美波はこれまでの人生を振り返っていた。これが世に言う走馬灯というものか、と少し感慨深くなるくらいに美波は冷静だった。
　ごく一般家庭に生まれた美波は健やかに幼稚園 小学校 中学校 高校 短大と進んで看護師として病院に勤務していた。28歳になった今、スキルアップのためにまた他病院に転勤しようか、いっそ婚活でもしてとっとと結婚してしまおうか悩んでいた。
　ふっと現実世界に戻ってくると美波は意識を失ってしまいたくなった。仕事終わりの飲み会からの帰り道、美波はくらりと立ちくらみがしてその場にしゃがみ込み、こめかみに手を当てて目を閉じた。