「飯、食ったか?」
「うん……食べたよ」

彼がご飯を食べるとき、私は必ず冒頭の質問をされるようになった。私が「食べた」と答えると、彼はホッとしたように笑う。逆に「食べてない」と答えると、彼はご飯を食べてくれなくなる。
私は元々あまり食べないから、二日に一度ぐらいの食事なのだけど、彼に問答をされるようになってからは少しだけでも一日三食は取るようになった。
彼のための食事だと思えば、お腹がいっぱいでも食べれるような気がする。

「火神くんは………少し、ううん、かなり変わってるね……。今まで監禁してきた人はそんなこと心配してこなかったよ…」

彼の食事の後、思わずぼそりと呟いてしまった。少しだけ口が滑ったことを自覚しながら私は部屋を出ていこうとする。

「待てよ」

しかし、火神くんに呼び止められてしまった。
ゆっくりとそちらを振り向くと、彼の目が少しだけ揺れているように見える。

「今までって………苗字は俺以外も監禁したことあんのかよ……」

ほら、やっぱり。
引いているんだ。
知ってるよ、分かってる。
怖いでしょ?滑稽でしょ?

「あるよ。好きになった人はみんな……こうしてる」

私だっておかしいのは分かってる。でも、外は危ないから。危険がいっぱい。いつ誰が死ぬかも分からない。
だから、愛する人ぐらいは護りたいのだ。

「そうか」と火神くんは頭を垂れた。
失望した?
いや、そもそも望みなんて無いだろうけれど。
私は部屋を出て、扉を閉める。
なぜか、胸が痛くて仕方なかった。
きっと今までの恋は偽物だったんだ。
私、今、本気で火神くんを好きになっている。
ならばよりいっそう、護らなくちゃ。