愛すること、信じること




ーーー14年前。


「あなた、もしかしてJapanese?」

突然、声を掛けてしまった。
アメリカに来て数ヶ月、日本を飛び出し右も左も分からなかった頃とは変わって、周囲の景色が鮮明に見えてくるようになった今日この頃...。今まで外国人しか居なかったカレッジ内の風景に、ひとりの日本人と思われる男性が居た。これまでも居たかもしれないが、ふと目に入って来たため、超直感ーSympathyーを感じて声を掛けてしまった。しかし日本人かと尋ねたが、よく見てみればこちらを不審げに見ている瞳はグリーン、顔立ちも日本人かと言われれば微妙だし、肩幅もありガタイが良い。
そんな彼女の考察を覆すように彼は「...そうだが、なにか?」とやや強めの口調で、日本人であること肯定した。そんなつもりは無かったが、やはり失礼な声の掛け方をしてしまったようだ。

「ごめんなさい、不躾に声を掛けてしまって...。わたし、アメリカに来てから日本人に会ったのが初めてで、思わず声を掛けてしまったわ。」

でも会えてとても嬉しいわ、と言うと相手は虚をつかれたかのようにこちらを一瞬ポカンと見つめ、大きく笑い始めた。今度はこちらがポカンとしてしまった。

「いや、むしろ謝るのはこちらだ。この通り、テストに追われていてな...。そちらが突然声を掛けてきたにしろ、Ladyに対して些か邪険にした態度を取ってしまった。」

ひとしきり笑い終わったあと、彼がテーブルに広がっている参考書を指しながら謝った。たしかにテーブルに散らかる参考書と、彼の目の下の隈はテストに追われていることを如実に証明しているようで、少しくすっと笑ってしまった。

「わたしは工藤麗子、あなたは?」
「俺は、赤井秀一。」

ここはアメリカ合衆国。
わたしは右肩に掛けてきた参考書の入ったトートバックをかけ直すと、握手を求めた。



00.世界は今日も



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