| 高校生/赤羽vs浅野 「あのさぁ、なんで会長がいんの?」 今日は放課後カルマと一緒にカフェで勉強をしようという話になっていたので、学校が終わってすぐにカフェへと赴いた。けれど入る手前で幼馴染と出会い、テスト勉強をするのだと伝えると「ちゃんと勉強できているか見てやろう」と言われて何故か一緒にカフェへと入ることになった。そして遅れてやってきたカルマがその光景を見て、それはもう盛大に眉を寄せて不機嫌を露わにした。私はあははと笑った。 「勉強するだけなら僕もいて問題ないだろう」 「はぁ?普通付き合ってる2人の間に割って入ってくる?ちょっと空気読めなさすぎるんじゃね?」 「僕はまだ認めてないからな、君たちの交際を」 「お父さんかよ」 という彼らのやりとりも、最近では見慣れてしまったものだ。「しかも何で隣同士座ってんの」と言ってカルマは渋々私たちの前の椅子に座り、私と学秀、向かいにカルマというよく分からない構図が出来上がってしまう。 私とカルマは同じ椚ヶ丘中学校3年E組の卒業生で、3年の終わり頃に付き合いを始めた。カルマは外部受験してまで椚ヶ丘高校へと再度入学を果たしたけれど、私は別の高校へと進学した。だから今は別々の高校生活を送っていて、距離はそう離れてもないのでこうやって度々放課後に会っている。そして私の幼馴染である学秀はカルマと同じ高校で、彼とは成績争いをする仲だ。 「あ、ねえ学秀ここわかんない」 「ん?ああ、そこはこの式を使うんだ」 「いや何で普通に勉強始めてんのあんた等」 既にノートを開いて勉強を始めていたのでついつい分からない問題を隣にいる学秀に尋ねると、彼はノートを覗き込んで丁寧に説明してくれる。そしたらカルマの鋭いツッコミが盛大に突き刺さってきた。 「つーか、勉強なら俺が教えられるし」 「ふん、でも中間テストは僕が上だった」 「は?期末は俺が上になるから」 「結果が出てから威張ってくれないか?」 「2人とも、ここで喧嘩はやめようねー」 この会話を聞いて2人が椚ヶ丘高校のトップ争いをしているだなんて思えるだろうか…。私はもう仏の如く目を瞑るように静かに課題と向き合った。 「てゆーか、名前は俺と会長どっちの味方なわけ?」 「え、いやどっちって…」 「勿論、幼馴染である僕だろう?」 「いやいや、彼氏の俺でしょ」 「(うわーめんどくさいー)」 こんなどこのギャルゲーだよという選択肢に、もう苦笑い通り越して悟りを開くところだった。これは今選ばなくてはいけないのだろうか…できれば一生選びたくない。でも彼ら2人にギラリと視線を向けられ、交互に見るとやっぱ2人ってどこか似てるなーなんて悠長に考えてしまった。 「あー……えっと、期末テスト、1位取った方の味方で…」 「「絶対取る」」 せっかくのイケメンが台無しな怖さだ。 カルマと学秀って、どことなく雰囲気が似ているんだよなぁ…。どちらも顔が良いのになんだか同時に恐怖も持ち合わせていて、爽やかイケメンの磯貝くんを並べるとよりはっきりと比較できる。あと学力も同等に最高峰で、テストは毎回2人だけの頂上決戦だった。まあ、良きライバル…という感じで私は結構そんな彼らを羨ましいと思っている。 「学秀、携帯振るえてるよ」 「え、ああ……チッ、そろそろ行かなくては」 「そっか、気をつけてね」 「ハイさよならぁ〜そんでもう二度と邪魔してくんな」 どうやら用事があったみたいで、学秀は手早く広げていたノートを鞄に片付けてその場に立ち上がった。そして飲み物代だと言って置いていかれたお金はぴったりカルマの注文の分だけ差し引かれた金額で、もはや彼の意地を感じる。カルマは舌をべっと出して、わざわざ言わなくていいことを言って彼を盛大に煽って見送った。帰り際に振り返った学秀は、先ほど到着した際のカルマの表情と同じだった。 「あーあ、やっと邪魔者が消えた」 「学秀は過保護だから…ごめんね」 「はぁ……名前のその鈍感さにももう慣れたよ」 頬杖をついて呆れたように笑うカルマに、私はまた無意識によくないことをしてしまったのかと申し訳なくなった。でもカルマの表情は先ほど学秀がいた時とは打って変わって、穏やかではある。 「ちゃんと後で送るから、俺ん家行かない?」 「え、勉強…ちゃんとする?」 「するする、1位取らなきゃだしね」 じゃあいいかな…。カルマの家に行くといつも勉強そっちのけになってしまうことがあるので、それを聞いて一安心する。…とは言っても、今までもそんなやり取りをしてその通りにいったことがあっただろうか。 とりあえず2人で軽く甘いものでも食べて、その後は一緒にカルマの家までの道のりを歩いた。私と彼の家はそこまで距離もないので、何度かもうお邪魔したことがある。私の家にカルマが来ることもあるが、学秀の家とも近いのでカルマが落ち着かないと言ってあまり来る事はなかった。 「名前はさ、もう少し俺のことを贔屓にしてくれていいんじゃない?」 「え?」 カルマの家に到着すると、相変わらずご両親は忙しいのか家にいなかった。二階の彼の部屋に行くのも慣れたもので、入ってすぐに折り畳みのローテーブルを取り出していつもの場所へと広げて置く。そして床に座って、そのテーブルに先ほどカフェで出していたノートや問題集を広げた。すると飲み物を持ってきてくれたカルマが勉強する気満々な私をみて、はぁと小さくため息を吐くのに気付く。けれどすぐに彼も床に座り、同じく勉強道具を取り出した。 「学校だって別々だしさぁ…。下手したら俺、名前よりアイツと顔合わせてる日数のが多い気がすんだけど」 「まあ、2人は同じ学校でクラスも同じでしょ?それになんだか2人が仲良さそうで私は嬉しいな」 「え、それ本気で言ってる?」 驚愕とでもいうようにカルマが私を見つめていて、私は首を傾げた。そしてまた、盛大にハァと大きなため息が吐かれる。 「俺って名前の彼氏だよね?」 「う、うん…そのつもりだけど」 「だったらさぁ、もっと俺との時間を大切にしてよ」 そう言ってカルマの手が私の頬に触れ、スルリと優しく唇をなぞった。なんだか今の彼は少しムッとしていて、きっと私が彼を不機嫌にさせてしまっているのだろう。でも彼の言う“大切にして”というのは、言われなくてもしているつもりだった。私はいつだってカルマとの時間がどの時間よりも大切で、心をかき乱される。 「私が好きなのはカルマだけだよ?」 「っ………ずるいでしょ、今言うのは」 「だって、そう思ったんだもん…」 「なんか俺ばっか好きみたいでムカつく」 「そんなことないよ、私の方がーー」 そう言いかけた瞬間、私の唇は彼の唇によって塞がれてしまった。パタリと雪崩れ込むようにそのまま押し倒され、一度離れたかと思った唇は再び塞がれる。彼のキステクはE組でもかなり上位だったので、気づいた時には体中の力が抜けていってしまっているのだ。私も頑張って応えようとはするのだけど、やっぱり彼には勝てない。 「んぅっ……かる、まっ……」 「ごめん、やっぱ勉強は後でいい?」 ダメ…と言う前に、また唇が重なる。こうなってしまったら拒否権なんてものは私にはない。それに私は彼のあんな…強請るような声に、弱いのだ。私を力強く差し押さえてくるくせに、あんな甘えるように囁いてくるなんて……カルマこそずるいのではないだろうか。 期末の結果は、見事に両者同点1位だった。 |