石化後/ゼノの幼馴染でスタンの恋人/甘々





わたしの幼馴染はキレにキレまくる科学屋さん。幼いころから何かの実験をしては周りの大人たちを驚かせていた。そしてわたしはそんなゼノのくっつき虫。人と上手く会話のできないわたしのことをゼノは「なにも気にすることはない!僕が君の全てを理解しよう!」と言ってくれて、何をするにもどこに行くにも一緒だった。とは言ってもエレメンタリースクールの途中からミドルスクールまでずっとホームスクーリングだったので、ゼノが学校へ行っている間は離れ離れだったのだけど。でも人類が石化して目覚めてからはずーっといっしょ。ゼノはわたしの大切な人。

「ゼノ、また夜更かししてたの?」
「おお、名前、こんな深夜にお目覚めかい」
「ゼノが全然ベッドに入ってこないから迎えにきたの」
「そうか、それはすまない。だが名前、君はまた僕のベッドに忍び込んでいたのかい?」
「だってゼノがいなきゃ安心して眠れないんだもの」
「まったく、とんだ甘えん坊に育ってしまったようだね、仕方ない今日の作業はここまでにしておこう」
「ほんと?ありがとうゼノ!」

ゼノは毎日いそがしそう。何もかもを失ったこのストーンワールドで生きるには、ゼノは必要不可欠な人となってしまった。元々の時代でも彼は世界に必要とされる男だったので変わりはしないけど、私は今の彼の方が好きだ。だってこんなにも楽しそうなんだもの。だからって毎日のように徹夜されるのは私も困る。寂しさもあるけど、勿論なによりはゼノの体調を気遣ってのこと。と、わたしは言い張るのだ。

「いやあんた等なに普通に一緒に寝ようとしてんの?」
「あ、スタン、見回りおわり?おつかれさまー」
「やあスタン、その様子だと今日も何事もなかったみたいだね、君も早く寝るといい」
「ってオイ!スルーすんな!」

ゼノと2人で寝室に向かおうとしたら、いつの間にか出口にスタンが扉に手をかけて立っていた。相変わらず口元にはタバコが咥えられていて、もくもくと白い煙が立ち上っている。そしてなんだか怒っているみたいだ。

「名前、あんたのダーリンは誰かその可愛いお口で言ってみな?ホラよ」
「誰って、スタンリー・スナイダーでしょ?」
「そうだよ、正解だよ、なのに何で俺のハニーは他の男と寝ようとしてんの?」
「ゼノと居ると安心するから」
「Oh、真正面から言われっとかなりクるじゃんね」

どうしてそんな胸を押さえて眉間に皺を寄せているのだろう。スタンはわたしの恋人。彼氏。マイダーリン。でもゼノとは子供のころから同じベッドで眠っていたから今更ダメだなんて言われても戻せない。それにゼノと一緒だとぐっすり眠れるのだ。やだやだ、わたしたちを引き離さないで。

「まあ、もうあんた等のソレはママとベイビーみたいなモンだと思うようにしてんよ。…でもさ、何で名前は俺との添い寝はあんましてくんねぇのにゼノはOKなわけ?たまには俺のベッドで待っててくれてもよくね?泣くぜ?」
「え…えっとぉ……」

ゼノから攫うように私の腰を引き寄せてぐっと顔を近づけるスタンに、わたしはたじろいだ。咥えていたタバコは片方の手に移っていて、もうすぐで灰が落ち切りそうになっていたところをゼノがすかさず灰皿を持ってきて消させる。なんとも華麗な連携プレーだ。と、そんなのを見てる隙などわたしには無く、まっすぐに見つめてくるスタンの瞳は何度見てもサファイアの宝石のようにキラキラしている。あ、取れないかなこれ…。

「おいおい、追い詰められてんのになに目ん玉抉ろうとしてんだよ」
「あ、ごめんなさいっ…スタンの瞳、いつ見ても綺麗だから」
「青目なんて珍しいモンでもないだろ、それよりもあんたのグリーンの瞳の方が何億倍も綺麗じゃん」

確かにわたしたちの人種では青目は珍しくはないけれど、スタンの瞳はどのブルーよりも光輝いて見えるほど美しいと思えた。だからたまに手を伸ばしてついつい取ろうとしてしまう。

「君たちは本当に仲がいいね、実に微笑ましいよ。…だが、僕もそろそろ寝たいんだ、結局僕の愛しいkitten子猫ちゃんはどうなるんだい?」
「ああ時間を削って悪いなゼノ、でももう話は終わりだ、”俺の”愛しい子猫ちゃんは俺とベッドでおねんねすっかんね」
「えぇ!」
「えー!はこっちじゃんよ、そんなに俺と寝んのイヤ?」
「い、嫌じゃないけどぉ…」

わたしは口をもごもごとさせる。だからそんなに顔を近づけないで。悲しい顔をしないで。スタンのお顔はとっても綺麗でかっこよくて、女の子ならみんなメロメロになっちゃうんだから。別にスタンと一緒に寝るのは嫌じゃない。いやじゃない…けど、

「やっぱり今日はゼノと寝る!」
「あ!ちょ、ふざけんな!」
「おーおースタン、残念だったね!我がプリンセスは僕をご所望のようだ」
「Shit!んでだよ!いい加減泣いてもいいか!?」

ごめんなさいスタン。そう言ってゼノに身を寄せれば、ゼノの長い爪が私の肩を抱いた。でもね、スタンと沢山寝れないのにはわけがあるんです。それはね、

「だってゼノとは安心して眠れるけど、スタンと寝ると…ど、ドキドキして眠れなくなっちゃうの…!」

恥ずかしいけど思い切って彼に伝えると、スタンの綺麗な目が大きく見開いて口に咥えようとしていた新しいタバコがポロリと落ちた。そして小さく「Oh…」という声が聞こえる。

「ははは!これは素晴らしい殺し文句だな、スタン!君に嫉妬してしまうよ!」
「ハァーーーッ……ったく、今日はこれで勘弁してやんよ…」

頭を抱えて大きくため息を吐くスタンと、隣で大笑いするゼノ。どうしてそんな反応になるのかは分からないけれど、どうやらゼノと一緒に寝ることを許してくれたらしい。

「おやすみのキスは?当然それはしてくれんだろ?」
「うー…、軽いのならいいよ」
「それは無理だね、俺が寂しくならねぇように濃厚なの頼むぜ」
「そんなキスできな――んむぅっ」

スタンに腰を引かれて唇をぱくりと食べられた。さっきからゼノとスタンのところを行ったり来たり、わたしはボールじゃないんだよ。そんなことも言える隙無しにスタンは大人のえっちなキスをわたしにする。ゼノは早々に「では先にベッドで待ってるよ」と言って部屋に行ってしまった。

「あんまゼノばっかかまってっと、あんたの事どうにかしちまいそうだよ」
「ああスタン、不安にさせてごめんね?でも、わたしが恋してるのはあなただけだから」
「ああ、それだけは信じんよ」

おやすみ、わたしの愛しいあなた。






グッナイマイプリンセス


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