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『彩季、中途半端なことするならやめなさいよ』

「何の話?」

『私の部屋で、何してたの?』

「・・・・・・少し、本を借りただけ」

『妖関連?』

「・・・・・」

『急に、会合に行きたいとか言うし・・・どうしたのよ』

「・・・・・・・」

「何だ、彩季も興味持ったのか?」

『・・・お父さん』

「いいじゃないか、明翠。彩季も、学びたいならそうすればいい
 冬真の部屋にも色々置いてあるから試してみるといい」

『・・・・・』

「ありがとう、お父さん。わからないことがあったら、聞いていい?」

「もちろん。明翠の方が、詳しいかもしれないけどね
 次の連休には、冬真も帰ってくるから何でも聞くといい」

『・・・・・』

「明翠は、彩季が心配なんだろう?大丈夫だよ、彩季も無茶はしないでくれよ?」

「わかってる!」

ここで彩季を止めたところで
きっと意味はない
余計に反抗して無茶をするかもしれない

悪いことじゃない
それでも、少し前から感じる嫌な予感が
むずむずと動いた



『・・・あ、いらっしゃい』

「お・・お邪魔します。えっと、彩季・・さんの、お姉さん?」

『えぇ、明翠と言います。彩季がお世話になってるみたいで』

「いえ、こちらこそ」

『少し待ってね、呼んでくるから』

妖絡みで出かけようと玄関へ迎えば
彼氏君と鉢合わせてしまった

誰にも会うつもりはなく
ワンピースに羽織なんて、中途半端な服装だったせいか
向こうも不思議そうにしていた

『ゆっくりしていってね』

「もう明姉は、さっさと仕事に行ってよ!!」

『恥ずかしいの?』

「は、恥ずかしくない!!」

『照れちゃって、かわいいわねぇ』

「明姉も、もしかして的場さんとデート?」

『違います。変なこと言わないで・・・じゃぁ、いってきます』

「!!」

『・・・・・』

この人、やっぱり・・・


玄関を出てすぐのところにいた雪に声をかける

『あの彼氏君、見えるわけじゃないけど』

「あぁ、私に気づいているようだったな」

『やっぱり・・・感じ取れるのかしらね』

あぁ、また嫌な予感がする




「お姉さん、近くで見ても綺麗な人だね」

「でしょう?あれで、彼氏いないなんて本当に、仕事馬鹿なんだよ」

「その仕事って?」

「えっと、その見えないものを祓うみたいな?」

「・・・彩季が見えるってやつ?」

「そう。匠がなんとなく感じるやつ」

「ふーん。」

「それでね、明姉には、的場さんっていう幼馴染がいるんだけど
 全然くっつかなくてびっくり・・・いい加減付き合えばいいのに」

「何、両思いなの?」

「たぶん?仲が良すぎてよくわからない」

「そうなんだ。・・・彩季も、その仕事の勉強してるんだ」

「え・・うん。最近、少し始めたの!!見る?」

「随分、古いな・・・何?先祖代々の由緒ある本?」

「まぁ、そんな感じ」

「すごいな、本当にこういうのがいるんだ」

「うん」

「さっき、玄関先に何かいたよね?見えないけど、なんかいるなって」

「あぁ、あれは明姉の式みたいなもので」



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