ため息ためて風船つくろ

 翌日里内のとある橋に4人は集結していた。サスケはいつものように澄まし顔、サクラは寝坊をしたようでブローを泣く泣く諦め、ナルトはサクラ同様寝坊したようだが歯磨きや洗顔など当然して来る準備すらしてこなかったようでサクラの汚い!というツッコミが飛んでいた。
 いつものように当たり前に遅刻してきたはたけカカシは、人生という道に迷ったと言い訳し、朝から元気なナルトとサクラにツッコまれていた。

「いきなりだが、お前達を中忍選抜試験に推薦しちゃったから」

 驚く4人だが、どうせ んなワケないでしょーが と否定されるだろうと思ってごまかしは聞かないとそっぽを向いた。しかしカカシがこちらに差し出す4枚の書類には確かに志願書とある。
 受けたい者だけ志願書にサインをして明日の午後4時までに学校の301に来るように言い残してカカシは消えた。3人に別れを告げたルリアだけがカカシの後を追った。

「はたけ上忍!」
「なぁに、ルリア」
「どういうおつもりですか。私の素性は火影様や猿飛上忍から耳に入っているはずです」
「あー、そういう事ネ。ぶっちゃけた所、ルリアの実力が知りたいって言うのが第一。ルリアが第七班に加わってから任務はずっとDランクだったしね。良い機会じゃない」
「…私は紛いなりにも上忍でした。今更中忍だなんて」
「でも、ルリアがウチの班を助けるっていうのは上に良いアピールになる。実力を示すんじゃない、誠意を示すんだ。忍にとって額当てがどれ程大きな意味を成すかは忍にしか分からない。一線を入れる覚悟も、忠誠も、新たにつけることも」
「…分かりました。それと、」

 砂の 砂漠の我愛羅という少年 嫌な気配がしました。それだけ言い残してルリアは姿を消した。はたけ上忍にも言われただろう。誠意を示すんだ。それがこの里で生きていくための手段になる。

 翌日 ルリアは3人に指定された居酒屋の前で待ち合わせをし、4人揃ってアカデミーに向かった。サクラの目の下には隈があって、少し調子がおかしそうだ。
 向かった301の教室は何故か幻術がかけられていて2階に存在した。そして301の教室に見えているそこに、二人の少年が立ちふさがっていた。中忍は部隊長レベル。任務の失敗や部下の死亡はすべて隊長の責任になる。どうやら彼らは彼らなりの優しさで、受験者を独自のふるいにかけているようだった。

「オレは通してもらおう。そして、この幻術で出来た結界をとっとと解いてもらおうか。オレは3階に用があるんでな」
「ほう…気付いたのか貴様」
「サクラ どうだ?お前なら一番に気付いているはずだ」
「え?」
「お前の分析力と幻術のノウハウは俺たちの班で一番伸びているからな」
「フフ、もちろんとっくに気付いてるわよ。だってここは2階じゃない」

 幻術の結界は見破られたことによって崩され、本来の姿になった。
 最後のサクラのセリフには今までの覇気のなさが嘘のように自信に満ちあふれていて、サクラは自信を失っていたのかと分かった。それを好きで、尊敬しているヒトに肯定されることによって取り戻し、こうなったという訳か。ルリアはそれにふむ、と声を漏らし感心した。
 幻術をかけていた二人の内の片方が、体勢を低くして蹴りをサスケに繰り出す。すかさずサスケも蹴りで応戦しようとするが、その間に入って相殺したのは先程コテンパンにされていた眉毛の太い全身緑タイツの少年だった。彼のチームメイトが不満げに 下手に注目をされて警戒されたくないと言ったのはお前だと苦言を申し立てる。だって、とこぼした少年はちらりとサクラを見て頬を染める。

「僕の名前はロック・リー。サクラさんというんですね。僕とお付き合いしましょう!死ぬまで貴方を守ります!」
「絶対、嫌、あんた濃ゆい…」

 がくりと方を落とすリー、ハハハと笑うナルト。そんな輪から少し離れた所で静観していたサスケとルリアは側に寄って来た男に声をかけられた。リーに文句を言っていた人だ。真っ白な目。まさか、日向の?

「おいそこのお前、名乗れ」
「人に名を聞くときは自分から名乗るもんだぜ」
「お前ルーキーだな。年は?」
「答える義務はないな」

 そこまで会話すると不毛だとお互いに悟ったのだろう。二人はくるりと背を向けて反対方向に歩き出す。
 そんな中、ナルトはまたサスケが名前を聞かれて、自分はノーマークだと嘆いていた。
 ノリノリなサクラに引き連れられ、4人は301を目指して歩き始める。その背後の物陰で、先程まで同年代に見えたアノ幻術と蹴りの少年二人は変化を解いて本来の姿に戻った。

「今年の受験生は楽しめそうだな」
「俺たち試験官としてもね」

 そんな怪しげな会話があったことなんて、誰も露知らず。


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