※来世設定
※みんなの性別や性格、年齢が変わっていたりします
※夢主は男、黄瀬は女になっています
「あれ、涼?」
俺の声に校門の前に立っていた涼は振り向いた。さらさらの金髪が風に揺れる。
「紗夜!」
嬉しそうに俺の名前を挙げると彼女はこちらに走ってきた。細身の体は見ているだけで心配になる。
「どうしたんだよ涼」
「んふふー。紗夜の部活が終わるのを待ってたんスよ」
涼は少し自慢げに笑った。同級生に使うのはおかしいはずの後輩口調も、涼のだったら気にならない。出会いはそれなりに悪かったけど、今や恋人だ。人生捨てたものじゃないし、何が起きても不思議じゃない。
「ばっか。今日は遅くなるって言っただろ?」
文句を言いながらも歩き出せば、彼女はそそくさと着いてきた。しばらくすると隣に並ぶ。俺を見上げるその目が好きだ。
「言ってたけど、待ちたかったんスもん」
「はいはい。まったくわがままなお姫様だなぁ。…何度も言うようだけど、うちのバスケ部は厳しいの。もしかしたら帰りが10時とかになったかもしれないんだぞ」
「それは法律的に無理っスから」
堂々と言う涼にため息が漏れる。なんでそういうのは覚えてるんだ。まぁ、そうなんだけど。
今日は青峰監督の機嫌が比較的によかったから早めに上がらせてもらった。どうやら今月のグラビアモデルのピンナップ、袋とじは当たりらしい。あの監督は袋とじの中身で機嫌の良し悪しが変わるから、対処の取りようがないのだ。まぁ、バスケの腕は確かなわけだけど。
そう言えば涼もモデルをしているらしい。あんまりそういうのに興味ないから一度も雑誌を手にしたことないけれど、また今度のオフにでも探してみることにしよう。
「そうそう。明日は紗夜の誕生日っスね!」
満面の笑みを浮かべる彼女の言葉に、俺は一年に一度しかない特別な日を思い出した。確かそうだったなと告げると涼は不満げに頬を膨らませる。
「紗夜は楽しみじゃないんスか!」
「いやー。毎年テツヤと家族と過ごすだけだからさぁ」
ちなみにテツヤというのは俺の幼馴染み。影が薄くて、存在を見つけてもらえず、それをいいことに時々真っ黒なことを呟く、中々に腹の底が見えないやつだ。一応同じバスケ部なのだが、あいつは基本的に体力がないため、すぐへばる。そこを部長の赤司先輩に怒られるのはいつものことだ。
「じゃあ今年は私もお祝いするっスね!」
また無邪気な笑顔。ああ、かわいいなぁと横断歩道に足を踏み出す。
その時。
一陣の風が俺の視線を誘う。
思わず風の流れを見やっていると、すごい勢いでこちらに飛び込んでくるトラックが見えた。
いや、こちらじゃない。俺じゃない。
不気味なほど真っ直ぐに涼に向かっている。
あ、やべぇ。
気付いたら俺の身体は涼を包み込み、地面に倒れ、転がっていた。至近距離をトラックが切り裂く風が通る。ブレーキの音なんて聞こえない。居眠り運転なのだろう。近所の塀にぶつかり、トラックはやっと失速した。
心臓が激しく血を回らせる。バクバクバクと、耳障りなほどに響く。
胸に抱えた涼が俺の名前を呼んだ。か細いその声に意識を引き摺り戻した。
「あ、わりぃ」
「そんな、私は大丈夫っスから!それより紗夜、怪我は……」
抱き締めていた涼を離すと、彼女は今にも泣きそうな顔で俺の頬に触れてくる。俺も大丈夫だよ、と笑えば、彼女の目から涙が溢れた。
声もない。
「よかった……よかったっス……。[また]、[また]紗夜が死んじゃうかと思ったんス…」
[また]ってなんのことだ。俺はこの通り一度も死んだことなんてない。
いったいなにを言ってるんだって聞きたいのに、聞けない。どこかで分かっている[私]がいる。
「六回。六回もやり直したのに、いつもいつも紗夜は助からなくて、私は守られて、[俺]は守れなくて、いつも失ってきた」
その度に私は壊れ、君が直してくれた。
嬉しかった。嬉しかったけど、でも。
もう紗夜の時間は止まってしまって、一緒に歩けなくて。
覆せない運命なんだと思ってた。
こんなに辛いなら、恋に落ちなければいい。
分かっているけれど、そんなこと出来なかった。
君に会うたびに好きが強くなって、離れ難くなって、年が違えども、性別が変われども、立場が狂えども、俺は絶対君に恋をした。 見つけ出せなかったことなんてない。
いっぱい足掻いたのに、どうしても紗夜はこの日に死んでしまう。幾度となく繰り返した最悪の世界。
「でも、やっと神様が叶えてくれた………」
「黄瀬、くん……?」
俺の中の誰かが声をあげる。
勝手に口が動くと言うのに、不思議と不快感はない。むしろ、懐かしくて心地いい。
「紗夜。七回目の正直っス…。色々変わっちゃったっスけど、絶対この思いだけは変わらない」
涼は満面の笑みで大粒の涙を流す。顔はぐちゃぐちゃになっているのに、可愛くて仕方がなかった。
「俺を好きになってくれてありがとう……。今度こそ、幸せにしてみせるから……!!」
泣いているのにどこか頼もしいその言葉。瞳が潤むがなんとか我慢した。散々泣いてきたんだ。この素晴らしい日に泣いてたまるか。
「遅いよバカ!…待ちくたびれたんだよっ…!!」
強く強く涼を抱き締めれば彼女は「いたいっスよ」と泣き笑いに言う。
遠くからはどこか他人事の様にサイレンが聞こえた。
I was waiting for that the whole time.
長いながい
繰り返しの果て
運命を下す神よ
愛し続けた私の勝ちね
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