ルリアはなんとか本選当日に退院をもぎ取った。まだ貧血状態であるため、運動は禁止されているものの、普通に生活する分には支障ない程度まで回復した。
 てくてく、と会場まで歩く。今日は雲一つない、とまではいかないが晴天だ。しばらく病院でインドアな生活を送っていたルリアには少々眩しいが、本選に相応しい日和である。会場は思っていた以上に大きく、里の一般人から各国の大名や里長なども来ているようだった。

「ルリア!!!」
「サクラ…」

 会場に入って思いのほか混雑していて、中々空席を見付けられずにふらふらしていた。そんなルリアを見付けたのはサクラで、すぐになみなみと涙を浮かべた。サクラは二次試験のことを思い出しているのだろう、次々に言いたいことが浮かんでは、言葉にならず嗚咽に吞まれている。

「心配かけてごめん。なんとか無事だよ」
「私たちのこと、庇って、私、お荷物で、ルリアに、無茶させて」
「サクラは悪くないよ。私も中忍試験にあんな大物が潜んでるとは想定外だった」
「……ねぇルリア、酷いこと、されてない?」

 深刻な顔をして訪ねてきたのはいのちゃんだ。いのちゃんはルリアの立場が木ノ葉において危ういことを知っている。拷問などされていないか、不安になったのだろう。

「起きたら病院で、ずっと治療を受けてた。何とか今日退院をもぎ取って来たよ」
「良かった」

 いのちゃんまで涙ぐんでしまい、ルリアは戸惑う。こんなにも心配を浴びたことは今までなかった。


 第一試合はなんとナルトが勝った。第二試合はサスケと我愛羅の予定だったが、サスケが来なかったため最後に回され、他の試合が繰り上げで実施されることになった。
 第三試合は砂の傀儡使いと油女シノだったが、傀儡使いは本気を出さずに敗北した。第四試合は砂の風遁使いとシカマルくんで、シカマルくんが優勢に見えたものの決定打に欠けたため棄権した。
 そして、サスケはギリギリ間に合った。カカシはこちらへやって来て、ルリアの姿を認めると目を弓形にして笑った。心底安心しきったような笑みだ。以前までのどこか警戒したような距離のある笑みとは違う。それがなんだかこそばゆかった。




ALICE+