あの日の僕らにさようなら
私のお隣には、私と同い年の男の子が二人いる。ダドリー・ダーズリーは太っちょな男の子で、ハリー・ポッターはやせっぽちな男の子。ダドリーはいじめっ子で、ハリーはいじめられっ子。私にはいわゆる幼馴染のよしみでダドリーも強く出られないみたいだったから、ハリーが殴られすぎないようにするのも、食べていなさそうだったらこっそりお菓子を持って行くのも私の役目だった。(それでも、ダドリー軍団の手前というのもあっていじめを完全に止めることもままならないのは歯がゆいものがある。バーノンさんやペチュニアさんのやることには尚更口を出せない) それでも、私はハリーを守ってるんだ、って少なからず思っていた節があった。だってハリーはいつだって私に「ありがとう」って言ってくれたから。
でも、そんな日々も急に終わった。ハリーが名前もわからないような遠くの学校に行くんだって。ダドリーが言ってた。(「ねえ、ハリーは? もしかして、また閉じ込めたんじゃ」「うるさいな!あいつは頭のおかしいところに行ったんだ!」)
それからずうっと経って、丸一年経って。急に消えた不思議な男の子を忘れられないままの夏休み。私はすごく久しぶりにハリーの姿を見たのだ。前のやせっぽちよりは随分と健康そうになって、なんだか少し顔つきの変わったハリー。見た目はちっとも変わってないはずなのに、私は急にハリーが遠くの人間に見えてしまったのだ。私の背に庇われるハリーも、食事を抜きにされてきつそうにしていたハリーも、私に「ありがとう」と弱々しく微笑むハリーも、私はこんなに覚えているのに。彼は私のことなんて知らない遠くのひとになったんじゃないかって漠然とそう思ったら、とてもじゃないけれど彼に話しかけようなんて思わなかった。
結局、知らないうちにハリーはまた学校へと行ってしまうのだ。私の知らないハリーが一体どれだけいるんだろう。今までは私以外に友達のいないような男の子だったのに、もうそんな彼はきっともういないのだ。ダーズリー家で嫌そうな顔をしていたり、教材のようなものを抱えて外に飛び出していたり、そんな彼を休みの間中だけ隣の家から眺める日々。一年経って、また一年経って。バレたら気持ち悪いと思われるんだろうか。彼が私に気付くことはない。私がハリーを守っていると思っていたのも恩着せがましかったのかな。ハリーのためにダドリーの前に立ち塞がるのなんて全然怖くなかったのに、君の前に立つのがこんなにもこわいのだ。一体君は何者なんだろうね、ハリー。
「…………コレット?」
すっかり声変わりしたそんな声、私は知らなかったよ。