18


捻挫というほど酷くなかったので
あまり時間をかけずに痛みも引き、普通に歩けるようになった

翌日が、月曜日だったこともあって1日学校を休んだ

柚晴には、ちょっと足を踏み外して坂を転がったと話した


あの時、無意識に術を使った
前の時も

・・・きっと、何か術を発動させる何か条件があるはずなのだ
禁書がどこかにきっとあるはず
蔵か、祖父の部屋か・・・当主の父の部屋か

聞いたところで教えてもらえるとは思えず
しばらく、探してみることにした

けれど、一向にそれらしき文書は出てこない
代々の当主に口頭で伝えるとか、そういう類なんだろうか

方法すらわからないのに
どうして自分が使えるのだろうか・・・

“――――――――――”

『・・・・・・・・・・』

父には、聞けず
兄に連絡を入れたけれど、知っているはずもなかった



『お父さん、呼んだ?』

「明翠、ここに座りなさい」

部屋に入って、父の正面に座った
禁書を探していることがばれたのだろうか

「本当に、大学には進学しないんだね」

『しないわ』

「なら、卒業してどうするつもりなんだ?」

『的場一門に入る。祓い人してやっていくわ
 生活費がやりくりできなければ、アルバイトでもするつもり』

「明翠が、祓い人でやっていけないのだとしたら、うちはとっくに貧乏だよ」

『・・・』

「・・・はぁ。わかった」

『ありがとう、お父さん』

「せっかくなら、静司くんのところに嫁に行くのはどうだ?
 その方がお父さんとしては、安心なんだが」

『・・・・・・・・・・・・・は?』

「仲も良くて、力もある。幼馴染なこともあって互いの事情も詳しいだろうし」

『・・・・・・・・・・・・・・』

「もともと、明翠を嫁に欲しいと言っている家はあったんだが
 本人は、興味がなさそうだからと保留にしていたんだ。
 この際、嫁いでしまうという手もある」

『・・・・・・・・勝手なこと言わないでよ
 私は、まだ嫁がないわ!家に入って家事をやれって?嫌よ、そんなの』

「相手が、静司くんでも?」

『大人しく家にいるなんて、絶対嫌』

「でも、明翠は的場に入りたいんだろう?」

『それと、これは、話が違うの』

「違わないよ、明翠。
 明は、静司くんが頭首になることを見越して、支えたいと思ってるんじゃないのか?
 右目のこともあるし、的場は力はあるが裏では色々と言われている」

『・・・・・・・・・・』

「静司くんに許嫁が決まったら、どう思う?
 明並みとは言わないだろうけど、それなりの力のある人が来るだろうね」

『・・・・・・・・』

「随分と都合のいい話をしてるのは、わかるが。・・・可能性があるのに捨てるのはもったいない」

『・・・・・・・』

「嫌だと、思うなら素直になった方がいいよ」

『・・・・・っ』

「・・・・・・・・・・うちでは、明翠を守れない
 だから、明が一門に入るのは賛成だよ。・・・静司くんは、父さんみたいに
 明翠と距離を取ったりしなかったろ? 無理になんて言わないし、
今決めろと言っているわけでもないから。考えるだけ考えてほしい・・・
まぁ、そう言う話が出てるってことだけは、覚えていてくれると嬉しいよ」

『・・・・・・・』

「冬真にいい加減、お前と向き合えって言われてね
 ・・・それと、ここ最近、何かを探しているようだったが
 もしかして、これだったか?」

『・・・・』

「椿の禁術についての書物」

『!』

「・・・この前、的場の家に泊めてもらった時、何があった」

『・・・・・・突然出てきた妖に驚いて、・・・それっ・・それ・・・・・で』

「使ったのか」

『・・・・・・・・・・・・』

「・・・・・・・・・」

『未遂・・・だ・・・けど・・・・・・・・・・・・陣が』

「・・・わかった。それで、禁書を見てどうするつもりだった」

『・・・・・私、使うつもり・・・なくて』

「うん・・・」

『・・・使い方も知らなくて・・・・・・だから、・・・条件を知り・・・たくて』

「・・・・・・・・・使い方を知らない?」

『うん』

「2度も使って?」

『・・・・・・うん』

「・・・・・そうか。・・・・・・明翠を信じるよ
 本当は、だめなんだが。方法を知っていた方が安心するだろう?」

『・・・・・・いいの?』

「いいよ、ただし。ここだけにしてくれよ?
 まだ、冬真にも教えていないんだから」

『・・・・ありがとう』



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