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囲い

「Good evening」

「伊達、さん……」

つい数日前まで、あたしは外見も中身も大した取り柄のないただのOLだった。
しかしある日突然、戦国時代にタイムスリップしてしまい、戦国時代の森で山賊に襲われかけた。
そこで超運良くこの伊達政宗公が通りかかり、保護してもらったのだが……彼はとんでもない異常人物だった。




「ほ、本当に保護してくれるんですか…?」

「That's right. なんか不都合でもあるのか?」

「い、いえ!大変ありがたいですけど……その、あたしみたいな身元不明の女を保護するのは……なんというか…」

「不用心だ、ってか?安心しな、俺はあんたを気に入ったんだ。それに、あそこじゃなにも出来やしねぇだろ」

「………?」

あたしの部屋だと案内されたのは、座敷牢だった。
格子状に組まれた木材によって部屋が半分に分けられているようにも見えるが、あたしの知っているパーテーションの役割ではないだろう。
その奥には布団と低い机のみ置かれており、あとは同様の格子で塞がれた小さい窓があるだけだった。


「こ、これっ……どういうことですか…?」

身の危険を感じて後退りするも、先に腕を掴まれて格子の奥へと放り投げられる。
そして施錠音が続き、ようやく理解する。かの有名な伊達政宗公はとんでもない人間だったのだと。
いや、もしかしたらこの時代の武将は皆そういう気質なのかもしれない。
いずれにせよ、数分前にこの男の話を鵜呑みにして胸をなでおろしていた自分が甘かったことに変わらない。

「出してくださいっ!こんな監禁なんて…なに考えてるんですか!!」

「Ah…?監禁?ハッ!言いがかりはよしな。さっきも言ったが、これは保護だ」

「これのどこが……っ!」

「あんた、平和な未来から来たって言ってたな。身寄りもない奴がここを出て、どこに行く気だ?」

格子にしがみついて吠えるも、彼は冷たい目で見下ろすのみ。
確かに、あくまでも保護してもらう身でその形や方法にケチをつけるのは図々しいのかもしれない。
だが人権が保証されている現代で育ったあたしからすると、この施しは異常だ。
場合によってはこの人の元から離れた方が安全な可能性さえある。
どうにかしてここを出て、彼から離れなくてはならない。のだが……彼の言葉通り、あたしはどこの誰を頼って生きればいいのか分からないのも事実だった。

「さっきも言ったが……俺はあんたを気に入ったんだ。悪い様にはしねぇ。困り事はなんでも言え。Bestを尽くす」

「なら……せめてここから出してください!」

「それは聞けねぇが、どうしてもってんなら……」

伊達さんは踵を返し、室の端で大人しくしていた従者が開いた襖へと向かう。
そのまま室を一歩出るとこちらを向き、不敵な笑みが浮かべる。
囚われの身となり、生きる選択肢をなくしたせいか、彼がとても恐ろしい人物に見えた。

「おねだりの仕方でも考えてから、もう一度オレに頼んでみることだな。運が良けりゃ、その格子から出られるだろうよ」

また夕刻に来る。最後に彼はそう言って、襖が閉じられた。
襖の向こうから射していた光がなくなり、薄暗い部屋が更に深くなる。
格子から内側へ、自分の手のひらほどの小さい窓からの光だけが差し込む。それでも格子で覆われてて、到底「光」とは言えない微かなものだった。

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