星とは天にあるものだから

 世界の東の果て、天華という場所があった。天華統一を目指す三国が争いを繰り返し、土地は血を吸って荒れていった。花の故郷である極小の弱国 秦国は天華より少しばかり北にある痩せた土地にあった。更に北に進むと斉帝国という軍事帝国があり、漁夫の利を狙って天華の方をギラギラ見張っていた。
 しかし花は"秦国"を知らない。というのも、花が幼い頃に三国のひとつ 煌帝国が天華を統一した。その後煌帝国は領土を伸ばすための戦争を沢山して自国をより強大なものにしていった。そして秦国に手を伸ばそう、という時に斉帝国が介入して戦争になったそうだ。秦国に戦意はなく、降伏する代わりに自治権を貰えればよかったというのに。
 戦いに巻き込まれたとても小さな国は一夜にして火の海になった。戦争の結末は煌帝国の勝利で、煌帝国は斉帝国まで手に入れた。世界地図は変われど人は変わらず。やがて生まれた花には分からないことだが、生き残りの大人たちは戦火に怯えているし、元斉帝国の人たちは煌帝国を討ち取る機会を窺っているように思えた。

 戦争のせいで秦国は自治権を奪われ煌帝国になった。花は煌帝国の教育で煌帝国の人間に育ち始めていたが、なんとか周りの大人たちが秦国としての矜持を忘れさせなかった。元々花の母方の家系は秦国でも有数の名家で、誇り高い血を継いでいるのだとよく言い聞かせられた。
 花が13になった年のこと。斉帝国が動きを見せた。その反乱の折に花は故郷を、家族を失った。やがて花は売り飛ばされ、花街に入れられた。幼いだけあって客を取ることはなかったが、その花街は麻薬の密売地で上のずーっと偉い人に命じられて、極上の地酒だといって麻薬を浴びせていた。
 大きくなって花は美麗な女郎になった。女郎としてみんなを纏めるようになってから花にはこんな仕事でも誇りを持てるものだと感じていた。けれど同時に秦国の名家の娘としての高く強固なプライドがこれで良いのかと訴えていた。葛藤が生まれて花はそれに苛まれた。
あとがき
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