俺が監禁されてからもう何日過ぎただろう。
部活に行きたい。ボールを触りたい。
みんな心配しているだろうか。きっとしている。いいやつらばかりだから。

でも……、放っとけない。
俺を好きだと言って、監禁するあの女を。本当は嫌わなければならないだろう。だけど、あんなに献身的にされては嫌いにもなれない。
騙されてるのかもしれない。俺をほだすためにやっているのかもしれない。それでも、どうにも捨てられなかった。

「か、がみ…くん………」

俺の腹が空腹を告げる頃、部屋に苗字がやって来た。その手にはしっかりとトレーがある。
悔しいが、こいつの作る飯は上手い。本当は食べない方がいいのかもしれないが、毎度毎度あんなにいい匂いを嗅がされたら、食べざるを得ない。完璧に手のひらの上だ。

「きょうは………はぁ……回鍋肉を………」

そこまで言って、苗字は崩れ落ちた。壁伝いにずるずると。

「苗字!!」

思わず声を出すと、暗闇でも分かるぐらい青白い顔をした苗字が微笑む。
なんでそんな顔してんだよ。

俺は立ち上がり、彼女に歩み寄る。首輪にチェーンがつけられて、外には出られないが、この部屋で動くには不自由はない。足にも枷がついているが、チェーンで両足首を繋げているような物なので、歩けない訳じゃない。ただ手が不自由なだけで。

「かがみくん…声、久しぶりにきいた…」

彼女は壁に身体を預けながら立ち上がる。そしてトレーの上の晩御飯を見て、こぼれてなくてよかったと笑うのだ。

よく見ると、青白いだけじゃない。
腕が、細くなっている。

なんで。

毎日嫌になるぐらい見てたのに、どうして今の今まで気付かなかったんだ。

彼女が自らを蔑ろにしながら俺に尽くしているということを。