一度、アンジェリーナがリゼットに尋ねたことがある。「どうしてそんなにジョージに突っかかるの? 向こうから言ってきたって、無視してしまえばいいのに!」と、それはまあなんとしてもリゼットに相手にしてもらいたいはずのジョージにすればすっごく残酷な提案付きで。私は単純に、ジョージがああやってしかリゼットの気を引けないように、リゼットも素直になれないんだとばかり思ってた。リゼットはそれなりに人気があるんだけど浮いた噂はそうなかったし、それこそいつからかまではジョージとそういう雰囲気だった。だから、自分の気持ちの変化に気がついて、そんな時にジョージからつらくあたられて、でも初めての恋だから勝手がわからなくて!なんてことだとばかり。
「ううん、違うのよ。たぶん最初に突き放したのは私だわ。先に強く当たったのは、私」
「え!?」
「そんなに驚くこと? アリシア」
「い、いや、あなたのこと知ってる人からすれば、とっても驚くことだと思うわよ……」
だってリゼットは、少し気が強いけれどそれはそれとして温厚で、人と人の間を取り持つのが得意なような、賢い女の子だ。私とアンジェリーナが喧嘩したってリゼットの手にかかればすぐに元サヤに収まっちゃった、なんてこともあった。
「ううん、そうね。たぶん、みんなの中の私と、実際の私の間にふかーい溝があるのよ」
「何言ってるの! あなた嘘つくとか方便を使うことに関してはとっても苦手じゃないの」
「そ、それは否定しないけれど……そういうことじゃないのよ」
「じゃあ、どういうこと?」
アンジェリーナが突っ込むと、リゼットは困ったような顔でしばし逡巡した。
「私、ホグワーツに入る前は、少年のような女の子だったのよ。って言って、みんなは信じる?」
「ええ!?」
こうはいうものの、嘘の下手な彼女のことだから冗談ではないのだろう。ただの例え話でも。でも、はしゃいで走り回るようなこともなければ、私やアンジェリーナのようにクィディッチにかまけているようなタイプでもない、お勉強に、読書に、おしゃべりに興じる姿のよく似合うリゼットが少年のような格好をしているのはいまいち想像がつかない。
「ホグワーツに入る前まで、っていうのは正確じゃないわね。見た目はともかく中身はずうっと男の子みたいなまんまなの。態度だけ、動作だけでも頑張って女の子らしくしてたのよ」
「とてもそうは見えないわ……」
「それはよかった。でも、そう。そうね、私がこんなんだから、ジョージと仲良くできなくなってしまったのよね」
女の子として扱われるの、嫌いだったの。今はもう、いいの。だからわざと私自身そう振る舞っているの。
リゼットが複雑そうな顔でそう言うものだから、私はこれ以上話すのを強いるのが申し訳ないような気持ちになってしまう。思えば、ジョージはフレッドに比べたら(あくまで比べたら、だけど)幾分か女の子に対して紳士的というか、気をつかう印象は受ける。リゼットはそれが嫌だったんだろうか? 私に言わせてみれば、双子なんて他の男の子たちよりよほど雑に扱ってくる印象が否めないのだけど。というか、女の子扱いが発動されるのはあくまで顔見知り程度の相手だけで、私たちのような「友達」にはなんというかかなり_____適当だ。時には悪戯に巻き込まれるくらいには。
「子どもなのよね、私。男女で親しくしてたらどうこう言われるのも嫌だったし、……ジョージが、私を友達としての前に女の子として見るのが嫌だったんだ」
男なんてみんな子どもだわ! そう憤慨していた時が私にもあったっけ。リゼットの言葉はそんな懐かしい記憶を呼び起こさせて、それから、変わっていくということがどれだけ彼女を傷つけたのか垣間見たような気がした。
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