オレがバスケ部に入部したのは、この日のためだった。いや、途中からは違う目的もあったけど、元を辿ればそうなんだ。

名前ちゃんと付き合うため。

中三の頃に、ずっとずっと好きだった名前ちゃんに告白して、「何かで一番になれたら付き合う」って言われた。だからオレは、バスケ部に入部したんだ。

そして、それは今日結ばれた。
誠凛が優勝したんだ。
確かに、オレだけの力では決してないけど、団体競技であるバスケは全員で一番だから。といってしまうと少し都合がいいかもしれない。でも、もう一度告白するには今日しかないと思った。

だからオレは今、彼女の前に立っている。


「降旗くん…あのね」

「名前ちゃん!」


名前ちゃんが口を開けたが、オレはそれを遮るように声を出す。このまま一気に出し切ってしまいたかったんだ。
ずっと変わらなかった思いを。


「オレはずっと名前ちゃんが好きだよ。だからオレと……付き合ってくださいっ」


中三の頃よりすんなりと言葉が出た。多分、オレはバスケを通して自信を手に入れることが出来たんだ。本気の好きを、本気で伝えることが出来るようになったんだ。


「降旗くん…あのね?私は……」


名前ちゃんがそう言った。ああ、もしかしてフラれてしまうのかもしれない。

そんな心配は、あっさりと打ち砕かれた。


「私は…降旗くんが好きだよ」


オレは思わず名前ちゃんを見つめてしまう。彼女は恥ずかしそうに俯くと、指先をいじらしげに絡めている。その顔は赤かった。


「最初は冗談で言ったんだよ、「一番になれたら付き合ってあげる」なんて。だって、まさか降旗くんが本気だとは思ってなかったから……」


「でもね」。名前ちゃんは伏せた顔を上げる。鼻頭まで真っ赤で、ドキンッと鼓動が跳ねてしまった。


「降旗くんがそれを理由にバスケ部に入ったって聞いて、私、降旗くんが本気だって分かったんだ。……その時から、私は降旗くんが好きだった。でも……すぐに突きつけた条件を下げるなんて真似は出来なくて、今日までズルズル引っ張っちゃった…」


ごめん と、名前ちゃんは深々頭を下げた。オレがそれを諌めると、彼女は申し訳なさそうに頭を上げる。眉が八の字になっていた。


「だから…ね、降旗くんさえよければ、私と付き合ってください」


照れ笑いを浮かべる名前ちゃんを、オレは思わず抱き締めていた。中三の頃よりずっと伸びた髪がフワフワと気持ちがいい。

何て言ったら分からなくて、オレはただただ抱き締める腕に力を込める。すると、耳元で名前ちゃんが微かに笑って、抱き締め返してくれた。

それがこの、放課後、体育館裏の出来事。
拙いオレが、みんなで一番になって、そして遂に世界一の幸せを噛み締めた日のことなのである。