「シリウス、私はスリザリンに入るよ」
私たちは双子だけど、一応は私がお姉ちゃんなんだから。跡取りにはなれないにしても、私がスリザリンに行けば、シリウスがグリフィンドールに入ったって、きっと父さんも母さんも多少は納得してくれると思う。
「ねえシリウス、私はね、シリウスのことも、レギュラスのことも______ここまで育ててくれた、父さんや母さんのことも、好きなんだよ」
だから、できるだけ、みんなが笑っていてくれる選択肢を取りたいんだ。ね、いいだろう?
_____そう言って、俺の片割れはスリザリンに入った、はずだった。
「おはようリーマス! 寝ぼけ眼をこするきみもなんて愛らしいんだ! きみの準備ができたら一緒に朝食をとりたいな、構わないかい?」
じゃあ、朝一で俺たち四人の部屋に乗り込んできたこいつは、一体誰だ?
スリザリンの奴らは反吐がでるほど嫌いだが、俺と、家のことを思って自らの意志でスリザリン生としての生活を望んだ双子の姉_____リズ・ブラックのことは別だ。俺と同じ真っ黒な髪を1つに結わえて、気の強そうな灰色の目をしている彼女は、女子の割に長身であることも相俟って、しばしば俺たちは男の双子だと思われてきたし、あいつも満更でもなさそうだった。家柄よし、顔よし、成績も運動神経もよし、とトントン拍子に揃っていて、更にあいつの方が女子相手の人当たりも随分といいものだから、入学して間もないというのにかなりの女子人気を博していた。俺がグリフィンドールに入ったことで少なからず純血の名家からは嫌味だって言われただろうに、どこ吹く風でスリザリン生とも、俺とも交流しているんだからリズのコミュニケーションスキルの高さには舌をまく。(ジェームズにはよく「君たちは顔ならそっくり美しいのに、どうしてそう小器用さには差が出てしまったんだい?」と言われる。余計なお世話だ。)
そんなリズとはスリザリンとの合同授業の時に顔を合わせれば会話をするし、梟を使ってやりとりもしていた。今まで毎日のように一緒だったから最初は違和感を覚え、堂々と話せばいいじゃないかと言った覚えがあるが、「いくら血縁とはいえ、グリフィンドールとスリザリンの対立はすごいし、シリウスだってスリザリン生は嫌いだろう? シリウスがせっかく手に入れたグリフィンドールでの立場を私が悪くするのは嫌だし、何より君が家に反旗を翻しているのに側に私がいたら信憑性も何もないよ。あと、私はともかく私の友人たちに君は嫌な顔をするからね」なんて言われてしまえば納得せざるを得ないというものだ。だったのだ。それは、3年に上がってほどない頃に覆されることになる。
スリザリンとの合同の魔法薬学の時間、俺は周囲の女子に声をかけられてペアを組むことになってしまい、ピーターはジェームズと組んで、いつもの四人の中でリーマスだけが残っていた。他のグリフィンドール生もいつものメンツで固まってしまっていて、少し困ったようにしているリーマスと目が合った俺は、ペアの女子_____グリフィンドールの子だが、正直誰だか認識していなかった______に断ってリーマスと組もうとした。すると、「遅れました!」と聞き覚えのある声が響いて、緑のネクタイが飛び込んでくる。リズだ。先生から少しお咎めを受けたあと、あいつは余っているリーマスに目を留めて「よければ組んでくれるかい?」と声をかけた。リーマスはスリザリン生に声をかけられたことに驚きつつも、「あ、君、シリウスの_____ 」「そうそう、双子なんだ。君はリーマスだろう? リーマス・ルーピン! 弟と仲良くしてくれてありがとう」「いや、お礼なんて! こちらこそいつもお世話に_____なってます」「あはは、お世話してます、でいいんだよ」なんてやりとりをしている。(恥ずかしいからやめてくれ、と念じていると、ペアの女子から袖を引っ張られた。二人も調合に取り掛かったようだし、と俺も作業に移った)
俺が知っている二人のやりとりはこれだけだったはずだ。何らおかしいことはない。だが、その夜リズから届いた手紙を見て俺は絶句した。
「親愛なるシリウスへ。私は今日、運命の人に出会ってしまったようなんだ。シリウスのよく知っている人だよ。リーマス・J・ルーピン、名前の響きまで素敵だよね! というわけで、明日からアタックしようと思う。協力頼むよ。リズより」
思わずベッドから飛び起きて向かいのリーマスのベッドのカーテンを勢いよく開ける。「急に何するんだシリウス!」と訴えられるが、気にせず「今日、魔法薬学でリズと何話した!?」と捲したてる。
「え、ああ、リズ? 何って………普通に、調合の話とか、君の話くらいだよ。とっても素敵な人だった………女の子たちが夢中になるのも頷けるなぁ。僕、男なのにメロメロになっちゃうところだった!」
「え」
「ね、シリウス、リズってどんなことが好きなんだい? これを機に仲良く……なんて、無理かなぁ」
「……………………アー、俺、寝るわ」
「ええ!?」
君から話を振ってきたんじゃないか! と非難するリーマスの声を背にベッドにもぐる。………何で俺が、こんな微妙な気持ちにならなきゃいけないんだ!
次の朝、俺らの部屋にリズが乗り込んでくることも、それにジェームズもピーターも目を丸くすることも、そんな中、リーマスは満更でもなさそうに頬を染めてリズの手を取ることも______俺はまだ、知らない。
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ちょっと乙女なリーマスとちょっとキザったい女主。この主人公ならリーマスが「僕は人狼だから君を幸せにすることなんかできない! ろくに働く事もままならないんだ!」とか言っても「私が養えば問題ないじゃないか! 家でリーマスが待っててくれたらいくらでも稼げる!」ってのたまって家を飛び出すくらいはしそうですね。
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