石化前/スタンリー夢/3話





またスタンと会えない日常が始まる。今までは普通に過ごせていたはずのただの日常も、一度でも彼との時間を知ってしまえば天国と地獄。それでも私にはきっとこの時間は大切なんだろう。だってその間は、熱く燃えた自分の脳をゆっくりと冷まさせてくれるから。自惚れてはだめだ、私は彼の中の最下位、沢山いるガールフレンドの一人。何度も何度もそう言って、自分という存在をちっぽけなものにしていく。辛くないかと言われたら否定はできないかもしれないけど、でも、スタンとの関係が終わってしまう方がもっと辛かった。

「ねえ、君ってよくスタンリーと一緒にR&Bに来てる子だよね?」
「え?」

今日は待ちに待ったスタンと会える日。でも会うのはいつも夜なので、昼間はカフェのバイトを入れている。そして今は丁度そのブレイクタイムで、私は働いているカフェのテラスで一人お昼ごはんのサンドイッチを食べていた。

「あの、誰…ですか?」
「ああごめん、俺はアラン、よろしく」
「名前…です、よろしく…」
「Hey名前!俺よくここのカフェ通ってて、前から君のこと可愛いなって思ってたんだよ。そしたら最近君がR&Bに居るの見かけてさ、大人しい子だと思ってたんだけど結構やるね」
「はぁ…」

突然話しかけてきて隣の空いているチェアに座ってきた彼は、どうやらこのカフェの常連で、あのバーにもよく行っているらしい。けれども私はまったく彼に身に覚えが無かった。それも無理はないか、だって私はずっとスタンのことしか見ていないから。カフェに来る人だって、スタンのことを思うと見劣りしちゃう。

「君とスタンリーって付き合ってるの?」
「え、………う、うん、そうよ」
「へぇ〜、でもアイツに何人も彼女いること、君知らないわけないよな?」
「……ええ、知ってるわ」

なんでそんなこと言ってくるんだろう。とても失礼な人だ。分かっているんだから放っておいてくれればいいのに。私は少し不愉快に思いながらも、結局自分の弱い部分で彼を蔑ろにはできなかった。

「君せっかく可愛いのに、もったいないよ」
「え?」
「アイツなんてやめてさ、俺なんかどう?俺は君に寂しい想いなんてさせないぜ」
「い、いえ…そんな、」

何を言うのかと思えば、私は今口説かれているのだろうか…?それでもまったくその言葉は魅力的に感じなかった。私は別に寂しくなんてない。私は望んで彼といるのだ。彼じゃなきゃだめなんだから…。

「そんなこと言わずに…」
「オイあんた、人の彼女口説こうなんていい度胸してんじゃん?」
「えっ…」
「げ、スタンリー!?」

アランという彼が私へ手を伸ばした瞬間だった。横から伸びてきた手がそれを阻止し、見上げるとそこにはスタンが立っていた。

「コイツは俺の女なの。さっさと失せろ、Ashhole!ゲス野郎
「チッ…!」

スタンに肩を抱かれ、彼はそう言って声をかけてきた男性に中指を立てて追い払った。突然のことに色々と頭が追いつかず、私はただ目を瞬かせて悔しそうに消えていく彼の背中を見つめる。

「なに易々と口きいてんの、俺が来なきゃあんた連れてかれてたぜ」
「そ、そんなこと……それより、スタンどうしてここに?」
「今日会う約束だったろ?なのにあんたバイトとか入れてっし、暇だから様子見に来たんよ」
「え、だって会うのは…」
「バイト何時終わんの?」
「え?えっと、あと2時間くらい…」
「んじゃその後は俺とデートな」
「えぇ!?」

あまりに猛スピードで話が進んでいって、今の私には理解が追いつかない。それよりもスタンとデート?そんなの初めてのことだ。私はスタンの彼女になったけれど、彼と普通の恋人同士のようなことはしたことがない。会ったらセックスをするだけで…デートなんて、そんな。

「わ、私…今日はバイトでテキトーな服で来たから…っ」
「んじゃあ俺が服買ってやんよ、それでいいだろ?」
「ええっ?そんな、悪いよ…」
「俺があんたにプレゼントしてえの、俺の言うこと聞けないの?」
「え、えぇ……」

そう言われてしまうともう私は何も言えない。スタンの彼女になる時、明確なルールを決めたわけではないけど、私は彼の言う事はなんでも聞くと言った。だから彼の命令であれば、私はなんだってする。
その後ブレイクタイムを終えてバイトに戻り、スタンは適当に時間を潰してくると言ってカフェから離れいく。午後のカフェは結構忙しくて、2時間なんていうのはあっという間に過ぎ去ってしまった。バイトが終わってロッカーで今日着てきた私服に着替えるのだけど、姿見に映った自分に絶望する。なんて地味なんだろうって。スタンと会う時は彼に見合うように派手な服を着たり派手なメイクをするのだけど、バイトに行く時は普段通りの私だ。髪色も変えてピアスも空けてきた私に最初バイトの人は驚いていたけど、それ以外は大して変わっていなかったので軽いイメチェンだと思われた。正直こんな恰好で今からスタンとデートだなんてありえないけど、彼を待たせるわけにもいかないので私は思い切って店を出る。外には既にスタンが喫煙スペースでタバコを吸って待っていた。

「お、お待たせ…」
「へえ…」
「え、な…なに?」
「いんや、なんでも。んじゃ行くか」
「う、うんっ…」

くいっと腕を出され、私は少し躊躇ってから彼の腕に自分の手を通す。日中こうやって肩を並べて歩くことなんてないから考えてなかったけど、そうだ、私はスタンと人通りが多くて薄暗くない街を歩いている。辺りの人間の視線が、一斉にスタンに集中しているのが分かった。

「やだ、今の人かっこいい」
「モデルみたい」

私は今、スタンリー・スナイダーと肩を並べて歩いている。今まではほとんど2人きりになる状況しかなくて少し麻痺していたけど、彼のお顔は性別も疑うほどの美しいご尊顔なのだ。そんな彼と一緒に歩いていて注目されないわけがない。そして隣にいる私は、完全に不釣り合いだろう。

「なあ、あんたのよく行く洋服店は?」
「(どうしよう、これじゃあスタンが笑いものに…)」
「……名前?」
「(やっぱり私は今日は…いやでもスタンのデートを断るなんて…)」
「おい、聞いてんの?」
「ぶぇっ」

悶々と考えていた時、私の頬がなにかに圧迫された。両頬をスタンの大きな片手で掴まれ、グっとこちらに顔を向けられる。一体何事かと思ってみれば、スタンは不機嫌そうに私を見つめていた。どうやら彼が話しかけているのに完全無視してしまっていたみたいで、私は頬を圧迫されながら魚のようにぱくぱくと口を動かす。

「ぷっ…あはは!So cute!」
「ちょ、ちょっと…笑わないでっ!というか手、はなしてっ」
「いやー悪い悪い、あんたがあまりに話聞いてねえから」
「そ、それはごめんなさい…」

さっきまで不機嫌だったスタンの顔が一瞬で爆笑に切り替わり、なんとも不細工な顔を見せてしまったことに羞恥で顔が赤くなる。

「でもカワイイ顔見れたから許してやんよ、つーか俺といんのに他の事考えるとかいい度胸じゃん?」
「ち、ちがっ…」
「あんたは俺のことだけ考えてればいいんよ」
「え…」

そんなこと、言われなくたって私はずっとスタンのことしか考えていないよ。でもそれをあなたが言うの?私はいつだって、何をする時だってずっとあなただけなのに。

「で、あんたのよく行く洋服店ってどこ?俺はあんまファッションとか興味ねえし女の子の行くとことか分かんないからさ、教えてくれねえと困んぜ」
「え、そうなの…?」

先ほど聞き逃していた質問をもう一度リピートするスタン。どうやら本当に私に服を買ってくれるらしい。けれどもそれよりも、スタンがこういうことに不慣れなのが驚きだった。確かにそこまでファッションに拘りがないっていうのは察していたけど、彼が着ればどんな服だって高級ブランドのように見えるのでそうなるのも理解できる。それよりも、彼ほどガールフレンドが沢山いてこういうのに不慣れというのはなんだか不思議な話だった。

「なに、俺がほいほい女に服プレゼントするような男に見えた?」
「え、いやっ…そんなことは、ない………よ」
「すっげー思ってんじゃん、あんた分かりやすすぎ」
「だ、だって…」
「あんたが初めてだよ」

そんな台詞、嘘だってわかってるのに。それでもとてつもなく嬉しく思ってしまう私は究極のバカだ。スタンはずるい。こうしてどんどんと私をあなたの沼へと落としていくんだ。
その後洋服店の並ぶ通りへと繰り出し、スタンは私へと何着かの服をあてがって真剣に悩んでみせた。そうして決まったのは、いつも私が彼に会う時の服とはかけ離れた――薄いスカイブルーの色をしたワンピース。地味でも派手でもなく、とてもシンプルで可愛いものだったけど……スタンの好みとは違うのではないかと少し不安に思った。でもスタンは笑って「最高に似合うよ」と言ってくれる。私は彼からそう言葉をもらう度に、真っ赤になってしまうのだ。

「あんた、兄妹はいんの?」
「え、うん……兄がいる、わ」
「ふーん、確かにあんた妹感あんよね」
「そ、そう…?」

ワンピースに合う靴やアクセサリーなんかもスタンは購入していき、私は全身彼の選んだものに包まれた。そして彼に連れられるままとても素敵なレストランへと訪れ、2人でディナーを楽しむ。でも今までスタンとこんなレストランへ行ったことも無ければ、街を歩くことすらしたことなかった私にとって、今日は色々と頭の混乱してしまう事だらけだ。

「急にどうしたの?」
「いや、そういやあんたのこと何も知らねーなって思っただけ」
「そ、そんな…私のことなんて…」
「あんたのそーゆー自分を卑下するとこ、よくないね」
「え、えぇ?」
「もっと自信もちなよ、あんたは十分素敵な女性だぜ」

なんだか今日のスタンはおかしい。いつもなら私の事に対してなにも質問なんてしてこないのに。それに私のことなんて聞いても、スタンにはどうでもいい事じゃないの?なのに、何でそんなこと言うんだろう…。

「その服、やっぱあんたに似合うね」
「あ、ありがとう…でも、スタンの好みじゃないんじゃない?」
「なんで?すっげーばっちりハマってんよ、今すぐ脱がせてぇくらい」
「っ!ぬ、脱いだらダメじゃない…!」
「男が服を贈る意味、あんた知ってる?」
「え?知らない…」
「”その服を脱がせたい”」

ニヤリと、スタンの口角が上がった。煌びやかなレストランの背景にとても良く似合う彼自身が今私の目の前に居て、私に甘い言葉を囁く。こんなの、勘違いしてしまう。

「あんたほんとカワイイね、真っ赤だぜ」
「スタンが変なこと言うから…」
「ソーリー、でもマジだぜ、あんたの色んなとこが見たい」

どうして彼はこんなにもペロっと、息を吐くように私の心臓を掴む言葉を毎回言うんだろう。お陰で口に含んだロブスターの味がまったくしないじゃないか。

「もっとあんたのこと聞かせな、なにが好きとか、嫌いとか」

やっぱり今日のスタンは、どこかおかしい。



▼△▼




「スタン、きみ僕の睡眠剤を勝手にくすねただろう」
「え?」
「あ、」

スタンとのデートは夜まで続き、私は彼の仮住まいのアパートに訪れていた。そしてその明け方、目が覚めるとベッドに一緒に眠っていたスタンの姿が見えない。スマホを見ても特に連絡は無かったので、近くのコンビニにでも出かけたのかなと私は寝起きの頭でぼーっと考える。いつもならこのまま即帰宅するのだけど、今回はスタンに「ちゃんと送るから勝手に帰んな」と釘を刺されていた。
どうしようかなとベッドに寝転がっていると、どんどんと目が覚めてしまい上体を起こす。もう何度か来た彼の部屋だけど、やっぱりどこか落ち着かない。うーんと考えてハッと閃く。そうだ、朝ごはんでも作ってみようかな。そういえばスタンが前に「好きに冷蔵庫のモン取っていいぜ」って言ってた。そうと決まればキッチンの方へと向かい、私は冷蔵庫を開けて中身を見てみる。…けど、思った以上に何もなかった。うーんと悩んでいたその時だった。スタンではない男の人の声が聞こえ、そして私たちは目が合う。

「おや君は、スタンのガールフレンドかい?」
「えっ…あ、は、はいっ!あ、えっと、ごめんなさい!」
「どうして謝る?どうせ彼が連れ込んだんだろう、それにしても彼はどこかな?」
「え、えっとスタンは…起きたらもう居なくて…多分、近くに出かけたんだと…」
「へえ、君を一人部屋に置いて?」
「え、あの……」

玄関から入ってきたのはスタンではなく、彼のルームメイトだと思われる青年。いいや、私は彼を知っている。ミドルスクールもハイスクールもずっとよく一緒にスタンと居て、更には学園一の秀才と謂われていた彼、Mr.ゼノだ。
スタンが今ここに居ないことを伝えると、Mr.ゼノは何故か不思議に私をじーっと見つめる。

「彼が誰かを残して部屋を出るなんて……、君はよほど信頼されてるんだね」
「へ?」
「それより、お腹でも減っているのかい?」
「あ、いやこれは…せっかくだしスタンに何か朝ごはんでも作ろうかなって…」
「おお!丁度いい、先ほど食材を購入したところなので是非僕の分も君が作ってくれると助かる。僕はシャワーを浴びたいんだ」
「え、ええ…いいけど……いいの?」
「僕から頼んでいるんだ、いいに決まっているだろう」

まさかの彼からのお願いに、私はお邪魔している身なので「OK」と返事するしかなかった。彼は手に持っていたスーパーの袋を受け取り、そしてそのままさっさとシャワー室へと向かってしまう。……なんだか、変な感じになってしまったぞ。でもスタンもそろそろ帰ってくるだろうし、私は早々にキッチンに向かって朝食の準備を始めた。
フルーツにサラダに使えそうな野菜と、冷蔵庫に卵とソーセージ、あとパンもある。うん、これなら十分な朝食ができそうだ。丁度その時スマホが鳴って、一件のメッセージが送られてきたのに気づく。スタンからだ。内容を見ると『今コンビニ居るけどなんか欲しいのある?』と書かれていて、私はすぐに『私も今丁度朝食を作ってるの、スタンの分もあるよ。よかったらミルクを買ってきてくれない?』と返事を送る。するとすぐに『OK』と簡潔な返事が返って来た。……なんだか、一緒に暮らしてるみたいなやり取りだ。顔がにやけてしまう。

「随分嬉しそうだね」
「ひゃっ!?」

だらしなく顔を緩ませているところに、丁度Mr.ゼノがシャワー室から出てきてそう言った。早っ、もう終わったの!?…って、やだ、今の見られてた?恥ずかしい!

「朝食の出来はどうだい?」
「あ、えと、もうすぐでできます…っ」
「そういえばまだ自己紹介してなかったね、僕はゼノ、スタンのルームメイトで幼馴染だよ、よろしく」
「あ、私は名前……こちらこそ宜しく」

今更ながらハンドシェイクを交わし、ゼノは二コリと微笑んで見せる。いつも遠巻きでしか見ていなかったけれど、思ったよりも優しそうな人だ。なんだかいつもスタンと一緒に居ては不敵に笑っていたので、少し怖い人なのかと思っていた。

「あれ、君……よく見たら、ハイスクールの時によくスタンを見つめていた子じゃないかい?」
「えっ!?」

突然のゼノの言葉に、私のオムレツを焼く手がピシッと石のように固まった。「焦げてしまうよ」と言われてすかさず手を動かすけれど、完全に動揺して震えている。今彼はなんと言った?私のことを知っている?そんな、一度も話したことなかったのに?いいえ人違いですと言いたい所だけど、彼の真っ黒な目に見つめられて完全に見透かされていると観念した。

「ど、どうして…!」
「記憶力は良い方でね、なんとなくだけど君を見た記憶があるよ」
「そんな、バレて…って、もしかしてスタンにもっ?」
「さあそれはどうだろう、彼を見つめる女子は大勢居たからね」
「私、そんなに目立ってた…?」
「うーん、そうだね…僕がどうして君を覚えていたのか、それは、あまりに君が純粋に彼を見つめていたからだろうか」

顎に手を当てて考えるように答えるゼノに、私の顔は真っ赤に染まっていく。私どんな顔して彼を見つめていた?そんなの自分で分かるわけない。でもゼノの記憶に残るほどだなんて、ああなんて恥ずかしすぎる。

「おお、まるでリンゴのように真っ赤だね」
「み、見ないでっ…!」
「ただいまーー……って、は?あんたら何してんの?」

ゼノが私の顔を覗こうとぐいっと顔を寄せてきた時だった、丁度スタンが帰ってきてキッチンにいる私たちに目を向け驚いた表情で言う。そういえばスタンにゼノに会ったことを言うの忘れていた。

「おお!おかえりスタン、丁度君のガールフレンドに朝食を用意してもらっていたところだよ」
「あーー…そう、随分仲良さそうじゃん」
「彼女の反応がなかなかに面白いものでね、ついからかってみたくなったんだよ」
「ふーん、それには同意だわ、つか帰って来んなら連絡寄こせよな」
「君だって度々連絡を忘れるくせに、よく言うよ」
「あーそうだっけ?」

まるで流れる川の水のように会話をする2人は、やはり幼馴染とあって慣れているように見えた。スタンがここまで表情を崩して喋っているのをあまり見たことがなかったので、私はなんだか心がくすぶられる。

「朝メシできた?」
「あ、うんっ、後は盛りつけるだけ…」
「あんたの手作りとか初めてじゃんね」
「え、あ…そうだね、確かに…」
「楽しみ」

ニッと笑みを見せられ、私の心臓は跳ね上がる。もう作ってしまった後だけど、今からそんなハードルを上げないでほしい。「普通の朝ごはんだよっ」と一応伝えるけど、スタンは期待の眼差しを止めなかった。私はドキドキしながら朝食を皿に盛りつけ、ダイニングテーブルに並べていく。スタンの買ってきてくれたミルクを3つのコップに注ぎ、私たちのモーニングが始まった。

「このオムレツ、とても美味しいね」
「あ、それは私の親戚にいるスパニッシュ直伝のレシピなの」
「なるほどスパニッシュオムレツか、いい味だ」
「良かったらレシピ教えようか?」
「それもいいけど、是非君がまた作りにきてくれると嬉しいね」
「えっ」
「オイオイなに堂々と朝っぱらから人の彼女口説いてんよゼノ」
「おや、気に食わないかい?これまでの君のガールフレンドが僕に言い寄って来ても何も言わなかったのに」
「うっせーよ」

ゼノの言葉にスタンはむくれるように顔をフンと反らす。…やっぱり、今までもこの家にガールフレンドが来ていたんだ。ゼノもスタンほどでは…といったら失礼だけど、一人の男性として素敵な姿をしている。それにとても紳士だし、目移りしてしまう女性の気持ちもなんとなく分かった。

「でも彼女、名前は今までのガールフレンドの中で一番キュートだね、気にいったよ、是非僕とも仲良くしてくれ」
「え、ええ勿論、私でよければ…」
「ゼノ、あんた何がしたいんよ?」
「別に?ただ彼女とお友達になりたいだけだが?」
「ふーん」

なんだか先ほどからスタンの機嫌があまり良くない。やっぱり私が居ない方がいいのではないだろうか…。彼、ゼノともあまり会っていないと言っていた。せっかくの幼馴染との時間をお邪魔してはいけないのでは無いだろうか。

「ふう、ご馳走様、とても美味しかったよ」
「ああ、すっげーうまかったよ、ありがとな名前」
「そんな、どういたしまして……って、えっ!もう食べ終わったのっ?」

とかなんとか思っていたらいつの間にかゼノとスタンのお皿には何も乗っていなくて、朝食はすっかり彼らのお腹の中に収まっていた。対して私のお皿にはまだまだオムレツもフルーツもパンも残っていて、慌てて食べ物を口に含む。お邪魔してはいけないと思っておいてなんてことだ。

「んな焦んなくていいよ、あんたのペースで食べな」
「ご、ごめん…」
「謝んなって、あんたが食べてるとこリスみてぇでずっと見てられっから」
「りっ…?恥ずかしいので、見ないで…」
「やだね」

悪戯に笑って、スタンは食べ終わった後もずっと視線を向けながら私の食べている姿を見つめ続けた。途中から食べているものの味が全然分からなくなってしまい、ただただ皿を平らげることに専念する。
ゼノはこれから少し作業をして寝ると言って部屋に戻ってしまい、私とスタンは再び二人きりとなった。いつの間にか不機嫌だった彼の機嫌も、今は良さそうで安心する。

「ゼノって、とても素敵な人だね」
「はっ?あー……まあ、自慢の幼馴染だかんね」

あれ、いま一瞬不機嫌な顔になったのは……気のせい、かな?

ねえスタン
アナタは今、なにを見てるの――?







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