私にもホークアイがあればいいのにって思う時がある。だってホークアイがあれば、授業中でも後ろの席の高尾くんの様子が分かるから。そう考えるのは私が高尾くんに恋してるからだろう。

どうすれば高尾くんともっと仲良くなれるのだろうか。バスケ部のマネージャーも考えてみたが、意外とハードで私じゃ足手まといになると判断した。やってみたいけれど、みんなの邪魔をしてまではやりたくない。自分勝手は嫌いだ。

今は数学の授業中。ちらりと後ろを見やると、ものの見事に爆睡。もう一つ後ろの緑間くんは真剣に授業を受けているみたいだった。流石、バスケが出来る成績優秀者は違う。

寝てるし…バレないよね。

私は少しだけ身体を後ろに向け、唇を動かした。


『好き』


もちろん声には出してない。ただの自己満足だ。見ると、緑間くんが少し驚いた顔をしている。どうやら見られていたみたい。私は咄嗟に人指し指を唇に当て、小さく「しー」と呟いた。緑間くんは溜め息を吐いている。お見苦しいところをお見せしました。

私は身体の向きを戻し、シャーペンを手にする。しかし、その瞬間背中に何かが触れた。


「っ」


思わず声が出そうになるが抑える。背中に触れたのは指だろう。高尾くんを挟んで緑間くんの指が届くはずはない。だから、これは高尾くんの指だ。生唾を飲み込んでしまう。というか、起きていたの? もしかして、さっきの告白、ホークアイで見てたりした?

シャーペンをぎゅっと握り、背中に意識を持っていく。何をする気かと思えば、高尾くんの指はするすると動く。まさか、字でも書く気? 私は更に集中する。


『お』


『れ』


『も』


おれも?

俺………も?


それが一瞬なんだか分からなくて、でも意味に気付いたらもっと意味が分からなくなった。

私が『好き』って口パクしていたのを高尾くんに見られていて、そしてその後に『俺も』……。これって、都合のいいように受け取っちゃえばいいだろうか!


『本当!?』


慌てて後ろを向き、口パクで言うと、今まで顔を伏せていた高尾くんが顔を上げた。にんまりと笑っている。不覚にもときめく。癒しの笑顔だ。


「本当。俺、名前ちゃん好きだよ」


小さな囁きと、満面の笑顔に撃ち抜かれる。今の気持ちを言い表すなら、少女漫画のヒロインになった気分だ。まさか、こんなことがあるなんて。口パクしてみるものだな。


「授業終わったら、好きってちゃんと言ってね!」


高尾くんは威力抜群のウインクをぶつけてきた。あえなく撃沈本当にありがとうございました。
頑張る! と既に頑張って頷き、私はもう集中出来ないであろう授業に戻る。ああ、黒板に書いてある言葉が全部高尾くんに見えてきた。末期だ。