り添ってくるカオがあたたかく、甘い匂いがした。少し積極的なカオは珍しい。稀なことに、どうしたと少し屈み込むとカオの頬がバラ色だった。意のあるところ、愛しくてたまらない。

「カオ、もしかするとなんだが」

「はい」

「バレンタインなんだろうか」

カオは鯱張って、目を合わせようとしない。それは蓋し、当たりということだろう。

「前にそういった文化を聞いたもので、えと、チョコレートを好きな人に…と。あの、食べてくだされば幸いです。わたし、ええと、ええっと…」

「おれの産まれでは、男が女に花を贈るんだ。贈り主を明かさずに」

カオはますます真っ赤っかになった。

「黙っているなんてずるいですよ」

「そういう伝統なんだ。反応を見て楽しむ、意地が悪いだろ」

はにかむ顔にキラーはンーと口を近づければ、暖まるのが先ですとつれないお言葉で弾かれた。



*つぼみさま
奴隷ちゃん夢主でバレンタインネタのリクエスト頂きました。ありがとうございます!

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