高尾和成。華の高校一年生。バスケ部に所属。背番号は10番。ポジションはSG。特技は空間把握能力、つまりホークアイ。

そんな俺はそこかしこでハイスペックやら、完璧やらと言われるわけですが。いやはややはりそこは人の子。どこもハイスペックじゃあ、無いんだよな。

特に、好きな子の前では。


「ここ間違えてる」


細く白い指にびしりと指摘された。確かに漢字が違う。俺は慌てて書き直した。

やっぱり、名前ちゃんと一緒だとどうもダメだ。何もかも失敗する。

俺がハイスペックだと言われる所以は、ただの効率のよさだと思うんだけど、名前ちゃんの前だと効率も何もあったものじゃない。
ああ、放課後二人きりとか、ヤバすぎる…。


「また間違えた!もう貸して!私がやるから!」


言うと、名前ちゃんに日誌を奪われる。今書いているのは日直日誌だ。今日は俺と名前ちゃんが日直だった。ちゃんとしたかったんだけど、やっぱ俺、名前ちゃんの前じゃあダメみたい。


「ったく、何がハイスペックだっつーの」


名前ちゃんは小言を漏らしながら日誌を書き進める。スラスラと、間違いなんてない。ああ、その欄は俺の字で埋まるはずだったのに。

ハイスペック……。いいことなんてない。肝心の好きな子の前でちゃんと出来なければ、そんなもの意味がない。かっこいい姿を一番見せたい相手の前で挙動不審になっちゃ、そんな称号意味無いっしょ。


「よし、おーわり」


名前ちゃんは出した筆記用具を筆箱にしまいこむと、その筆箱を鞄に入れる。そして日誌を抱え立ち上がった。書き終わったんだ。ああ、もう二人きりは終わりか。今日こそ、今日こそって意気込んで、毎回何も進歩出来てない。ダメだなぁ、俺。

部活、いかないとな。日直だから遅れると、真ちゃんに伝言を頼んでいたから怒られはしないだろうけど行きたくない。せめて、一歩だけでいいから踏み出したい。


「和成さぁ、ハイスペックハイスペックって言われるけど」


何かを言おうと思案していると、名前ちゃんの方が声をかけてくれた。俺は顔を上げる。教室の前扉辺りに立った名前ちゃんが、こちらに首を巡らせ口角を上げていた。思わずどきりと胸が鳴る。


「私は非ハイスペックな和成のが好きだよ」


それから五分、俺の時間は止まった。
意識が戻った五分後。もうすでに名前ちゃんはいなかったけれど、顔の火照りは引きそうにない。