私は今の席が気に入っている。だって、大好きな黄瀬くんと隣りの席なんだもん。

黄瀬くんはバスケ部で、モデルでめちゃくちゃモテる。
でも、それは多分、黄瀬くんのステータスに恋をしているのだ。私は、自分は違うと声に出して言える。

私ははじめ、黄瀬くんが嫌いだった。嫌いというか、苦手だった。モデルっていう時点で嫌悪感を抱いてすらいた。だって、チャラチャラしてるの、嫌だったんだもん。

だから避けてたんだけど、残念ながら隣りの席になってしまった。
それからは仕方無く関わるようになって、知った。彼は誰にも平等で、とても気が利く人だった。気付いたら、私は彼に惹かれていて。生まれてはじめて席替えをしたくないと思った。

だけど、そういった恒例行事を、私みたいな一生徒が止められるわけもなくて、今日、今、席替えは実行された。

席替え方法はくじ引きだ。席の場所に番号がふられていて、引いた番号の場所に移動するというもの。

私は5番を引いた。窓際の後ろから二番目だ。立地条件は最高。ただ、黄瀬くんと離れてしまうのだけは嫌だった。
黄瀬くんを好きにならなかったら素直に喜べたのにな…。

全員がくじを引き終わって、席替えが開始される。きっと黄瀬くんはまた隣りになった女の子と仲良くするんだ。黄瀬くんは平等だから、誰も特別にはなれないの。

机がガタガタと音をたて、移動が進む。私はいち早く窓際に着き、ぼやっ とグラウンドを見ていた。

黄瀬くんじゃないのなら、新しい隣りの人なんてどうでもいいや。これを期に、黄瀬くんのことは諦めようか。

「あ、また隣りなんスね!」

聞き慣れた声がして、私は思わず振り返る。
驚いた。

「黄瀬、くん?」
「うん?そうだけど…どうかしたんスか?」

底抜けに明るい笑顔。黄瀬くんの黄色い頭もあいまって、太陽のように見える。

キセキだ。また隣りの席になれたなんて! 誰かが仕組んだとしか思えないほどのキセキ!
流石黄瀬くん!キセキの世代と呼ばれるだけあるね!

「ううん、なんでもないよ」
「そう?ならよかったっス!」

ニコニコ笑顔な黄瀬くんに深い安堵を覚えていると、片手を差し出された。大きな手のひら。バスケやっている人はみんなこうなんだろうか。

「黄瀬くん?」
「握手、したいなって思って」

言われ、慌てて手を握る。そんな可愛いこと言わないで欲しい。少し照れ気味なのも得点高いね。流石黄瀬くん。あざとい。

「また、よろしくお願いしまっス!」
「うん!よろしく!」

また楽しい時間が過ごせると思うと、私はつり上がる口角を抑えきることが出来なかった。